3-2-1.爆発
それは魔法の台所が面する街魔通りで起きた。
街魔通りは巨大な通りで、夜も人通りが非常に多い。その為、通りの中央には魔力を媒体とした街灯が並木林の様に並んでいる。そして、その街灯群の光体を光らせる為、一定距離毎に魔力蓄積機が設置してあった。
その一つが前触れもなく爆発を起こしたのだ。爆発は蓄積機の周りで連続して起き、簡単に近寄る事は出来ない。
蓄積機を中心として連続した爆発が起きた事で魔力が蓄積機から漏れ出し、蓄積機の周りに魔力の渦が発生し始めていた。
爆発地点の近くに座っていた龍人と遼は辛うじて魔力の渦に呑み込まれるのを避ける事が出来たが、蓄積機の近くにいた通行人が何人か渦の中に引き込まれてしまっていた。
「おい、遼!どうなってるか分かるか!?このままじゃ、あの渦の中の人達がまずいぞ!」
「そんなこと言われても…!俺より龍人の方がこーゆーのは詳しいでしょ!なんか分かんないの!?」
「爆発する原因が分かんねぇ!そんな簡単に爆発するはずないんだ!」
魔力の渦はどんどん大きくなり、魔法の台所の店先に移動して様子を伺っていた龍人や遼すらも引き寄せ始める。遂には魔法の台所の商品や、近くの店の商品も宙へと舞い上がり、魔力の渦へと吸い込まれて行く。
魔力の渦の力はどんどん強くなり、数人の通行人が引き寄せられて渦の中に消えてしまう。このまま規模が大きくなっていけば、取り返しのつかない事態になるのは想像に難くない。
「龍人君!遼君!丁度いい所にいたわ!あなた達にも手伝ってもらうわよ!」
と、この声がしたのが魔法の台所の店内から。2人が後ろを振り返ると、リリスがバルクとその為大勢の魔法使いを引き連れてやってきていた。その表情には焦りの色が色濃く浮かんでいる。
「あれは多分、大量の魔力が一気にクリスタルに注入されて、暴走状態を引き起こされたのよ!魔力の結界で渦を閉じ込めて、そのままクリスタル化させるしかないわ!」
「クリスタル化!?そんな事出来るんですか!?」
バルクが驚く。
「クリスタルは大量の魔力を一点に凝縮する事で、精製出来るのは習ったわよね?その応用で、結界であの魔力の渦の動きを止めて凝縮することが出来れば可能なはずだわ!」
「そんな無茶な事、俺たちに出来るんですか!?」
辺りは、魔力の渦が作る風で声が聞こえない程にに荒れ狂い始めている。
龍人の悲鳴にも近い問いかけに答えたのは、太ったヒゲの親父だった。




