5-1-4.対人戦トーナメント
控え室で試合の様子を見ていた龍人は、バルクが魔力の爆発に呑み込まれたのを見て火乃花に話し掛けた。
「おいおい。中々な爆発だったけど、バルク大丈夫かな?」
特段心配しているとか、そういう訳ではないのだが。火乃花はテーブルに肘をついて両手の上に顔を乗せながら答える。
「ん~、多分、地面の中に潜って回避してると思うよ。」
「あ、なるほど。だからあんなにでっかい穴があいてるのか。」
「覚えたて…というか使い始めの属性魔法だから、まだコンパクトには出来ないって所だと思うわ。」
グラウンドの中心では、レイラが周りに防御壁を展開していた。地面からの攻撃を警戒してか、特に足元へ防御壁を集中させていた。一通りの防御壁の展開が済むと、続けてレイラの体を薄い光が包みこんだ。
「ねぇ龍人、あれって何の補助魔法だろ。」
「相変わらず遼は補助魔法に疎いんだな。そろそろ勉強しなよ。つっても、あの光だけじゃ分からないんだよなぁ。おおよそ、身体能力向上系じゃないかな。これから怒涛の攻撃がきそうだし。」
龍人の予想通り、レイラが自身に施した魔法は、身体能力向上だ。更に、魔力の動きを探知するために空間型の探知結界を自身の周囲10mに展開している。
レイラはバルクの攻撃待ちの態勢。自然とグラウンドに静寂が訪れる。観客が息をのみ注視する中、変化は何の前触れもなく一気に起きた。
まず、レイラに向けて地面が隆起し始める。隆起した地面の先は鋭く尖っていて、貫かんと襲いかかる。
レイラは予め展開していた防御壁で攻撃を防ぐが、強烈な勢いに押されて空中へと吹き飛ばされてしまう。
ここでバルクが姿を現す。
「レイラ!これで終わりだぜ!」
決め台詞と共にバルクのグローブに埋め込まれた魔法石が、強烈な光を放つ。その拳は隆起した地面に向けて振り下ろして強打する。すると隆起した岩の棘にヒビが入っていく。ヒビは隆起全体に及び、最終的に隆起が砕け散った。
「どういうことだろ?自分の攻撃跡を壊しても…」
空中で体勢を立て直していたレイラは途中で口を閉ざす。疑問は目の前に解答となって広がっていた。砕けた隆起の破片が全て空中に浮いているのだ。
「これを防げるなら、お前の勝ちだ!今の俺の最大の攻撃だぜ!」
リングの上を覆い尽くすほどの破片がレイラに向かって飛翔する。
「これ…防げるかな。」
レイラは周囲360°に魔法壁を次々に展開し石の礫を受け止める。弾かれた礫は再度レイラに襲いかかる。これが絶え間無く繰り返されて次第にレイラを石の礫が覆い始めてしまう。
そして、遂に巨大な石の塊がレイラをその中に閉じ込めて宙に浮かび上がった。