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Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
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11-5-5.知られざる存在



日本刀を構えて急接近するテングに対して、ルフトは風の刃で迎え撃つ。軌道をランダムに設定した風刃はうねるように空気を斬り裂きながらテングへと襲い掛かった。


(先ずはこれでお手並み拝見だねっ!)


相手の実力を測るには丁度良い威力の魔法だ。ランダムな軌道に対してどの様な対処をしてくるのかも参考になる。

だが、ルフトは自分の考えが甘かった事をすぐに悟る。テングはランダムに動く風刃の隙間を縫うようにして躱し始めたのだ。ほぼ全ての攻撃をギリギリで避けたテングは日本刀をルフトの首筋目掛けて横に一閃する。


「ぐっ…!」


後ろに仰け反るようにして避けたルフトはバックステップで距離を取ると、竜巻を4本発生させてテングに向けて放つ。


「甘いですね。こんな愚直な魔法で僕は倒せませんよ?」


テングの持つ日本刀に炎を発させ、竜巻をいとも簡単に切り捨てる。それを見たルフトは眉を顰めた。


(なんだあの炎?…青い?)


青い炎はユラユラと揺らめき、テングの日本刀に纏わり付くように周りをグルグルと回っていた。


「ルフトちゃん…あの炎、嫌な予感がするよっ!」


「そうだね…。不吉な感じしかしないよね。」


様子を伺って動かない2人と対峙するテングは、余裕な雰囲気を醸し出していた。まるで、生徒にものを教える教師のように。


「ふふふ。ルフトさん、ミラージュさん。大人しく投稿するなら今のうちですよ。君たちの実力では僕には勝てません。」


「へへっ。言ってくれるじゃんか。言っとくけど、俺…そんなに弱くないかんね?」


「そうだねっ!それに、サタナスが奥にいるんでしよ!私、あいつの事ぶっとばすって決めてるんだもん!」


「ほぉ…サタナスの事を知っているのですか。…まぁいいでしょう。あなた達が引く気がないのは分かりました。その選択、後悔させてあげます。」


そう言うとテングは日本刀を上段から振り下ろした。纏わり付いていた青い炎がルフト目掛けて伸びる。


「いきなりかいっ!」


ルフトは右手の周りに風の渦を発生させ、青の炎を払う形で 弾き飛ばす。そして、そのまま右手を突き出して風の渦をテングに向けて飛ばす…予定だった。右手を突き出したポーズのままルフトは動きを止める。そこにはテングが放ったら青い炎が付着していた。不思議と熱さは感じない。


「なんだこれ?」


「その炎に捕まったのなら、僕の勝利はほぼ確定です。」


「なーに言ってるんだしっ。こんな熱くもない炎じゃ俺は倒せないよっ?」


「そう思っていて頂いて構いません。」


ルフトは右手に付着した青い炎を振り払おうとするが、炎はくっ付いて離れない。


(ん?ダメージは無いけど…なんか嫌な予感がするね。)


今の所青い炎による影響は全くないが、テングの自信の程を見ると何かしらの効果があるのだろう。早めにテングを倒すに限るのは間違いが無い。


「さぁ、続き…いきますよ!?」


テングが刀を振るうと青い炎が礫となって飛散する。ルフトは魔法壁を張って炎の礫を防ぎ、テングの周り数カ所に空気を圧縮、それを一気に解放することで風刃を辺り一面に撒き散らす。

追い討ちをかけるようにしてミラージュも動いていた。光の星を十数個部屋の天井付近に飛ばし、その星から極太のレーザーをテングに向けて放った。レーザーの着弾と同時に視界が白に埋め尽くされる。通常であれば多少なりともダメージを与え

再び視界に色が戻ると、そこには平然とした様子で立つテングがいた。


「甘いですね。この程度の攻撃で僕を倒せると思っているんですか?」


テングは日本刀を持つ右手をダラリと下げたまま薄く笑う。


「君達に見せてあげます。圧倒的な力の差というものをね。」


話し終わった瞬間にテングの姿が消える。その直後、上から魔力を感じたルフトとミラージュは魔法壁と防御壁を頭上に連続展開した。天井付近にまで跳び上がっていたテングは日本刀を構え、大きく振りかぶって一気に振り下ろした。

剣筋に合わせて巨大な炎の刃が形成され、ルフト達目掛けて急降下する。そして、魔法壁と物理壁に激突する寸前に大量の小さい刃に分裂した。


(マジか…!このままだと…!)


ルフトを嫌な予感が襲う。魔法壁、防御壁に向けて放った魔法がそのまま分かりやすい攻撃だけに終始するとは思えなかったのだ。そして、その予感通りに分裂した刃は分裂地点から弧を描くようにしてルフトとミラージュを襲う。つまり魔法壁と防御壁をを回り込む形で直接攻撃を当てにきたのだ。

ルフトは空気をその場で高速回転させる事で作った即席の風盾でギリギリ防ぎ、ミラージュは炎刃が直撃する寸前で体がブレ、そのミラージュの体を炎刃はすり抜けていった。ミラージュの属性【幻】によって、虚像と入れ替わったのだ。


ルフトよりも後方の位置に姿を現したミラージュは、先程キメラ達を葬り去った魔法を発動した。


「これでも…くらぇーい!」


光魔法で生み出された星が大量に出現し、テング目掛けて流星の如く飛翔する。この後、飛翔した星が集まって大爆発を起こすのは先程見た通りだ。そして、それを見ていたテングも勿論承知していた。


(これはマズイですね。星を避ける程の隙間も無いし、何よりスピードが速い。そして、あの爆発ですか…。これは手を抜いている場合ではありませんね。)


テングは全方位に青の炎を媒体とした魔法壁を展開した。


(青炎の融合魔法を使う事になるとは思いませんでしたね。魔導師団…思ったよりもやるという事ですか。)


流星群がテングの魔法壁に激突した。星と魔法壁がせめぎ合い激しく火花を散らす。

流星が与える圧は強大で、魔法壁を持続するテングの両手がミシミシと嫌な音を立て始めていた。


(よしっ!いけるよ!テングちゃんをぶっ飛ばして、サタナスもぶっ飛ばしちゃうし!)


手応えから勝利を確認したミラージュは杖に流し込む魔力を更に増やしてニカっと笑う。それと同時にギリギリで耐えているように見えるテングも微笑を浮かべていた。

流星群の勢いは更に上がり、そのままテングを魔法壁ごと吹き飛ばす。…筈だった。少なくともミラージュの中では。

手応えの感覚は相変わらず変わらない。だが、流星群の威力を上げても手応えが変わらない。いや、むしろ段々薄くなっているようにも感じられていた。


(…!これは何かのカラクリがある筈!)


見ると、テングの青炎で作られた魔法壁はその大きさを増していた。通常であれば削られて小さくなるものだが…。


「まだまだ!」


ルフトが両手に高圧縮した風球を連続で放つ。高速回転しながら風球はテングの魔法壁にぶつかるが、ここで目を疑う現象が起きた。

魔法壁にぶつかった瞬間に風球のサイズがみるみる小さくなり、消えてしまったのだ。


「へっ…?」


上級魔法並みの威力を込めた風球が消えてしまうなんていう事は、ルフトの常識からして考えられない現象だった。

そうこうしてる内にミラージュの流星群も勢いが衰えていき、最終的にテングの一振りで霧散してしまう。


「ルフトちゃん…どういう事なんだろ?」


「今、魔力自体を吸収されたみたいな感じがしたような…。」


テングは振り払った日本刀をまっすぐ伸ばしてルフトに向けて静止した。


「いいですか。あなた達は既に僕の術中にいます。次に魔法を使おうとした時が最後です。」


「なーに言ってるんだ!そんな脅しに引っかかる俺たちじゃないよっ!」


ルフトは自身の後方に風を集め始め、それに合わせてミラージュも杖に魔力を注ぎ込み始める。

テングは2人のその行動を見て頭を振った。


「聞き分けのない人達ですね。いいでしょう。その愚鈍さを後悔してもらいましょうか。」


日本刀が輝き青炎が刀身の周りにユラユラと現れ、炎自体も青く輝き始めた。

そして、その瞬間、ルフトとミラージュにも異変が発生した。





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