3-1-6.恋
バルクが手に取ったグローブは、レザータイプの至ってシンプルなものだった。甲の部分に、十字型の魔法石が取り付けられている。
確かにこれならパンチで魔法石が壊れる可能性が少し減るだろう。そもそも、魔法石はそう簡単に壊れるものでは無いという前提の上ではあるが。
「確かにいいっすね!これにします!」
正直な所、バルクにとって魔法石の位置はどうでも良いと言える。何よりもリリスが選んでくれた、という事が大事なのである。好きな人に貰ったプレゼント的な感覚である。もちろん、買うのはバルク自身。
バルクとリリスはレジに行くと、そのグローブを購入する。
店主が買う際にしてくれた説明によると、甲の部分に取り付けられた魔法石は魔力増幅の為にあるとのこと。そして、魔力の還元率を高める効果もあるらしい。魔力の細かい操作が、やや苦手なバルクには好都合の装備である。
グローブの名は、『アースインパクト』。バルクの属性診断で出た属性は先程リリスが言った通りの属性【地】である。主に地面を魔力で操作するイメージの魔法、とラルフから説明されている。その属性を活かすには、ピッタリの武器だと言えよう。
バルクはルンルンな気分でアースインパクトを握り締め、リリスに頭を下げる。
「リリス先生、俺の為にいい武器選んでくれてありがとうございます!」
「いいのよ。バルク君の為だもの。生徒の実力向上の為なら、これ位何てことないよ。」
、バルク君の為、この言葉を聞いた瞬間にバルクの頭はショートしていた。つまり、「生徒の〜」と言う下りは全く耳に入っていない。
我に返ったバルクの目に入って来たのは、不思議そうな表情で見つめてくるリリスだった。
見つめ合うバルクとリリス。因みに、恋心を持って見つめるバルクと、心配して顔を覗き込んでいるだけのリリスという事を忘れてはいけない。
(今だ。今が告白するチャンスだ。俺の初恋をここで、ここで成就させる!)
「リリス先生。」
「ん?なぁに?」
「俺、…」
ドッガァーン!
バルクが想いを告げようとした瞬間、店の外で爆発が起きて大気を震わせた。