4-1-3.授業
ラルフは生徒達の非難の視線を浴び続けながら、授業の内容を告げる。
「今度の授業は、対人戦だ。」
生徒達の反応は様々だ。相変わらず非難の視線を向ける者、嫌そうな顔をする者、よしと言わんばかりに掌と拳を打ち合わせる者。
バルクは少し顔を上げラルフを見るが、また顔を机に向ける。本来なら1番喜びそうなものだが…失恋とは怖いものである。
「対人戦は、戦略が重要になるぞ。相手の次の行動を予測しながら動く事が必要だ。そして、相手の行動に対する瞬時の対応力も求められる。まぁ、ここは対人戦をした事がある奴なら分かるだろ。なんにせよ、数をこなす事が必要になる。」
ラルフはバルクをチラ見し、頭をボリボリ掻く。一応気にしているらしい。
「今日からひと月、毎日対人戦をするぞ。でだ、前期の最後にクラスでのトーナメントを行う。優勝した奴には、そうだな…俺とのバトルでどうだ。」
バルクがラルフの言葉に反応し、勢い良く立ち上がる。再びクラスの視線が集中する。
すると、ついさっきまで落ち込んでいた筈の様子が一瞬で変わっていた。普段のバルク以上の、闘志に燃えた目をしている。
「おい、ラルフ。今の忘れるな。俺が優勝して、お前をぶちのめしてやる!」
「お、威勢がいいな!期待しないで待ってるよ。」
ラルフはニヤリと笑う。バルクを気にして優勝者がラルフと戦えると言ったのは容易に想像できた。そして、ラルフの思惑通りに、やる気に満ち溢れて燃えたバルクの単純さは、何とも小気味良いものだった。
「よし、じゃあ今日の午前は魔法史だ。」
ラルフは黒板に年表を貼り付け、眠気に支配されやすい座学を開始した。




