5-1-5.対人戦トーナメント
空中に浮かんだ石の塊は、ミシミシと中心へと圧力を掛ける音を立てる。通常であれば肉のミンチになってもおかしく無い状況だ。
「へっ。これで俺の勝ちだろ!」
バルクは人差し指で鼻を擦りながら余裕の表情を見せる。確かにレイラの属性魔法では、この状態から脱する方法は無いに等しいと言える。
「ふふ。レイラの事、甘く見てるわね。」
観客の誰しもがバルクの勝利という試合の決着を想像している中、授業の中で何度かレイラと戦った事がある火乃花は、肘を突きながらリラックスした様子でグラウンドを眺めていた。
「どゆこと?あの状態じゃ厳しくない?重傷を負うレベルだよ。あれ。」
火乃花は疑問を口にする遼の方を向いた。
「知らなかったっけ?レイラの属性は極属性【癒】よ。全ての異常を癒す事が出来るの。もちろん、あの石の塊という異常すらもね。」
そう言って火乃花が目を向けると、石の塊に変化が起きていた。内側から光が漏れ始めていて、光が石の礫1つ1つを包み込むと、石の礫がゆっくりと離れていく。
そして、全ての石がレイラから離れて会場の地面へと戻ったのだ。
試合会場の観客達はレイラの魔法に沸く。レイラへの歓声と、呆気に取られて見ているバルクへの野次で盛り上がっている。
バルクの攻撃魔法を簡単に防いで見せたレイラはゆっくりと地面に降り立った。バルクは苦笑いをしながら次の攻撃に移る為、レイラに向かって構えを取った。
「レイラ、お前の魔法すげぇな!ちっこいだけだと思ってたぜ!」
「癒しの魔法って、実は色々応用が効くんだよ。私にも何で出来るのかはよく分かんないんだけどね。昔からなんか出来たんだ。」
ニコッと笑みを見せ、レイラも構える。




