3-2-5.爆発
「それよりラルフ!リリス先生は大丈夫なのか!?」
バルクが焦った様子で問う。見た感じ、リリスに目立った外傷はないが…。
「リリスだけ先生付けて呼ぶのか。俺ってまだまだだなー。」
「いや!そこはどうでもいいだろ!」
「ん…。」
すると、リリスがラルフの腕の中で僅かに身じろぎをした。
「先生!大丈夫ですか!?」
バルクが駆け寄る。リリスはゆっくりと目を開けると、バルク…では無くラルフの顔を見て口を開いた。
「ラルフ…。来てくれたのね。ありがとう。」
弱々しい声で囁く様に話す。魔力の渦の制御で大分魔力を消費していそうである。幾ら外傷がなく、意識があったとしても油断は出来ない。少なくともバルクはそう考えていた。
(俺が買い物に誘わなければ、こんな目に合わなかったんだよな。)
リリスの様子を見て、後悔の念に苛まれるバルク。ラルフはリリスの頭を撫でると、声を掛ける。
「当たり前だ。可愛い妻のピンチには駆けつけるってもんだ。」
バルクは耳を疑った。ラルフはリリスを妻と呼んだのか?そうならば、つまり。
(ラルフとリリスは夫婦?)
その事実へと辿り着いたバルクは、膝から崩れ落ちた。
(俺のこの気持ちは永遠に実らないじゃないか!ってか、ラルフが夫なのかよ!?)
人生初の恋心が砕け散った瞬間である。顔を下に向けてうなだれるバルク。その様子を見て、心配したリリスはラルフの腕の中から声を掛ける。
「バルク君どうしたの?どこか怪我でもしたのかな?あ、そういえば、お店で何か言おうとしてなかった?」
バルクはショックを受けていることを悟られないように少しの間を置き、…だが涙が出そうな顔をリリスに向けることは出来ずに下を見ながら、震える声をなんとか抑えて答えた。
「いえ、皆が無事で嬉しくて。じゃ、俺帰りますね!」
バルクはリリスから顔を背けると、物凄い勢いで走り去った。その時、顔から水滴が宙へと舞ったのは言うまでもない。バルクが走り去る直前の顔を見た龍人と遼は、思わず顔を見合わせてしまう。
その顔は、涙と鼻水で可哀想なくらいにグチャグチャだったのである。