2-4-2.クラス分け試験
吹き飛ばされて倒れた遼が頭に顔を歪めながら、自分が立っていた場所を見ると…そこには赤い髪の女性が佇んでいた。
可愛らしい整った顔をしているが、気が強そうな雰囲気も感じられる女性だ。
凛とした雰囲気で立つその女性は、無様にも地面に倒れている遼を横目で一瞥する。
遼を吹き飛ばしたのは…恐らくこの女性だろう。
かなり痛烈な一撃だったが、その攻撃が無ければ遼は負けていた可能性が高い。助け方について思う事はあるが…一先ずお礼の言葉を口にしようと遼は口を開く。
しかし…。
「邪魔だから君はそこにいてね。」
「なっ。」
女性が先に口を割り…しかも、いきなりの邪魔宣言にショックを受ける遼。ポカンと呆けた顔を晒す遼を尻目に、女はクラウンの方へ目線を送った。
「爆発音を聞いてここに来たら、出れなくなったんだけど。この結界って君が張ってるんだよね。君を倒せば出れる?あと、君って強いのかな?」
突然の乱入者に戸惑いながらも、クラウンは俺様の態度を崩さずに胸を張って言い返した。
「強いかどうかは戦えばわかる!くくく。俺様の結界からは逃れられんのだから、否が応でも俺様の強さをその身をもって実感するのだ!」
「ふーん。そうなんだ。じゃあ戦おう。あ、一応自己紹介しておくね。私は霧崎火乃花。じゃあ、いくわよ!」
言葉と同時に火乃花の両腕につけられた腕輪が輝く。火乃花は両手を合わせてクラウンに向けると、そこから複数の炎弾を撃ち出した。
炎魔法の攻撃を見たクラウンはピクリと眉を反応させる。
「ほお、炎の使い手だな。ならば、俺とは力勝負!」
好戦的な表情をしたクラウンも負けじと両手から大量の爆弾を打ち出す。爆弾と炎弾がぶつかり、爆炎と煙が辺りに立ち込める。
視界が悪くなったのを確認した瞬間に、クラウンは足下で爆弾を爆発させ、その反動で宙高く飛び上がって視界を確保する。
そして、上空から煙の立ち込めた平原を見渡したボムは火乃花に向けて再び爆弾を投下しようとして目を疑った。
なんと、クラウンの下には雲海が広がっていたのだ。
予想外の事態にクラウンは動揺を隠す事が出来ない。
「なんだと、俺はそんなに高く飛んでいないぞ!まさかあの女の魔法で雲の上まで飛ばされたのか!まずい、まずいぞ。このまま落ちて負けになってしまう。のおぉぉ!こうなったら、置き土産に大量の爆弾を降らせてやる!」
唾を撒き散らしながら叫んだクラウンは、最後の悪足掻きに全力で爆弾の雨を降らせる。
クラウンは浮遊魔法を使えない己を怨み、この時点で己の負けを覚悟ししていた。…が、あり得ない現象が起きる。雲に触れた爆弾がことごとく爆発したのだ。
そして、事態を理解出来ぬまま落下したクラウンも雲の上に立ったのである。
「まさか、あそこから爆弾をバラまくとはね。混乱してる最中に不意打ちする予定だったんだけどな。そんなには甘くないっか。」
気が付くとすぐ近くに火乃花が立っていた。彼女も雲の上に立っている。
「気づいたとは思うけど、これは私の創り出した幻。ここからは小細工なしで本気で行くわよ?」
両手を広げた火乃花は複数の炎鞭を生み出し、クラウンに向かって振りかざした。クラウンは鞭を狙って爆弾を飛ばすが、鞭をすり抜けてしまう。
「ふふ。この魔法は炎鞭の虚実を入れ替える事が出来るの。これでフィニッシュよ!」
炎鞭はクラウンに直撃する寸前に実体を取り戻し、クラウンの身体に複数の爆発を引き起こす。
「ぐぁぁぁ!」
クラウンは吹き飛び、地面へと倒れた。倒れ方が大袈裟な気がするが、まぁこれだけ騒がしい男なのだ。当然といえば当然なのかも知れない。
「く、くそ。今の攻撃で俺様の服が台無しだ!大事な所も少し見えてるじゃないか!こんな所で負けるわけなはいかないんだ。俺には、俺には大事な夢があるんだ。」
「なにブツブツ言ってるの。これで終わりよ」
火乃花の両手に炎が現れる。
「これで…」
ピンピロピンパンポンピンパン
不意に島全体に不思議な音が鳴り響いた。