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Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
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11-4-5.対抗試合予選



試合会場の受付は大混雑していた。試合参加者達の受付と観客席のチケット販売を両方行っており、その受付販売のカウンターが1つずつしか無いのが原因だろう。ここまで大きな会場なら複数のカウンターがあってもいいものだが…それでも1つずつしか無いのには何かしらの理由があるのだろう。

受付の少し奥に広がっているロビーには複数のモニターが宙吊りになっていて、まるで何かのライブ会場のようになっていた。


「すいませーん。試合参加の受付をしたいんですけど。」


龍人は受付のお姉さんに声を掛ける。


「はーい。えっと…どこの魔法学院かな?」


「街立です。」


「うん。…はい、チームの代表者は?」


「えっと…俺?」


龍人は後ろを振り返るが、3人とも首を傾げている。チーム発表の時にチームの代表者については触れられていない。


「高嶺龍人か霧崎火乃花だと思うんですけど。」


「はいはい。街立の上位クラスだけ皆さん代表者を知らないのよねぇ。えーっと…はい!霧崎火乃花さんのチームで申請を頂いてます。じゃ、ロビーの中央にある転送魔法陣の所に行って、係員に所属学院とチームの代表者名を伝えて下さいね。はい、行ってらっしゃい!」


「お、おお。はい。」


パッパッパッと受付を済まされて龍人は3人の下へ戻る。チームの代表者に関してはラルフが伝え忘れたのだろう。相変わらずの適当さ加減である。


「なんか忙しそうでなんも聞けなかった。」


「まぁ、これだけ混んでいたらそんなにゆっくり対応はしてられないわよね。…ルールとか何も聞いてないから心配だけど、とにかく魔法陣の所まで行きましょう。」


「そうだな。」


そして龍人達は転送魔法陣の所まで進み、学院名と火乃花の名前を伝える。


「はい。おっけーです。じゃ、魔法陣に乗ってもらっていいかな?」


係員の指示通りに魔法陣に乗ると、転送が始まる。そして、次の瞬間には小さな小部屋に転送されていた。部屋の中央にはテーブルと椅子が4つ。そして壁にはモニターが4つ備え付けられている。龍人達が転送されてきた魔法陣はテーブルを挟んでモニターの反対側にあり、モニターの下には別の魔法陣が設置されていた。


「ここが控え室なのかな?」


レイラが部屋の中を見回しながら疑問を口にすると、火乃花が頷く。


「そうじゃないかしら。少し待ってみましょ。」


「この魔法陣は何につかうんだろうね。」


そう言った遼が興味本位でモニターの下に設置された魔法陣に乗ってみるが、特に反応は無い。

また、モニターの周りを調べてみるがリモコンも無ければ、本体にスイッチも無かった。

そんな事をしながら時間を潰していると、急にモニターの電源が入る。


「よっ!みんな元気か!?」


部屋に響き渡る爆音。モニターを調べていた遼は耳の奥に走る衝撃に床の上をのたうち回る。


「ん?音量を下げろ?どこでだよ?あ、ここか。あーあー。あー。こんなもんか?」


モニターに映った人物…それは、ラルフ=ローゼスだった。

レイラは大音量にビックリして縮こまらせた体を緩め、龍人と火乃花は「またこんな感じか」と呆れ、遼は床に横たわりながら涙目でモニターのラルフを睨んでいた。


ラルフはそんな事に構うことなく話を続ける。ま、ラルフ側から各控室の様子は見えてないので当たり前と言えば当たり前だ。


「えーと、今回は控室は全てチーム毎に個室に入ってもらっているぞ。全ては試合を公平に行う為だ。理解よろしく!おし、じゃあ対抗試合の予選について説明すっぞ。まず、今俺が映ってるモニターは試合を観戦する事が出来る。但し、負けたチームのみだ。試合に勝ったチームに関しては、相手チームの分析が出来るチームと出来ないチームが出てくる可能性があるから基本的に試合観戦は認めない。そして、全てのチームは準決勝が終わるまでこの部屋から出ることも禁止だ。転送魔法陣はもう機能停止してるし、転移魔法に対する対抗魔法も部屋に組み込まれてる。多分俺でも部屋から出るのは難しい。ま、簡単に言えば勝っても負けても部屋で待機って事だ。」


「…徹底してんね。」


試合を公平に行うための徹底した措置に龍人が感心しながら呟く。向かいに座る火乃花は頬杖を付いて龍人を見る。


「それはそうよね。各魔法学院の優劣がこの試合で明らかになる可能性があるんだし。それに、今は魔法学院同士の仲は悪くないけど、数年前には魔法街戦争で各魔法学院が争ったわけだしね。ここまでやらないと後で不公平だったとかの声が上がるんじゃないかしら。」


「成る程ね。」


ラルフの説明はまだまだ続く。


「この措置は観客の皆も同じだ。基本的に観客席の周りには1日過ごす事が出来るだけの施設が備え付けられている。救護人を装って外に抜け出そうとする奴が過去にいたから、病院関係者も中で待機してもらってる。試合参加者、観客共に全員が準決勝の終了まではこの建物内にいてもらう。」


ここまで話すとラルフは紙をペラリと捲る。


「まじさ、説明多くないか?…分かった、分かったよちゃんとやりますよー。はい。で、試合場所は魔法で作った別空間で行う。今回は全ての試合が試合リングだ。基本的に正方形のリング上で戦ってもらう。観客からも戦い方をしっかり見えるようにっていう配慮だな。但し、決勝は全く違うステージで戦ってもらう。どんなステージになるかは本番までの楽しみだ。」


再び紙を捲るラルフ。


「えーと、これか。勝敗の決定に関してだが、どちらかのチームが全滅、もしくは降参するまで続く。で、全滅に関しては参加者全員に腕輪を装着してもらう。この腕輪は一定以下の体力になったら、今皆がいる部屋に転送する仕組みになってる。その一定以下だが、今回はギリギリまで戦えるように5%で設定してるみたいだな。もし、瀕死の状態に陥るダメージを受けた場合、ほんの少しだが回復をするようになってる。ま、それでも死ぬ可能性は皆無じゃないって事は理解しとけ。死にたくないんなら参加しないのが一番だ。」


脅し文句みたいな事を言ったラルフは紙を置くと、カメラを…モニターの向こうでラルフを見ている学院生達を真っ直ぐ見る。


「魔法使いとして更に高みを目指すもんは全力で上を目指せ。死ぬのが怖いのは当たり前だ。それを乗り越えた者だけが魔導師…魔法街の為に働く事を許された魔法使いとして生きる事が出来る可能性を得る。全てはお前達の心の問題だ。強くあれ。高みを目指せ。そして自分に正直に生きろ。ここに魔法学院1年生対抗試合の開催を宣言する。」


プツン


モニターが切れる。


話し終わって椅子から立ち上がったラルフはカメラの向こう側に声を掛けた。


「なぁ、今の最後の演説カッコよくねぇか?これで俺のファンがまた増えたかもなー。」


「何下らないことを言ってるのかしら?これから予選が始まるんだから、しっかりと準備をしなさい。」


「ちぇっ。連れねぇ女だわ。」


「何とでもいいなさい。」


その女…キャサリンはカツカツとヒールの音を立ててドアに向かう。そして、部屋から出る直前にキッとラルフを睨み付ける。


「ラルフ…。今日だけは真面目に仕事してね。」


「お…。」


そしてラルフが返事をする前にドアをピシャリと閉めてしまう。


「あいつ…いつも以上に機嫌悪りぃな。…まぁ、バーフェンスがいるからか。………うし。今日は真面目にやんないと片足くらい吹き飛ばされそうだから、頑張りますか。」


ラルフはそう呟くとモニターに向かって座り直し、再び中継をする為に手元の資料をペラペラと捲り始めた。



ラルフが居た部屋を出たキャサリンはキリッとした如何にも機嫌の悪そうな目つきのまま廊下を歩く。対向者が大体キャサリンを見ると怯えた目でみて道を譲る位なので、その体から発せられている不機嫌オーラはかなりのものなのだろう。

少しの間廊下を歩くと、キャサリンは「審査室」と書かれた札が下がるドアを開けて中に入る。


部屋の中には各魔法学院の教師陣が顔を揃えていた。もちろん、各区のトップである魔聖の4人も居た。キャサリンはその中の1人を一瞬だけ睨み付けると自分の席に腰掛ける。一瞬だけ見ただけなのだが、確実に目が合い、そして口元を歪めたのが見えてしまう。


(バーフェンス=ダーク…いつか絶対後悔させてやるわ。)


視界からバーフェンスが入らない様に体の向きを調整すると、キャサリンはモニターに集中する。

そこには先程よりはやる気を出したっぽいラルフが映っていた。因みに先程ラルフの部屋にいたのは、ラルフがふざけないか監視するように言われてのことだ。

モニターに映ったラルフは手元の紙を捲ると、気の引き締まった感じの顔で話し始めた。





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