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Colony  作者: Scherz
第五章 機械街 立ち向かう者
737/994

13-4-10.引き寄せられる強者達



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 アパラタス東地区。


「うぉおおぉぉぉ!てめぇら全力で行けぇ!」


 髑髏が描かれた青いバンダナを巻いた筋肉質な男が、大声量で後ろに控える同じ青バンダナを巻いた男たちに指示を出す。


「「「「おおおおおおお!!!」」」」


 むさ苦しいほどの声量で呼応した男たちは、正面から向かってくるヤクザ風の男たちに向けて突進を開始した。

 

 2つの軍団が激突する直前、近くのビル陰に潜むもう1つの集団がいた。

 その中の1人が小さく呟く。


「ったく。どこもかしこも乱戦状態じゃん。」

「まぁ、暴動が起きてんだから仕方ねぇだろ。」


 文句を言っているのが朱鷺英裕…ヒーローズのリーダー。諌めているのがケイト=ピース…ビストとタッグを組んでいたヒーローズのメンバーだ。


「にしても…ビストはどこに行ったんだ?」


 英裕の問いに、ケイトは困った顔で頭を掻く。


「それが…暴動が起きた時に探したんだけど、何処にもいないんだ。あいつなら暴動を止めようとして暴れまわるって思って、暴動の中心地を回ってみたけど…何処にもいないんだよ。」

「…なんかいやな予感がすんな。」


 顎に手を当てて暴動の様子を眺める英裕。特徴的な外見からは想像付かない程の真剣な表情である。アシンメトリに整えられたオレンジの髪は、左側だけが長く…右耳の上には剃り込みが入っていて、右耳に付けられた5つのピアスが光を反射してキラキラと光っている。只のガラが悪いヤンキーにしか見えないのだが、普段の行動は全てが計画的。そして、仲間を引っ張っていくリーダー性を兼ね備えた彼は…まさしくヒーローズの支柱的役割を果たしていた。

 ビストの事が気になるのは最もだが、それよりも現状の暴動にどう関わっていくのかを懸念するケイトは、英裕に声を掛ける。


「なぁ英裕。これからどうすんだ?」

「ん?それは…。」

「こっちにも機械塔の手先が潜んでるぞぉ!てめぇら、一気にぶっ殺せ!!」


 英裕の声を遮ったのはヤクザ風の男。そして…ヒーローズが身を潜めていたビルの陰の、更に奥の陰から大勢のヤクザ風軍団が姿を現したのだった。

 前ではドックルーズとヤクザ風軍団が衝突していて、後ろからもヤクザ風軍団。これでは戦いを避ける事は不可能であった。

 だが、英裕はニヤッと笑みを浮かべていた。


「ま、元々この柄の悪い奴らを倒すつもりだったし、問題ないだろ。よしっ。みんな行くぞ!こういう日の為に強くなったんだ!俺たちの手でアパラタスを守るぜ!」

「「「おう!」」」


 ヒーローズのメンバー達は銃を中心とした武器を構えると、後方から襲い来るヤクザ風軍団に向けて攻撃を開始した。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 ほぼ同時刻、北地区では暴動隊が1人の人物によって蹂躙されていた。無双状態で周りの暴動隊を吹き飛ばしまくっている者は、頭から灰色のマントをスッポリ被っていた。


「てめぇみたいな怪しい奴に…負けてたまるかぁ!ぐふぅぅぅ…!」


 威勢良く叫びながら襲いかかった一般市民のような格好をした男は、攻撃を繰り出す前に鳩尾に強い衝撃を受けて膝を折った。


「…………。」


 鳩尾に減り込んだ棒…鉄棍をクルクルと回して構えを取った灰色フードの人物は、周りを見回し鉄棍を構えて動きを止めた。

 この場にいる暴動隊にはヤクザ風の男達は混ざっておらず、本当に只の一般市民が暴動を起こしているのか…という感覚も受ける。

 だが、それにしてはおかしな点もあるのだが…。

 ここで1人の一般市民がマシンガンを構えて前に出ると、灰色フードに向かって叫ぶ。


「てめぇ…機械塔のラウド=マゲネだろ!?なんで俺たち一般市民に攻撃すんだ!?俺たちはアパラタスを守る為に戦ってんだ!」

「………。」


 灰色フード…ラウド=マゲネは言葉を発さず、しかし、首を僅かに横へ傾げた。


「はっ。沈黙の磁力使いとはよく言ったもんだな!いいか!?てめぇら機械塔の連中が怪しい団体と通じて、この星を戦争に巻き込もうとしてんのは知ってんだよ!」

「……。」


 男が言った事が事実なのであれば、それは由々しき事態である。しかし、ラウドはそのような事を聞いた覚えがなかった。

 首を傾げたまま動かないラウドにイラついたのか、マシンガンを構えた男は懐から1枚の紙を取り出すと、手裏剣のようにしてラウドに向けて放り投げる。


「………。…!」


 キャッチして見てみると紙切れは…写真であった。そこに写っているのは…街主エレク=アイアンが4機肢の間でクレジ=ネマと2人で会っている写真であった。


「これを見てもてめぇは街主を信じられんのか!?闇社会の連中と街主は裏で繋がってんだよ!」

「…。」


 それでもラウドは無言を貫く。確かに疑いようのない事実を突き付けられたのだが、果たしてそれが本当なのか…という疑問が残る。写真が撮られた時期はいつなのか、どの様な状況で撮られたのか、誰が撮影したのか。

 写真を見ただけで全てを判断するのは早計すぎると言えたのだ。しかし、この写真が暴動が起きるきっかけになったのも事実。

 また、ラウド達の見解では闇社会が裏で糸を引いた事で暴動が起きたとなっていたが、この写真から推測すると…別の勢力が裏で暗躍している可能性も出てきたのである。


(………。確認する必要がある。)


 ラウドは写真をフードの中にしまうと鉄棍を垂直に地面へ突きたてた。その行動に反応して武器を構える暴動隊のメンバー達。


「…まだ街主を信じんのか!?」

「……。」


 ラウドは行動をもって返事と代える。鉄棍からバチっと電気が走ったと思うと、暴動隊からざわめきが起き始めた。


「な、なんだ!?」

「引っ張られんじゃねぇか!」


 そして、暴動隊が所持していた数多の銃を始めとする金属に類する物がラウドに向かって飛翔し始めた。

 それらの金属物はラウドの周りに球状に集まって姿を覆い隠す。そして…グワンと動いたと思うと、鉄棍の先で巨大な鎌の形で集結した。

 例えるならば、灰色のフードを被った巨大な鎌を携えた死神…とでも言おうか。その姿は暴動隊の面々に恐怖を抱かせるのには十分であった。

 そんな感情を知ってか知らずしてか、ラウドはすぐに攻撃へと移る。高速で暴動隊の正面に接近し、振るわれる鉄鎌…吹き飛ぶ暴動隊。今迄の無双状態がお子様遊びであったかのように次々と暴動隊は地に伏していく。

 そして、ものの数分でその場に立つのはラウド1人となったのであった。


(…もどる。)


 ラウドは呻き声を上げて蹲る暴動隊に一切の興味を示さず、機械塔に向けて走り出した。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 再び場面はヒーローズとヤクザ風軍団がぶつかっている場面に戻る。

 2つの勢力の攻防はほぼ均衡していた。人数ではヤクザ風軍団の方が圧倒的に多いのだが、ヒーローズで先陣を切って戦う英裕と、後方からそこそこに的確な支援攻撃をするケイトが相手の進行を上手い具合に押しとどめていた。

 ヤクザ風軍団側の意見は「ヒーローズは朱鷺英裕がなんとか押し切られるのを支えている。ここで一気に攻勢力を上げれば押し切ることができる」となっていた。このまま消耗戦を続けていても良いことはないし、何よりも相手の力量に合わせる必要性も全くないのだ。

 ヤクザ風軍団の目的はヒーローズの足止めをすることではない。機械塔側勢力に与する者達を潰すことである。


「よし…てめぇら、一気に叩き潰すぞ!」


 ヒーローズとの戦闘をこなしつつ、伝令役を使って1つの作戦を全体で共有していたヤクザ風軍団達は、リーダーの号令で一気に行動を開始する。

 固まって押しに掛かっていたヤクザ風軍団は陣形を広めに取り、対するヒーローズも同じように広がるように仕向けていく。そうして、英裕の周りに居る人の密度が減った所で、ヤクザ風軍団の中心を割るようにしてある武器を構えた男達が20人現れた。

 彼らが構えるのはバズーカ。それを確認したヒーローズの面々からはざわめきが漏れ始めた。


「おい。なんであいつらがバズーカを持ってるんだ?」

「そうだ。バズーカを大量に保管していた倉庫から、全て外部の平和促進団体に渡して解体してもらった筈だろ?」

「あぁ。機械塔での製造履歴と、保管してあったバズーカを照らし合わせて…確か行方不明なのは全部で3つだけだったはずだろ!?」

「あぁ…バズーカの製造は元々行われてなくて、製造が始まった瞬間に俺たちが倉庫をおそったから…製造は中止になったはずだ!」


 動揺が広がるヒーローズに向けて、バズーカを持った男の1人が勝者の笑みを浮かべて一歩前に出る。


「くくく。てめぇら…緩いな。あの時お前達にバズーカ回収の依頼をしたのは俺たちだよ!お陰で無理せずにコレを手にいれることが出来たぜ!」


 衝撃の事実にヒーローズの士気が音を立てて崩れていきそうになる。


「成る程な。どぉりでスムーズにいったと思ってたんだよ。まぁいい。そんならする事は1つだ。…もう1度全てのバズーカを回収するだけだ!」

「はっ。出来るもんならやってみろ!圧倒的な破壊力でてめぇの自信もろともぶち壊してやるよ!」


 そして、全ての砲門が英裕に向けて狙いを定めると、同時に砲弾の射出を開始した。


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