5-1-6.対人戦トーナメント
バルクとレイラの2人は構えながら相手の様子を窺う。2人共自身が使える魔法の中で比較的強力な魔法を使った為、魔力が十分に残っていない。バルクは属性魔法を扱うのはまだ不得手であるし、レイラは極属性【癒】の範囲を超えた魔法を使ったのだ。共に魔力の消費が激しいのは想像できよう。次の攻撃で勝敗が決するだろうと誰もが予想し、固唾をのんでリング上を注視する。
そんな中、レイラの額を汗が伝い体が少し横へと傾くのを見たバルクは、反射的に掌を地面へ当てた。
「いくぜ!」
バルクはクラウチングスタートをするかの態勢を取り、対するレイラは足元からの攻撃を警戒して防御壁を展開した。
バルクはレイラが防御壁を展開したのを見ると不敵な笑みを浮かべる。と同時に、バルクの足元が爆ぜた。その勢いを利用し、レイラへと高速で突き進む。
レイラは予想外の攻撃に身を捻ってバルクが進む軌道上から体をズラし、レイラの回避によってすぐ横を通り過ぎる事になってしまったバルクは、高速で移動をしながら地面へ手をかざす。手が触れた所から魔力が地面へ広がり、石の棘が次々にレイラへと飛翔する。が、既に展開されていた防御壁に阻まれ砕け散り、砕けた石がレイラの視界を遮った。
(どうしよう。バルク君を見失っちゃった。)
辺りを警戒し、一旦その場を離れようとするが、レイラを囲うように岩の棘が立ちはだかった。岩の棘の側面にぶつかったレイラは、頭をさすりながら周囲を見る。
(完全に囲まれちゃった。空を飛んだら攻撃されて負けちゃいそうだし、どうしよっかな。)
突然レイラの背中を強烈な衝撃が襲う。後ろを見るとバルクが石の棘の中から現れて突きを繰り出していた。レイラはそのまま吹っ飛び、反対側の岩の棘へと激突する。
「かはっ」
激突の衝撃は強く、肺の空気が絞り出されて地面へと倒れてしまう。立ち上がろうとするが、腕に力が入らない。
審判を務めるラルフは、動く事の出来ないレイラを見て試合続行不可能と判断し、大声で決着を告げた。
「勝者、バルゥゥゥクゥゥ!!」
無駄にテンションが高いアナウンスをまだ止めない辺りは流石ラルフである。
「おっしゃぁ!!」
バルクは勝利の喜びを右の拳を高々と突き上げて表した。




