表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
657/994

11-8-1.龍人の朝



「メリークリスマス!12月25日ですね。世の中はハッピーなクリスマスになっているんでしょう。恋人が一気に増えるこのシーズン!街の中は甘い雰囲気のカップルで一杯なんでしょうね。そして!そんなクリスマスに魔法街最大のイベントとして12月24日から魔法学院1年生対抗試合を開催しています!これは、街立魔法学院、ダーク魔法学院、シャイン魔法学院の1年生が4人1組のチームとなって、トーナメント方式で戦っていくものです。昨日行われた対抗試合の予選では初戦から白熱の戦いの連続でした!観客席は常に満員御礼。準決勝から販売された立見席も一瞬で完売したそうです。それでは、現地の取材に行っているアメリカンなリポーター、デッドに現地の様子を伝えてもらいましょう!テッド~!」


画面が切り替わると短い天然パーマの金髪男が画面の中央に立っていた。鼻筋は高く、パッチリとした青い目、ニヒルな笑顔はまさしくアメリカン。彼の後ろには巨大な試合会場がこれでもかと言う位に存在感を示しながら鎮座している。


「ハァーイ!みんなオハヨーゥ!テッドだよ!今、僕は対抗試合が行われる会場の前に来ています。前売り券は勿論完売していて、今日販売される立見の当日券を求める人達が既に大行列を作っているんダヨー!なんて言ったって、今日の決勝はも~見所しか無いからネ!決勝でぶつかるのはシャイン魔法学院の4人と街立魔法学院の4人ダヨ!」


ハイテンションで親指を立ててグーグー!っとポーズを決めたテッドは、ココで1枚のボードを取り出した。そこには決勝戦に進出した顔写真と名前が貼られていた。


「なーんとなんとー!当日券待ちの人達全員に聞いてきたヨ!1番好きなのはダーレー?ってね!その結果がコレ!トゥルルルン!」


自分で効果音を言いながらボードをひっくり返すと名前の横に大きな字で数字が描かれていた。


「ベリーベリー人気モノは霧崎火乃花だ!彼女のナイスバディはモチロンの事、一見キリリな表情に見え隠れする乙女の瞬間!多くの観客が火乃花のスマイルに悩殺さ!そして2番目に人気なのがマーガレット=レルハ!彼女もベリーベリーナイスバディ!ヨダレ出ちゃうよね?彼女の凜とした格好良さに惚れる男女が続出なんダヨ!」


こんな感じで人気者が発表されていく。因みに、順位は以下の通りだった。


1位 霧崎火乃花

2位 マーガレット=レルハ

3位 高嶺龍人

4位 藤崎遼

5位 レイラ=クリストファー

6位 マリア=ヘルベルト

7位 アクリス=テンフィムス

8位 ミータ=ムール


シャイン魔法学院よりも街立魔法学院のメンバーの方が人気という結果に終わっている。因みに、ミータが8位の理由としては「変な動きが気持ち悪い」「絶対にナルシストだから近寄りたくない」という辛辣な意見が多かった。要するに人気者と言うよりも、嫌われ者No.1という訳だ。

画面の中ではテッドが楽しく話し続けている。


「さぁさぁこんな感じなんダヨ!決勝戦が行われるのは14:00から!まだまだ時間があるケドネ~、みんなのテンションはバリバリめっちゃアゲアゲなんだ!さぁ、画面の前の暇してるキミ!デートしないなら対抗試合にレッツゴーー!僕もこれからレッツゴーするんだよ!さーて、スタジオに返すんだヨー!」


画面が再び切り替わると、やや苦笑い気味のキャスターが映る。


「ありがとうございました。いつもテンションが高いテッドですが、今日はいつも以上でしたね。それだけ彼も決勝戦が楽しみなんでしょう。さて、コマーシャルの後からは各チームの細かい分析を伝えていきます。魔法の歴史を塗り変えた高嶺龍人さんの魔法陣についても触れていきますので、お楽しみに!チャンネルはそのままで!」


アナウンサーのお姉さんにカメラが寄り、ウインクをバッチリおさめた所でコマーシャルが流れ始めた。


「対抗試合ってめっちゃ盛り上がるんだな。ってか、盛り上がってんのか。」


ズルルルーと珈琲を啜りつつチャンネルを変えてみるが、どの局でも対抗試合の特集で盛り上がっていた。クリスマスならもっと他の話題もありそうなものだが…それだけ注目度が高いのだろう。毎年これだけ盛り上がっているのか、それとも今年が特別なのか。魔法街で初めてクリスマスを過ごす龍人には分からない。


(それにしても、ルーチェ達が負けたってのがホント信じらんないな。)


準決勝で勝利した龍人達は控え室で待機を義務付けられ、準決勝2試合目が終わった後に控室から出ることを許された。その間は外で起きている一切の情報から遮断されたままだ。

部屋を出た龍人達は2つの驚きに見舞われる。


まず、1つはルーチェ達のチームが負けた事だ。ロビーのモニターには決勝に進出したチームが大きく表示されていた。…龍人達のチームと、マーガレット達のチームである。プレ対抗試合でシャイン魔法学院のメンバーと共闘した龍人の感触では、明らかにルーチェ達の実力の方が上だったはずだ。後から話を聞いてみると接戦ではあったものの、最後は一気に押されて負けてしまったらしい。ルーチェ曰く「シャイン魔法学院の皆さんは、実力を抑えて戦っていたように思いますの。あれだけ接戦を繰り広げてていて、最後の負け方はそれしか考えられないのですわ。その部分だけ見れば完敗ですの。」とのことだ。つまり、プレ対抗試合でシャイン魔法学院のメンバーは本気を出していなかった事になる。それに対して龍人達はほぼ全力で戦っていた。つまり、手の内をある程度は読まれてしまっているのだ。対戦相手の情報を徹底的に封鎖して行われていた対抗試合に於いて、これは多少ではあるが不利な状況になってしまっていた…とも言える。だが、龍人としてはそこまでの懸念材料にはなっていなかった。


(まぁ、あの時と全く同じ実力だったらそうだけど、そうじゃないしな。あまり考える必要はないかもか。)



そして、もう1つ龍人達を驚かせたのが、試合会場のロビーに大挙して押しかけていたメディア関係の人々だ。控室の魔法陣からロビーに移動した龍人達を迎えたのは、目が眩むほどのフラッシュだった。


「龍人君!君の使う魔法陣は何なんですか!?」

「火乃花さん!その体型を維持する秘訣を是非!」

「遼君!彼女はいますか!?」

「レイラさん!好みのタイプは!?」

「今日の試合の感想は!?」

「明日に向けての意気込みを!」


リポーター達による怒濤の質問責めにたじろぐ龍人達を救ったのは、少し遅れて魔法陣から出てきたシャイン魔法学院のマーガレットだった。


「何ですの?この人達は。マリア…道を作って欲しいですわ。」


「任せて。これ位なら簡単よ。」


マリアが右手を伸ばすと、その延長線上に板状の薄い結界が入り口まで伸びる。そしてその結界は左右に分かれて広がり、その場にいたメディア関係の人々を押し分けるようにして1本の道を作り上げた。


「さすがはマリアね。行きますわよ。」


ここでマーガレットはチラリと龍人を見る。


「べ、別にあなた達も通りたかったら通って良いのですわよ!今このタイミングでここにいるって事は、明日の決勝の相手はあなた達みたいですし。そうは言っても別に敵同士ではないのですわ!」


そう言うとマーガレットはプイっと顔を前に向けるとスタスタと歩き始めてしまう。そのマーガレットを狙ってシャッターが切られまくる。マリアはマーガレットが歩き始めたのを見ると、龍人達の方を向いた。


「マーガレットおなが言ってるのを分かりやすく言うと、こんな所で無駄な力は使わずに、明日はお互いベストのコンディションで戦いましょう。って事だと思うわ。…なんて解説してみる私。」


フフッと笑うとマリアも歩き始めたのだった。


その独特なキャラに龍人達はいっしゅん

顔を見合わせるが、確かに今脱出しないとマスコミに取り囲まれて大変な目に合いそうなのは間違いが無かった。

こうして、龍人達はシャイン魔法学院の力を借りて試合会場を無事に脱出したのだった。


(ホント今日の決勝戦は厳しい戦いになりそうだよな。小さな油断が原因で負けたりしないようにしないと。)


龍人は珈琲のお代わりを淹れながら、今日の試合で使う魔法陣のストックを作る作業に入る。


(シャイン魔法学院の奴らを考えると、戦いに速度が求められる気がするんだよな。そっち重視でストックしてみるか。集合が12:00だからまだ3時間位は家にいれるかな。ま、のんびりしてから行きますか。)


…ぴったり3時間後。


準備を全て整えた龍人は街立魔法学院の制服に腕を通す。鏡に映る自分の姿は、入学当初の時よりも少しだけ大人びている…ようにも見えた。

多くのメディアが注目しているのは昨日の事でも今日の朝のニュースでも分かっているので、いつもより念入りに髪型のセットもしてある。


「さて…と。行くかな。」


龍人はグンっと伸びをすると、家のドアを開けて中央区に向けて歩き出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ