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Colony  作者: Scherz
第五章 機械街 立ち向かう者
767/994

13-6-15.紛争の終結へ


 外壁正門上に立ち戦闘の状況を確認していたエレクは、ジャンクヤード軍の後方から爆発が起きたのを確認すると組んでいた腕を解き、声を上げる。


「全軍に通達!奴らが…ヒーローズが無事にジャンクヤード軍の後方から攻撃を開始した!ジャンクヤード軍はこの後、全軍を上げて…ここ外壁正門に攻撃を仕掛けてくる筈だ!その前にこちらから動く!外壁正門を開門せよ!全軍、一気にジャンクヤード軍に向けて進軍する!」

「「「おぉぉぉう!!!」」」


 待ち侘びたエレクからの号令に、アパラタス軍の兵士達から威勢の良い声が上がる。そして、周囲に待機していた兵士達が慌ただしく動き始めた。

 約1分後、1人の兵士がエレクの下に駆け寄ってくる。


「エレク様!開門と進軍の準備が整いました!」

「よし。行くぞ。」

「はっ!」


 この時、この時を待っていたのだ。ここで全軍をあげて攻撃をする為に、リーリー1人でジャンクヤード軍の部隊を迎えうたせていたのだ。だからこそ、進軍の準備を整えた状態で辛抱強く我慢していたのだ。

 その甲斐があり、外壁正門の開門と進軍はエレクが指示を出してから5分と掛からずに開始される事になる。

 ゴゴゴゴゴ…と地響きの様な音を立てて外壁正門が開かれていく。そして、その隙間から銃器を構えた治安部隊、各々の魔具を構えた戦闘部隊が隊列をなしてジャンクヤード軍に向けて進軍を開始した。

 ジャンクヤード軍の混成部隊の攻撃に対応が追いつかなくなっていたリーリーは、後方の外壁正門が開門したのを見ると、小さく溜息をつく。


「ふぅ。やっとじゃのう。これで…光明が見えたんじゃのう。おっと…!」


 敵軍兵士が放った小型ミサイルを魔力の網で慣性を殺しつつ受け止め、投げ返したリーリーは…魔力の縄を巧みに操って自身の体を大きく後方に向けて投げ飛ばした。

 砲弾の様に空を飛んだリーリーは、進軍するアパラタス軍の中央…エレクの近くに着地をする。


「エレク。やっとじゃのう。」

「あぁ。無理をさせてすまない。」

「全くじゃのう。老体にはかなり堪えたぞい。」

「…だが、これでジャンクヤード軍との正面衝突をこちらのタイミングで仕掛ける事が出来た。…勝つぞ。」

「勿論じゃのう。私達の住むアパラタスを守る為に…全力を尽くすんじゃのう。」


 士気が上がったアパラタス軍は、後方からヒーローズの攻撃を受け…それを防ぎつつ前進するジャンクヤード軍へ向かっていく。

 そして…両軍が進軍を始めて数分。遂に、小細工無しの正面衝突が始まった。

 まず、最初に飛び交ったのは銃弾の嵐。両軍の最前列には巨大な盾を持った兵士が横一列に並び、銃弾を防ぐ。その隙間と後ろから銃火器を持った兵士が敵軍を狙う。

 ここまでの構成は両軍共同じ。

 アパラタス軍は銃火器を操る兵士の後ろから戦闘部隊が各々の得意属性に基づく攻撃魔法を放つ。

 ジャンクヤード軍は魔法部隊が全員が同じ属性による攻撃魔法を放つ。更に、銃弾の嵐をかいくぐる様にしてサイボーグ部隊も疾走し、アパラタス軍の前線に喰らい付き始めた。


「むぅ…。ヒーローズと我が軍の挟撃で士気が下がるかと思ったが、期待していた程の効果は無いか。」

「そうじゃのう。ヒーローズが後方からどれだけ損害を与えてくれるかが鍵じゃのう。」


 冷静に戦況を分析するエレクとリーリーであった。


 さて、その彼らが期待を寄せるヒーローズはというと…ジャンクヤード軍相手に大健闘をしていた。

 ヒーローズを迎え討つジャンクヤード軍の編成は、アパラタス軍に対するものと同じだ。最前列に盾部隊。その後ろには銃火器を構える兵士、魔法を放つ兵士と続いている。

 アパラタス軍がこの編成相手にほぼ互角の戦いを繰り広げているのだから、人数的に少ないヒーローズが戦闘を行った場合、劣勢になるのが普通なのだが…そうでない状況を作り上げる要因があった。

 それがヒーローズのリーダーである朱鷺英裕と、幹部のケイト=ピースだ。


「へっ!この程度で俺達を止められる訳がないだろうが!」


 ヒーローズの先頭に立ってジャンクヤード軍へむけて歩く英裕に、数多の銃弾が降り注ぐ。しかし、右肩に乗せたカットラス…比較的激しい反りの刀身で刀身の幅が広い刀剣…を横に一閃すると、その前方にあった銃弾が全て空中で停止する。そして、英裕はカットラスの柄を両手で持ち切っ先を真っ直ぐジャンクヤード軍へ向けた。


「俺の時空剣【響桜】の前じゃ、こんな攻撃は子供騙しみたいなもんだ。さぁて、吹き飛んで貰うぜ!」


 ギュンっと魔力が時空剣【響桜】に凝縮し剣先から解放される。放たれたのはソニックブーム…つまり衝撃波である。その速度は凄まじく、空中に停止する銃弾を尽く吹き飛ばし、一瞬で盾を持つ兵士に到達。兵士達がそれを認識した時には、衝撃波に吹き飛ばされて宙を舞っていた。


「おっし!一気に崩すぞ!」


 英裕の攻撃で出来た防御の穴に向けてヒーローズが攻撃を始める。ここでジャンクヤード軍の防御を崩せば、反対側から攻めているアパラタス軍との挟撃が完全に成功する事になる。それを認識しているからこそ、ヒーローズの面々は今この一瞬に全てを懸けて攻撃をしていた。

 ヒーローズによる怒濤の攻撃はジャンクヤード軍の防御を確実に崩していく。今まで攻撃を防いでいた盾がなくなった部分に攻撃が集中し、次々とジャンクヤード軍兵士は倒れていった。

 防御の穴を埋めるべく、その左右にいた盾を持つ兵士は横に移動を開始する…が、魔力の弾丸が盾の隙間を縫って兵士の足に着弾。同時に爆発を引き起こして足をもぎ取った。

 偶然…では無い。盾を持つ兵士は次々と魔弾に足を貫かれて倒れていく。


「うしっ。やっぱ俺の後方支援は必要だよな。」


 こう言って口元に笑みを浮かべるのは、サブマシンガンを構えたケイト=ピースだ。


「うしっ。次はこれでいくかな。」


 ケイトが仲間に合図をすると、3人の男が騎馬戦の様に三角形で肩を組み合わせる。その上に飛び乗ったケイトはサブマシンガンから貫通爆発弾を連射した。

 高い位置からの射撃によって盾の上から後方に降り注ぐ魔弾は、着弾と同時に紅蓮の花を咲かせ、ジャンヤード軍兵士達を次々と吹き飛ばしていく。


「いいねぇ。ここまで来たら…一気にぶち抜く!」


 下手をすれば相手の兵士から集中砲火を浴びかねないケイトの大胆な銃撃を見てテンションが上がったのか、英裕は時空剣【響桜】に再び魔力を溜ると上に振り上げる。すると、一瞬辺りに立ち込めていた周囲の音が全て消える。全員が動きを止めた訳ではない。むしろ、今まで通り…もしくはそれ以上に激しく戦っているのだ。

 音が消えた1秒後には剣同士がぶつかる音や、銃火器が日を吹く音が戻ってくる。戦う者達は音が一瞬消えた事に気付くが、それが英裕によるものだとは気付かない。

 そして…英裕は振り上げた時空剣【響桜】を勢いよく振り下ろす。


「一気にぶっ倒れな!」


 時空剣【響桜】の動きに合わせて上から落ちてきたのは…音の塊だ。それはジャンクヤード軍の指揮官がいる場所の近くに落下。音の塊は地面にぶつかると凝縮された音を全方位に向けて解放し、周囲にいるジャンクヤード軍兵士達の鼓膜を強かにうち平衡感覚を失わせた。

 次々と倒れ行く兵士達をみた指揮官は顔が引き攣ってしまう。


(なんなんだ…。なんなんだ!アパラタス軍は魔法の使い手が少数だと聞いていたぞ。それなのにその少数の魔法使いの実力が桁外れだ。…ジャバック様が戻らないと、このままでは押し切られてしまう…!)


 危機感を募らせる指揮官。周りにいる兵士達も同じ事を考えているのだろうか。紛争が始まった時の余裕な表情をする者は1人としていなかった。

 

(このまま我が軍が負ければ、ジャンクヤードの地はアパラタスに掌握されてしまう。…もしかしたら、闇社会の目的がアパラタス軍に負けた我が軍の隙をつき、ジャンクヤードを闇社会の本拠地とする事かもしれない。……くそっ!悪い予想しか浮かんでこない。このままだと、俺たちのジャンクヤードが奪われてしまう可能性が高い…。…負けられない。負けられない!)


 自軍の不利を悟り、そこから想像できる最悪な結果を想像し、精神的に追い詰められたジャンクヤード軍の指揮官はとある決断を下す。


「…全軍に通達する。我らに1人1人配られた魔力の結晶…クリスタルを1箇所に集める。そして、魔砲弾に全てを詰め込み…アパラタス軍の中央へぶち込む!この作戦の成功なくして我が軍の勝利はあり得ない。故に…この魔砲弾を確実に着弾させるため、あらゆる犠牲も厭わない。」


 こうして、追い詰められたジャンクヤード軍による決死の作戦が動き始めた。





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