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Colony  作者: Scherz
第六章 終わりと始まり
815/994

14-4-3.青春キャンプ



 キャンプ1日目の夜。寝床作りに疲れた学院生達が布団に潜り込んだり、寝るまでのぶっちゃけトークで盛り上がる中…島の中央に位置する緑が生い茂った山の頂上に3人の人影があった。


「よし。誰にも気付かれずに潜り込めたかな。」

「そうね。これなら色々とやり易いわ。」

「まぁ…協力者がいるとこういうのは確実性が増すからな。」

「はははは!ここまで潜り込めば後は楽勝だな!」

「…五月蝿いって。」

「む?悪い悪い。だが、ここから先は簡単だな。いかに気付かれずに相手を消すか。腕がなるなぁ。」

「…そもそもお前さんは隠密行動苦手だろ?」

「うむ。だが、俺の魔法は姿を隠すのには好都合だ。特にこういう環境ならな。」

「ま、それは言えてるな。」

「じゃあ行くわよ。先ずは彼らを逃さないように色々と準備をしましょう。明日の夜から確実に1人1人消していくわよ。」

「おぉ…消すとか怖い事言うねぇ。」

「…なによ。何か間違った事言ってるかしら?」

「いや、その通りだわ。相手が学生だとかは関係ねぇ。出来る範囲での全力で確実に葬り去ってやろうぜ。」

「がははは!物騒だが、楽しみだな!さぁ行くぞ!」

「…だから五月蝿いって言ってるでしょう?ここで彼らに私達の存在を気付かれたら全てが無駄になるのよ。」

「わ、悪かった。」

「それで良いのよ。じゃあ…作戦通りに行きましょう。」


 3人は顔を見合わせて頷き合うと闇夜に姿を消していったのだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「しゃぁぁぁあああ!ゆらゆら揺れーる水上ビーチバレー開幕だぜ!」


 元気満々のバルクが大声で開幕宣言をし、青春キャンプ1日目のイベントが始まった。

 ゆらゆら揺れーる水上ビーチバレーのルールは簡単。通常のビーチバレーと同じルールで、20点先取で勝利となる。違う点は…試合を行うコートだろう。競技名の通りに水上で行うのだ。

 コート上にはビート板が3×3で均等に配置されているが、ビート板同士はくっ付いておらず隙間が空いている。つまりだ、ビート板が無いところは魔力を足の裏に集中させ、水中に落ちないようにする必要があるのだ。

 揺れる水面は魔力コントロールで立つのが非常に難しく、これに気を取られてはビーチバレーが成り立たない。しかし、気を配らなければビート板じゃない所に足を置いた瞬間に沈んでしまうという…ある意味で高難度の魔力コントロール訓練ともいえる競技になっていた。

 更に、魔法の使用に関してもルールが定められている。とは言ってもこれに関しては複雑なルールは存在せず、無詠唱魔法以外の使用禁止と無詠唱魔法の中でも浮遊魔法、飛翔魔法の使用も禁止されている。要は水上で無詠唱魔法の身体能力強化系以外を使用せずに戦うという事だ。

 バルクが考えたにしてはしっかりとしたルールの競技内容に、最初は全員が戸惑い気味だったが…試合が始まるとそんなのはどうでも良なっていた。思った以上に白熱した試合が4つあるコートで繰り広げられ、観戦者は楽しく歓声を送っている。

 中でも男性陣のテンションは女性陣のそれを大きく上回っていた。

 その理由は単純。水着である。


 Fカップの巨乳を揺らし、決してそこまでくびれているわけでは無い腰まわりを晒す火乃花。モデル体型とは言い切れないが、肉感的のひと言に尽きるボディに男性陣の目は釘付けである。どこから抱き付いても柔らかそうな身体は、男性陣の視線を捉えてはなさない。もしこの場所にラルフがいれば、容赦なく触りに飛びかかっていたであろう…最高の光景だった。

 男性陣の目を奪うのは勿論…火乃花だけではない。もう1人、火乃花とツートップで目立つ女性がいた。…杉谷ちなみである。

 普段の制服姿では火乃花よりも大きくなさそうに見えるちなみだが、脱ぐと凄かった。…と言うのが大方の男性陣の意見である。

 火乃花と同じFカップの胸に、くびれた腰まわり、ふんわりとした曲線を描くヒップ。そして優しい顔立ちにあひる口。彼女の水着姿を見た男性数名が鼻を押さえて物陰に飛び込んだのは言うまでもない。動くたびに柔らかそうに揺れる胸は、思わず手を伸ばしそうになる魅惑的な光景である。

 肉感的な攻めの火乃花。対する受けのちなみ。このツートップが同じコートで対戦する今、観客の男達は物凄い熱気に包まれていた。

 観客に混じっているルーチェとレイラはその光景を羨ましいような、なんとも言えない感じで眺めていた。


「むむぅ。ちなみさんの人気具合が想像以上ですの。」

「しょうがないよ。私達なんかより凄いんだもん。」

「それはそうですが…女の子は胸が全てではありませんわ。」

「そうだけどねぇ…。」


 チラッと視線を下に移すレイラ。そのままチラッとルーチェへ視線を移す。


「今…見比べたの気づきましたわ。」

「え、そんなつもりじゃ無いんだけどな…。」

「レイラさんは私よりもあるから良いですの。私は並中の並ですわ。」

「う〜ん。」


 胸が全てでは無いと言いつつも、かなり気にした様子のルーチェに、レイラはどう反応を返せば良いのか分からなくなって首をひねってしまう。このまま胸の大きさトークが続いても、何かしらの進展があるわけでもなく…。どうしようかとレイラが困っていると、突然男性陣から大きな歓声が湧き上がった。


「「「おおぉぉぉおお!!」」」


 飛び上がった火乃花の渾身のスパイクを横に飛び込みつつちなみがレシーブする。高く上がったボールをサーシャがトスし、ちなみが体をしならせて渾身のスパイクを叩き込んだ。上半身の動きに合わせて揺れる巨乳。それはもう至極の光景と言う他なかった。

 この一連の流れで男性陣の目は右に行き左に行きと激しく動き回る。普段見ることができない、言わば雑誌の中でしか見れない光景を見逃す手は無かった。

 因みに…ちなみと組むサーシャ、火乃花と組む遼への応援は殆どないと言っても差し支えなかった。いや、正確に言えば一部のマニアにサーシャも人気だし、女性陣達から人気の部類に入る遼への応援もあるのだが、男性陣の胸に翻弄された歓声が大き過ぎて聞こえないのである。


(…はぁ。めっちゃ盛り上がってるけど、こっちはつまんないぞ。いろんな意味で。)


 火乃花達と同じタイミングで別のコートにて試合を行っている龍人は、スパイクを敵チームの1人…クラウンの顔面に叩き込むと華麗にビート板の上に着地する。

 龍人のチームメンバーはタム。クラウンのチームメンバーはバルクだ。男4人での対戦のため、そこまで観客も集まっていないのでは…と思うかも知れないが、実はそうでもない。女性の観客の半分以上がこのコートを取り囲んでいるのだ。

 女性陣の目的は…龍人である。元々細身の長身で、甘いマスクを持つ彼は大きく騒がれる事は無いにしても、一定数のファンがいたのだ。その龍人が上半身を晒した格好で水上バレーをしているのだ。ファンを自称する者達が集まるのに不自然さは無い。


「はっはっはぁー!この俺様の姿に女子が騒いでるぜ!耳障りだが、こんなに心地よい耳障りも初めてだ!おい龍人!俺様渾身のツイストサーブでふっ飛ばしてやる!」

「まぁた何か言ってるよあいつ。」

「龍人さん、クラウンは基本ナルシストなんで言ってる事に反応してたら面倒くさいだけっす。無視っす無視。」

「んだな。」

「…お前ら、クラウンと組んで無いからって他人事だろ!」


 後ろから聞こえるクラウンの俺様的な笑い声に眉をひくつかせるバルクが苦言を呈す。


「え?所詮は敵チームなんだから他人事だろ。」

「そうだけどよぉ…!」

「くらえぇぇぇい!ツイストトルネードクラウンスペシャルサービング!」


 ビーチボールをこれでもかという位に高く投げたクラウンは、それを追いかけるように飛び上がり、不思議な体の捻り方をしながらボールを斜め上から叩く。

 ギュルルルル!…という音を立てながらビーチボールは龍人を目掛けて降下し始めた。


(おぉ…。めっちゃ高速で回転してんじゃん。…これってジャイロ回転ってやつか?)


 ジャイロ回転はその回転軸が真っ直ぐの場合はフォークボールに似た軌道を描くが、軸がずれた場合はその方向によってボールの軌道に変化が現れる…のだが、流石にどの方向に回転軸がズレているとどうなるのかは把握していない。

 そして、その考察をする間もなくクラウンのサーブは龍人へ襲い掛かった。


「…くそっ!」


 レシーブには成功するのだが、強烈な回転によって龍人は右斜め後ろにボールを弾いてしまう。


「任せるっす!」


 いつの間にか龍人の後方に移動していたタムがビート板の上を飛びながらボールを追いかける。しかし、ボールの落下速度の方がやや早くこのままでは追いつきそうに無かった。


「おおぉぉお!」


 しかし、ここでタムが根性を見せる。コート端に設置されているビート板を両足で捉えると、ジャンピングヘッドの形でボールへ向けて飛んだのだ。

 バシャン!と激しい水飛沫を上げながら水中に落下するタム。


「はははは!俺様か負けるはずが無いのだ!……………な、なんだと!?」


 勝利の味に酔っていた敵コートのクラウンが驚愕の声を上げる。どうやらタムはギリギリでボールに追いついたらしく、ビーチボールが龍人側コートの中央に向けて飛んでいたのだ。


「ナイスだタム!」


 ボールの軌道を確認しながら龍人は宙へ飛び上がる。そして体を弓のようにしならせ、これによって生み出される運動エネルギーを手に集中させて…ボールへと叩きつけた。

 スパァン!という心地良い音が響き、ビーチボールは弾丸の如くバルクへと迫る。


「これくらいの攻撃!俺様に掛かれば朝飯前…ぶふっ!」


 カッコ良い(と自分で思っている)台詞を決めようとしたクラウンは、龍人のスパイクを顔面で受け止め…吹き飛んだ。


「…なんなんだアイツ。」


 先程のジャイロ回転サーブをカッコよく決めた割に、次のレシーブは謎の台詞を言っているせいで失敗。


(あ…つまり、自分をカッコよく見せられる時間があると実力を発揮するけど、そうじゃないとタダのヘタレって事か?)


 それが本当なら…ある意味で恐ろしいが、魔法使いとしては恐ろしく致命的でもある。


(いや、だけどそんなんだったら上位クラスには入れないよな。ってなると、わざとやってんのか…?)


 イマイチ彼の本質を掴みきれない龍人は、これまで以上にクラウンを注視する。


「はっはっはっ!この俺様があの程度のスパイクでノックアウトされると思ったか!」


 水に濡れた天パを激しく搔き上げるクラウン。見れば見るほど殺意しか湧いてこないといのはこの事なのだろう。


「はぁ…。タム、俺はこれ以上クラウンと試合するのやだわ。一気に勝ちに行くぞ。」

「そうっすね。流石に俺もイラつきしか無いっす。」


 そして10分後。顔面をボコボコに腫らせたクラウンが水に浮かぶ中、勝利を収めた龍人とタムは対戦相手のバルクと健闘を讃え合うのだった。


 この後も水上ビーチバレーを夕方までひたすら続けた龍人達。参加者全員が2年生上位クラスに所属するだけあり、夕方には全員が波に揺れる水面に難なく立てる様になっていたのだった。


「いやぁ…疲れたな。」

「疲れたっすね。なんだかんだで魔力が大分減ったっす。」


 最後の試合を終えた龍人とタムは、他の人達の試合をなんとなしに眺めていた。

 キャンプに来た割に、どちらかと言うと球技大会やプチ夏合宿の様になっているため…疲れてしまい、動きたくなくなっているのだ。


「今日ってこれで終わりだよな?」

「いやぁどうっすかね?あの筋肉と体力だけはピカイチのバルクっすよ?この後にもまだまだ何かを考えてる気がするっす。」

「うへぇ…。」


 少しは1人でのんびりしたり、色々考えたり、特訓したい龍人は思わず天を仰ぐのだった。


 ゆらゆら揺れーる水上ビーチバレーの全試合が終了し、全員が砂浜に戻ってきた所で…まだまだ元気なバルクは皆の前に立つと輝かんばかりの笑顔を見せる。


「いやぁ…楽しかったな!この後は…待ちに待った………バーベキューをするぞ!!!」

「おぉ!」

「初日からバーベキューか!待ってましたー!」

「じゃあお魚とか獲ってこなきゃだね!」

「私、野菜とかの準備しようかな!」


 また特訓紛いの競技が始まるのかと思っていた学院生達は湧き上がる。夏、そしてキャンプ。この2つからバーベキューを想像しない人はいないだろう。それだけにほぼ全員がやる気満々で立ち上がり、バーベキューの準備に動き出した。

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