5-1-1.対人戦トーナメント
対人戦トーナメントは思いの外盛り上がりを見せる。観客達が盛り上げている部分もかなり大きいが、観客がいる事で生徒達が奮起したのも大きいだろう。
何にせよ、ヘヴィーの図らいによる観客有りというのは正解だったと言えよう。
さて、龍人は初戦、2回戦共に特に問題も無く勝ち進んでいた。
2回戦終了後、リング横にある仮設の控室に戻ると、3回戦出場を決めたクラスメイトが集まっていた。
高嶺遼
霧崎火乃花
バルク=フィレイア
レイラ=クリストファー
ルーチェ=ブラウニー
上記のクラスで比較的仲が良い5名が揃っている。
「これから皆と戦うって考えるとなぁ。大変だよな。」
龍人は入り口の近くに置いてあった椅子に座りながら遼に話しかけた。遼は銃の手入れをしながら、軽く龍人を見る。
「何言ってんのさ。すっごい余裕ある戦い方しかしてないのに。」
「まぁね~。」
「ほんとよ。しかも色々な属性魔法が使えるって本当にズルいわ。苦手な相手とか無いじゃない。」
壁にもたれかかるように立っていた火乃花が、腰に手を当てながら溜め息を付いた。だが、龍人からすれば高火力を誇る火乃花の魔法の方が羨ましい。
「いやいや。1つの属性に特化してる奴には敵わないよ。火力不足だわ。」
「それでもよ。火力なんて魔法の使い方、組み合わせ方で幾らでも補えるじゃない。」
「んー、最終的に単純な火力の高い方が強いと思うけどな。」
「龍人!俺と当たったら習得した属性魔法でぶっ潰してやるぜ!」
龍人と火乃花が会話をしている所に、全く空気を読まずに割り込んできたバルクが拳を打ち鳴らす。
バルクの属性は属性【地】なのだが、ここまでバルクは属性魔法を使わずに勝ちあがっている為、クラスの誰もがバルクが属性魔法をどのように使うのかを知らない。次に当たりたく無い相手の1人である。
「私も負けませんわ。ここまで来たんですもの、目指すは優勝なのです。」
こう言ってやる気を示すのはルーチェである。授業での対人戦ではあまり勝率は良く無かったのだが、今日は別人の様に強い。
「ルーチェさんって今日強いよね。私なんかまぐれでここまで来ちゃったから、次が怖いな。」
謙遜するのはレイラだ。元々、補助や回復を得意とし、攻撃関係の魔法が苦手なレイラがここまで勝ち上がってきたのは、相手に恵まれていたともいえる。だが、攻撃系の属性魔法を使わずに勝ってきた実力は本物の筈である。
ルーチェはレイラの言葉に微笑んだ。
「実は、授業の時は手を抜いていましたの。正確に言いますと、攻撃系以外の魔法が苦手だったので、授業では攻撃魔法は極力使わないようにしてましたの。それよりも、実戦でどうやって攻撃系以外の魔法を活かすかを中心にしていましたの、ただ、今日はこんなに多くの観客がいらっしゃるので、手を抜くのは失礼かと思いましたのよ。」
実際、ルーチェは攻撃以外の魔法を上手く駆使して相手を撃破している。
ピンポンパンポ~ン
気の抜けたチャイムみたいな音が鳴り、会場内にアナウンスが入る。




