4-1-2.授業
沈黙に支配されたクラスにラルフが入ってくる。そのラルフもまた動きがぎこちない。
「あー体が痛ぇ。おい、皆席に座れ。…ん?なんで皆して静かにバルクを見つめてるんだ。気持ちわりーぞ。」
筋肉痛のせいでやや疲れた声ではあるが、いつものラルフである。クラスを見回し怪訝な顔をし、すぐに、納得の表情に変わる。
「ホントに元気ないな。というか、バルクが出す負のオーラにやられてる感じか。ま、初恋が一日にして終わった男は大体これ位は落ち込むだろ。無理せずゆっくり立ち直れよな。」
途端にクラスがざわめき始める。それもそうだ。バルクが初恋をしていた事は殆どのクラスメイト達は気付いていないし、更にその初恋が終わっていたとなれば…しかも1日限りの初恋である。もはやゴシップネタとしては最高のネタなのだ。その相手は誰なのか。どの様にして初恋が終わったのか。クラスメイト達はその顛末が気になってざわついているのだ。
だが、周りの興奮気味のざわめきとは反対に、バルクは下を向きながらゆらりと立ち上がった。そのまま拳を握り、ラルフに殴りかかる。と、誰もが思った瞬間…
「ほっといてくれ。」
涙を一粒零しながら呟いた。
想像以上の落ち込んだ反応を見て、流石に悪い事をしたと思ったのか、人差し指でコメカミの辺りを掻きながら目を泳がせるラルフ。
そして、ざわついていた事を棚に置いた生徒達の非難の視線が集中した所で、慌てたように口を開いた。
「よ、よし。これからの授業内容を話すぞ。」




