3-1-5.恋
少しの間、バルクと魔具を見て回ったリリスは1つの魔具を手に取った。
「これなんかどうかな?バルク君の戦い方にピッタリだと思うわ。」
リリスが選んだのはグローブだった。人差し指から小指の付け根の部分4箇所に魔法石が取り付けられているタイプの魔具だ。
「これなら、バルク君は格闘のスタイルのままで魔法を使えるんじゃないかしら?確か昨日の属性診断では、属性【地】だったよね?そのまま地面を殴っても魔法の発動が出来るし。全部のパンチが魔法のきっかけになるよ。」
「おお。リリス先生、ありがとうございます!俺、俺これにします!」
バルクは感激のあまり涙を薄っすらと浮かべながらグローブを受け取り、カウンターへ行こうとするが、リリスに服を掴まれた。
「あ、ちょっと待ってね。魔法石がその位置だと、砕ける可能性があるかも。手の甲に付いてるタイプないかな。」
人差し指を口に当てながら探すが、中々見つからない。そんな可愛らしい様子に見惚れてボケェッとしていたバルクは、何もない床に躓き商品棚へと突っ込んでしまう。
「ぬわっ!」
盛大な音を立てて崩れる棚。陳列されていた魔具も宙へ放り出され、倒れたバルクの上に容赦なく降り注ぐ。
「きゃっ!危ない!」
リリスが慌てて無詠唱魔法の干渉領域を一気に広げて魔具の落下を防ぎ、棚と商品を元の位置に戻す。
(恥ずかしすぎる。なんてヘマをしちまったんだ!)
愛しのリリスの前でやらかしてしまった失態はバルクの心に大きなダメージを与えた。そして、顔を上げられずに座り込んむバルク。その頭に何かがぶつかって乗っかる。
「ん?」
「あ、バルク君、それいいんじゃないかしら?理想的よ。」
「ん??」
バルクが首を傾げながら頭の上の物を取ると、それは先程と似たグローブだった。