5-1-3.対人戦トーナメント
ラルフの超絶ノリノリ試合開始の掛け声と同時にバルクはレイラへと向かう。無詠唱魔法で身体能力を強化し、正面から突きを繰り出すと見せかけて、サイドステップを織り交ぜた足捌きでレイラの後ろに回り込み、後頭部目掛けて右拳を振り降ろす。だが、レイラに直撃する直前、防御壁が展開し拳を弾き返した。
「はやい…!このまま!」
レイラは両手をバルクに向け、衝撃波を放つ。
「うわっ!」
バルクは衝撃波をモロに喰らって吹き飛ぶが、くるっと回転し地面へと降り立った。至近距離での直撃にも関わらず、余り効いた様子は見られない。流石は格闘馬鹿である。
「へん。やるじゃんレイラ。攻撃魔法使えないとか言ってたのに、十分強いじゃんよ!」
「ううん。今のは攻撃魔法って程のものじゃないよ。無詠唱魔法を掌に集中して、一気に解放しただけだよ。」
「それでも俺を吹っ飛ばしたんだ。そこそこの威力だったぞ。じゃ、次いくぜ!」
楽しそうなバルクは地面を強く蹴ると、レイラに再び接近して回し蹴りを放つ。対するレイラは魔法壁を展開し防御。またもやバルクの格闘攻撃は弾かれるが、怯まずに連続で蹴りを放っていく。様々な角度から蹴りを放ち、フェイントも混ぜながら魔法壁を潜り抜けようとする。
そして、バルクの狙い通りにレイラは変則的な蹴りに対して反応が少しずつ遅れていく。このタイミングを見計らって、バルクは突きも混ぜて更に連続的に攻め立てる。
このまま攻め続ければ、レイラの魔法壁を突き抜けてバルクの攻撃が直撃するのは必至であると誰もが思っていた。
しかし、レイラもただ攻撃を防ぎ続けているだけでは無かった。バルクの上段蹴りがレイラの頭に向けて放たれた時、バルクの動きが不意に止まる。
「おわっ!」
レイラの防御壁がバルクの右脚を覆い、空中に固定していた。
「これでどう!?」
レイラは間髪入れずにバルクの全身を防御壁で包み、そっと手を当てた。そして、魔力を一気に防御壁の中に放出する。凝縮された魔力の光がバルクを包み爆発した。
「はぁ…はぁっ。倒せたかな?」
無詠唱魔法を攻撃魔法として転じるのはかなりの魔力を消費する。レイラは既に大分魔力を消費してしまっていた。
爆発の煙がうっすらと晴れると、そこには誰もいない。代わりにあるのは爆心地にある大きめの穴だけである。