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Colony  作者: Scherz
第六章 終わりと始まり
846/994

15-1-1.ひとつになった星

 そこは数多くの星が圏という集合体として集まり、その圏が幾つも集まる事で構成された世界。

 この世界には1つの大きな特徴があった。それは、地球では幻想とされている『異能力』が存在するという事。

 『異能力』。こう聞いて何を想像するのかは人によって様々と言えよう。

 超能力、変身能力、霊能力、不老不死。これらの中で、最もポピュラーで、多くの人が一度は夢見る『異能力』である魔法を操る人々が住む星が物語の舞台となる。


 星の名は魔法街。

 この世界は幾つかの圏という星の集合体によって構成されている。街圏、町圏、都圏、京圏、藩圏という名前で分かれ、それぞれの県に属する星の後ろには圏の名前が付くという特徴がある。例えば、街圏なら魔法街、機械街、森林街…といった具合だ。

 圏毎の細かい特徴はいずれ説明するとして、物語の舞台となる魔法街について簡単に説明しよう。


 魔法街は6つの浮島で構成された星である。其々の浮島には区の名前が付けられ、東区、西区、南区、北区、中央区、行政区となっている。

 そして、魔法の教育機関として魔法学院が存在する。

 東区にはシャイン魔法学院。ここは神に関連する解釈を出来る属性を所有者だけか入学出来る魔法学院。

 北区にはダーク魔法学院。ここは特殊な属性所有者だけが入学することが出来る魔法学院。

 南区には街立魔法学院。入学の制限がない、門戸が広く開け放たれている学院生が最も多い魔法学院。


 それぞれの魔法学院には学院長という存在がいる。シャイン魔法学院はセラフ=シャイン、ダーク魔法学院はバーフェンス=ダーク、街立魔法学院はヘヴィー=グラム。この3人と行政区最高責任者の地位に就いているレイン=ディメンションを含めた4人は魔聖と呼ばれている。彼らは魔法街にとっての最高戦力。各区の責任者でもある魔聖による物事の決定は…魔法街の行く末を決める重要なものである。


 さて、この物語で主人公となるのは街立魔法学院に所属する学院生、高嶺龍人だ。

 185cmという細身の高身長に甘いマスク、そして爽やかな短髪とイケメンを体現する人物。とは言ってもナルシストという訳ではなく、どちらかというと縛られるのが嫌いで面倒くさいのが嫌いで辛い食べ物が大好きという…ひと言で言えば自由人である。

 龍人には特殊な能力が存在する。それは…。


 いや、その前にもう一つだけ説明を付け加えよう。それはこの世界に住む者達が扱う魔法の属性についてだ。

 魔法の属性は原則1人3つを所有する。父から受け継いだ属性、母から受け継いだ属性、生まれながらにして持つ属性。これらを継承属性と先天的属性と呼んでいる。継承属性と継承属性が同じ属性の場合、継承極属性となり通常の属性魔法よりも強力な魔法を扱えるようになる。継承属性属性【火】と継承属性【火】で継承極属性【火】といった具合だ。

 極属性の特徴は2つ。まず、魔法の出力…つまり威力が1.5倍である事。そして属性魔法で武器を形成し、武器として扱う事が出来る。通常の属性保有者では武器の形を形成して放つ事しか出来ない。つまり、属性魔法の形状維持能力に長けているという事だ。

 属性魔法と先天的属性が同じ属性の場合は【】内の文字が変わる。【火】→【炎】といった具合だ。【】内の文字はより強いものに、そしてより狭い範囲に変わっていく。分かりやすい例でいうと【風】→【空気】→【圧縮】である。


 これを前提として、高嶺龍人が所有する属性は真極属性【龍】である。極属性を有するものが何かしらの力(例えば召喚魔法)によって一時的に属性をランクアップさせる事で実現できる真極属性が、龍人が普段から操る属性魔法なのである。勿論、【龍】という部分も大きな特徴だ。

 何故龍人がこの力を持っているのは明らかになっていない。必然なのか偶然なのか。


 物語が始まる舞台は魔法街中央区。


 運命に翻弄される若者達を共に見守ろう。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 魔法街中央区から南区へ移動する為に設置されている転送魔法陣の近くにいた龍人は、隣に立つレイラ=クリストファーと目を見合わせていた。

 南区の魔法協会南区支部倉庫で魔瘴クリスタルが見つかった為に、犯人逃亡防止で転送魔法陣が封鎖。これに対してどう動こうかと思っていた時に、謎の人物が現れ、「いい加減、うわべだけの付き合いはやめよう。さぁ……ステージに乗るんだ。」…と言うと同時に中央区上空に巨大な魔法陣が浮かび上がったのだ。

 因みに、魔瘴クリスタルとは魔力補充や魔法陣の記憶、属性診断で使うクリスタルに闇の生物である魔瘴が混ざったものである。この魔法街に魔瘴は存在しない為、どの様に製造されたのかが不明である。

 しかし、この魔瘴クリスタルによって魔法街の住人が何人も意識不明で倒れ、時には半獣人化して人に襲いかかるという事件が起こされた事は間違いない。…と魔法街の人々は認識していた。

 魔法陣に気を取られている内に謎の人物は消え失せていた。


「これって…なんの魔法陣か分かるか?」

「…ううん。分からないよ…なんか怖いね。」


 不安そうに呟くレイラは両手を胸の前で合わせて、祈る様なポーズを取りながら空を見上げている。

 身長が145cmと低く、茶色のロングヘアーを垂らす横顔はまるで女神の様な…。

 と、邪推をしかけた龍人はすぐに頭から振り払う。


「とにかく、これだけの規模の魔法陣だ。どっかしらで魔法陣の起点になってる奴がいるはずだ。」

「その起点って…人じゃなくても起点になる?」

「ん…そうだな。魔法陣を構成する為の何かしらの細工が施されてればなるよ。」

「じゃあアレが…起点かな?」


 レイラが指し示したのは魔法協会中央区支部。中央区の中心に建つ巨大な建物だ。ボワッと淡い光が包み込み、空に向かってのびている。


「……。そうだな。ってなると、この魔法陣は何を狙ってるんだ…?レイラ、一先ず中央区支部の方に行くぞ!」

「うん!」


 龍人とレイラは中央区支部に向けて走り出す。中央区の空に浮かび上がった魔法陣は、淡い光を放ちながら静かに佇んでいる。余りにも巨大な魔法陣なのに、すぐに発動せず…そしてやけに静か。何かが起こる前兆の様な雰囲気に、龍人達が通り過ぎる人々も不安の色を浮かべている。


(さっきの魔法陣が浮かび上がる前に現れたあの人物…。あいつが黒幕か?魔法街統一思想がブラフとか、魔瘴クリスタルの属性診断の様子とか…明らかに各区同士が争うのを望んでやがる。)


 謎の人物が言った言葉は、各区の人々の心に深く突き刺さっている可能性が高かった。

 3つに分かれている魔法学院を1つにし、魔法街をまとめようという魔法街統一思想。この思想の目的が魔法街をひとつにしようという流れに乗せ、勢いが最高潮に達したところで魔瘴クリスタルを各区の魔法協会支部倉庫に配置。その存在を同時に全ての区に知らしめる事で区間の敵対関係を一気に構築させる事。…と語った謎の人物の言葉は、確かに反論の余地がないものだった。

 いや、正確に言えば、魔瘴クリスタルに侵された半獣人による襲撃、各区で同時に魔瘴クリスタルの売人が捕まり、その売人皆が皆別の区の住民票を所持していた。…こういった魔瘴クリスタルに関わる事件が頻発し、皆の心に犯人を追い求める気持ちが芽生えていた状況で、一気に納得感のある回答を叩きつけたという事になる。

 最早それが真実か嘘かなどは関係がない。溜まりに溜まったものを発散する相手を与えられた事で、人々が無意識に暴走してしまう危険性を孕んでいた。


(…唯一の救いは、各区が離れてる事だな。これで全部の区が隣接してたら…って考えるだけ恐ろしいな。)


 思考を巡らせながら走る龍人はチラリと横を走るレイラへ目線を向ける。

 魔法街の為に任務を遂行する魔導師団。この選ばれし魔導師であるレイラはサポート系魔法のスペシャリストだ。勿論、龍人も同じ魔導師団…第8魔導師団に所属している。

 魔導師団は4人1組。残りの2人は現在別行動中のためこの場にはいないが、彼らもこの異常事態に対して何かしらの動きをしているはず。


「…見えた!………ってなんだこれ。」

「魔法陣が無いのに光ってるね…。」


 魔法協会中央区支部は、レイラの言う通り魔法陣が無いのに光り輝いていた。

 これが示すのは1つ。


「…中央区支部は魔法陣構成の基点じゃないって事か。となるとだ、それでも光ってんだから魔法陣発動の基点?」

「龍人君どういう事…?」

「んーと、上空に出現した魔法陣が発動した時に発生する何かしらの効果が、一定の基点を必要としてて、その為の目印ってトコかな。」

「っていう事は、中央区支部を中心にして何かの魔法が発動されるかもって事だよね。」

「あぁ、そうなるな。………。」

「………。」

「「………!?」」


 バッと龍人とレイラは顔を見合わせる。自分たちの推論が正しいのであれば、今、中央区支部の近くにいる事の危険性は言わずもがな。


「レイラ、逃げるぞ!」「龍人くん!中央区支部の人を避難させないと!」


 バッと動き出そうとした2人はバッと顔を見合わせる。


「もし、この魔法陣が中央区支部を巻き込むものだとして、そうだとしたら今からじゃ間に合わないぞ!?下手したら俺たちも巻き込まれる。」

「分かってる。でも、でも…見捨てるなんて出来ないよ。」

「このタイプの魔法陣で、この中央区支部を壊すならこんな風に光が魔法陣から降りてくることは無い!」

「でも、万が一ってことも…。」

「……分かった。俺が中央区支部の中にいる人達を片っ端から外に転移させる!レイラはこの場所で避難誘導をしてくれ!」

「龍人くん…ありがとう。」

「おうよ。龍人化【破龍】。」


 龍人が唱えたのは固有技と呼ばれる技。その名の通り、本人にしか使うことが出来ない特別な技だ。

 漆黒の稲妻が龍人の周りに纏わり付き、発せられる魔力圧が急激に高まる。自身の中に棲まう破龍の力を顕現させた姿は、さながら某〇〇ボールのスーパー〇〇人2みたいな感じであるが、決してパクリではない。


「よし、行ってくる!」


 気合を入れた龍人が駆け出そうとした時だった。


 キィィィイイイン


 という甲高い音ともに、上空に出現していた魔法陣が強い光を放つ。

 そして、空一面が眩い光に包まれた。

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