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Colony  作者: Scherz
第五章 機械街 立ち向かう者
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13-2-2.魔法技術



 黒板の前に立つラルフは教室内の顔をざっと見回す。


「うん。まぁ去年いた面子もいるから知ってる奴も居るとは思うが、そこは我慢して聞いてくれ。まーむしろ3年に上がれなかった奴ほどしっかり聞いて、これから話す内容を自分のものにして欲しいけどな。」


 捉え方によっては「馬鹿にされている」と感じる学院生も居そうなものだが…所謂留年組の面々は、ウンウンと頷いていた。上の学年に上がる事が出来なかった理由を個々がしっかりと把握をしているのだろう。


「まず、話すのは…知ってる奴とか使える奴も居るとは思うが、融合魔法についてだ。この前の対抗試合で使う奴が何人か居たから…知らないわけが無いか。融合魔法ってのは、2つの属性を融合させて発動させる魔法の事だな。ま、名前の通りなんだが。でだ…融合魔法はただ単に2つの属性魔法を融合させるんじゃない。それだと属性同士が反発しちまうからな。例えば…そうだな。」


 ラルフは少し考えた後に黒板に風と火の文字を書いた。


「うん、この2つが分かりやすいな。まず、融合魔法を使う時はベースとなる属性を決める必要がある。風と火の属性魔法を融合させる場合、風をベースにすると発火効果のある風魔法を発動できる。逆に火をベースにした場合、風の様に動かせる火を発動出来る。考えれば分かると思うが、火をベースにした場合よりも風をベースにした方が融合魔法としては優秀…っていうか相性がいい。正直、火をベースにした場合は劇的な変化は無い。火の扱いに長けた奴なら出来る事が、融合魔法を使う事で出来る様になるって程度だな。まぁ…火の操作能力があるってレベルだな。ここまでで分からない事あるか?」


 火乃花が手を挙げる。


「前から疑問だったんだけど、同じ属性同士での融合魔法って無いのかしら?」

「それは無い。」

「でも、そうだとしたら1つの属性だけ持ってる私みたいな人って、融合魔法を含めて考えたら属性魔法のバリエーションでは劣るわよね?」

「それはそうだな。融合魔法はそれだけで魔法の威力も上がるから、確かに不利といえば不利になる。単純な火力で考えた場合、上位属性と融合属性では…正直大差は無いとも言える。だが、極属性の場合は話は別だぞ?火力だけで見てもダンチだし、操作能力、消費魔力、発動スピード…基本的な魔法の評価では全てに於いて極属性の方が上回ってる。」

「ふぅん…。因みに、基本的じゃない評価なら劣ってるって事?」

「まぁ…基本的じゃない評価ってのが、奇抜さとか属性の不明瞭さって辺りだな。その魔法が何の属性を融合させているのかが読みにくかったり、融合させた事でベースの属性では考えられない操作をされたり…って感じだ。こういう点では融合魔法の方が上かもな。」


 火乃花はある程度納得したのか、頷くとノートにカリカリとラルフの話をメモし始める。


「えーっと…話が少し先回りしちまったかな?あ、そうそう。融合魔法は融合属性【風火】って表し方になる。ベースの属性が左で、その隣に融合させる属性だな。3属性を融合させるなら融合属性【水風火】って感じだ。風の様に操る発火効果のある水…みたいなイメージだ。基本的に3属性を融合させるのは相当な技術が必要だから、滅多にお目にかかれないけどな。」


 ラルフは学院生達が理解しているかを確認する為に1人1人の顔を見ていく。


(今年の新2年生は案外物分りが良いみたいだな。バルクも頷いてるって事は…分かってるはずだし。)


「ここまでが融合魔法についての説明だ。で、実際に習得する方法だが…これは次の内容に被ってくるから、少し置いとくぞ。」


 そう言うとラルフは黒板に《解釈》の文字をでかでかと書いた。


「魔法の解釈ってのを聞いた事ある奴いるか?」


 新2年生ではチラホラと手を上げる学生が数人。留年組の面々は去年も同じ話を聞いたのだろう…全員が手を上げていた。


「お、レイラも聞いた事あんのか。こりゃー意外だな。よし、説明してみ?」

「あ、はい。えっと…魔法の解釈によって、その属性で出来る幅が増える…みたいに聞いた事があります。属性の域を解釈によって広げるとかそんな感じだったかなって。」


 レイラは去年の夏休みに、魔法の台所でシェフズに解釈による魔法を人前で余り使うなと言われている。その為、自分が使える事を伏せ、聞いた事がある程度の話し方を選択していた。レイラは極属性【癒】を《癒す=元に戻す》と解釈する事で、様々な物を時間を巻き戻すように元に戻す事ができるのだ。この解釈は癒すという枠組みを飛び越え、時間にまで作用する為…かなりの高技術魔法である。だが、レイラ自身はいつの間にか使えていたので、余り凄さが分かってなかったりもする。

 さて、そんなレイラの考えに気付くわけもなく、ラルフは「属性の域を解釈によって広げる」という言葉に大きく頷いていた。


「そうそう。まさしくその通りだな。例えば…。」


 ここでラルフは急に口を噤み、教室の中を見回す。


「……。いや、やっぱ例を言うのは止めよう。その例のせいで、その属性に対する解釈の余計な先入観が刷り込まれちまう可能性があるからな。そうすると、先入観が刷り込まれなければ会得出来た筈の解釈を、一生会得出来なくなる可能性もあるからな。…つっても、例は必要だから…。この中で誰も持ってない属性を選ぶしかないか。」


 腕を組んで考えるラルフはポンッと手を叩く。


「俺の属性【次元】で説明するか。よし、グラウンドに移動するぞ。」


 ラルフは教室にいる全員を魔法の光で包み込んで転移を発動させる。視界が光に包まれ、次の瞬間には全員がグラウンドに立っていた。相変わらずの高精度な転移魔法である。

 グラウンドの反対側では教師のダルム=パワード率いる1年生達が、無詠唱魔法で鉄球を持ち上げて運ぶ練習をしていた。

 2年生上位クラスの面々は懐かしい感覚に襲われる。ちょうど1年前、若しくは2年前…ひょっとしたら3年前、同じ授業を受けて魔法の基礎力アップに努めていたのだろう。その頃に比べたら大分成長した…なんて思っているのだ。


「ほらほら。これから見せんのは高技術魔法を会得する為のヒントだ。ちゃんと見て学べよ?まず、属性【次元】は属性【空間】の上位魔法だ。空間を操るってのは、空間を歪めたり、断裂したりって感じだな。その空間に対する解釈を《空間=次元》って解釈に変えるんだ。これによって空間そのものを構成する次元へ関与出来るようになる。こういう事だな。」


 ラルフが手を斜め上に向けると、空間が捩れて破裂する。


「今のが属性【空間】による爆発だ。次が属性【次元】による爆発。」


 再び空間が捻れるが、今回は空間がダブったように見える。そして、ダブった空間が重なりながら収縮していき…一気に解放されて爆発を引き起こす。破裂音と共に強烈な衝撃波が周囲に広がり、何人かの学院生はグラウンドを転がっていった。

 そんな生徒達を笑って見るラルフ。


「これが解釈だ。この場合は属性【空間】の解釈を変える事で、上位属性の属性【次元】を扱った事になるな。俺は実際に解釈によって属性【空間】が【次元】に変化したぞ。こういう属性変化を経験した奴も居るだろ。」


 ラルフの説明を聞いていた遼は、それが自分にも当てはまると直感する。属性【重量】の考え方…つまり考え方を変えた事で属性変化をし、属性【引力】を身につけたのだから間違いがない。《重力=加重》という考え方から、《重力=引力-遠心力=引力操作》という解釈をした事による属性変化。


(なるほどね…。魔法の解釈がちょっと分かってきたかも。)


 遼が1人で納得している中、ラルフの話は続いていく。


「でだ、話がここで戻るんだが、融合魔法もある意味で魔法の解釈に属するんだよ。例えば、水と電気を融合させる場合…電気を纏う水として使うのは2つの属性を同時発動する複合魔法に過ぎない。水と電気の2つの特徴を持った魔法をどの様に解釈…正確にはイメージするかが大事になる訳だ。この場合は水の様に操れる電気…ってのが分かりやすいだろうな。流体の様に滑らかに自由自在に形を変えて攻撃出来る電気は、属性【電】だけでは不可能だ。つまり、発想をどうやって転換してイメージするかが高技術魔法を会得する鍵って事だな。」


 ちなみが手を挙げる。


「お、ちなみか。今年も2年かー。お前…わざと2年にいんのか?」

「え、そ、そんな事ないです…。私、真面目に頑張ってます!」

「お、そうか。ならいいか。で、なんだ?」

「あ、えっと…、前から疑問だったんですけど、複合魔法は只の同時発動に過ぎないけど、2つの属性効果を与えますよね?でも…、それは融合魔法も同じだと思うんです。」

「あー成る程な。そりゃー簡単だ。確かに2つの属性効果を与えるって点では同じかもしれないな。だが、融合魔法の場合はベース属性の性質が融合する属性によって変化して、与える属性はベース属性のみってのもあるんだよ。まぁ、だからって融合魔法に種類があるって訳じゃないからな。あくまでもベース属性の性質を変えるのが融合魔法の基本だからな。」

「あ…分かりました!うんうん。」


 ちなみは納得顏で頻りに頷いてる。それを見たらラルフは思わず頭をポリポリしてしまった。


(こいつ…一生懸命でいいんだけどな。イマイチ大事な所がぬけてるから、そこが改善できる…かだな。)


「よし、次は固有技について話すか。」


 ラルフによる真面目な授業はまだまだ続く。

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