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Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
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11-3-1.魔法学院1年生対抗試合



「よし!じゃあ魔法学院1年生対抗試合、通称…対抗試合のチームを発表すんぞ!」


ラルフの元気な声が教室内に響く。プレ対抗試合の翌日でのんびりしたいが、ゆっくりさせる気は無いらしい。どっちにしろラルフはやる気に満ちた表情をしていた。


「いいか。対抗試合ってのはプレ対抗試合みたいにお祭り騒ぎになる事はねぇぞ。魔法街が主催する正式な試合だからな。試合会場には魔聖も見に来るし、行政区のお偉いさんも来る。それにだ、試合の結果で各魔法学院の勢力図が多少変動すんのも特徴の1つだな。お前らにはそこの所をしっかりとわかった上で臨んでもらいたい。」


何人かの生徒がごくりと唾を飲む。ラルフは楽しそうではありながらも、それだけ真剣な雰囲気を漂わせていた。

生徒1人1人の顔を眺めた後にラルフは指を鳴らして1枚の紙を出現させた。そしてもう1度生徒達を見回す。


「これからチームを発表するけど、その前に質問はあるか?」


チーム発表前の質問。あえてこのタイミングで質問を受け付ける意味を龍人はすぐに考える。


(…成る程ね。発表後の異議は受け付けないって事か。質問者と質問内容によってはチームメンバーの変更もありそうだな。)


龍人はラルフの言葉の意味をそう解釈すると質問をする為に手を上げた。


「お、龍人か。お前が質問とか珍しいな。」


「珍しくて悪かったな。えーと、対抗試合で優勝したら何か賞品とか賞金ってあんのか?」


「お前らしい質問だなぁ。残念な事に優勝したら何があるかは教える事は出来ねぇんだ。まぁ、敢えて言うなら…優勝しなくても何かがある可能性は十分にあるぞ。何にせよ全力で取り組む事が大事だ。」


「それ、意味深すぎね?」


「まーたお前は教師の俺に向かってそーゆー口を聞くんだな。俺は生徒が捻くれて育っちまって悲しいぜ!」


「なーにが捻くれてだし!ラルフみたいなちゃらんぽらんな教師の下だったら誰でもこーなるわ!」


「ふふん。龍人、こんな事で心を乱すなんてまだまだ修行が足りないな!」


「ちょっとラルフ!話逸らしてんじゃないわよ!」


ラルフの適当な態度にイラついた火乃花が割り込んできた。


「ほーのーかー。俺はいつでも真面目だ。」


「既に真面目じゃ無いじゃない。教えられない理由くらい教えなさいよ。」


「その理由も教えられないんだよ。ってか、お前なら分かるだろ?いや、分かってて聞いてんのか?」


ラルフの言葉で何かピンときたのか、火乃花はスッと目を細める。


「…成る程ね。そういうことならしょうがないわ。」


「…俺にカマかけやがったな。流石はエロバディ火乃花!」


「うっさい!」


「いやいやいや。ちょっと待てって。俺は全然解決して無いぞ?」


火乃花とラルフの間で話が終わりかけた所で龍人が再び会話に参加する。


「龍人君、諦めた方がいいわ。多分絶対にラルフは口を割らないわ。」


「って事は、その内容を知ってる火乃花も絶対に言わないって事か?」


「そうね。言わないっていうか言えないわ。取り敢えず、全力で頑張れば自ずと分かるはずよ。」


「…………分かった。じゃあ仕方ねぇっか。」


案外あっさりと追及をやめた龍人は肘をついて窓の外を眺め出した。


「よし。物分りがいいのは良い事だな。他に質問がある奴はいるか?」


ラルフが質問を受け付けるが特に誰からも手が上がらなった。それを確認したラルフは手に持った紙をヒラヒラさせはじめる。


「んじゃ、チームを発表すんぞ。因みにチームメンバーの変更は一切認めないかんな。」


そう言ったラルフは生徒達の顔を見回してニヤリと笑ったのだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「はーはっはっはっはっ!龍人!俺様がお前をぶっ潰してやるから覚悟をしておけ!俺様の前に跪く時は刻一刻と迫っているぞ!!」


「はいはい。分かった分かった。楽しみにしてんな。」


「ぬおおおぉ!お前、俺様を馬鹿にしてるだろ!?」


クラウンが叫んでいるのは街立魔法学院の学食だ。龍人と違うチームになったのがよっぽど嬉しいらしく、昼食の時間に宣戦布告をしにきたらしい。

迷惑そうにちら見した火乃花は溜息をついた。


「ホント元気よねあの男は。付きまとわれる龍人君が少し可哀想ね。」


「いやいや、何よりも可哀想なのは俺っす。あり得ないっすよ。」


そう言って火乃花の横でテーブルに突っ伏して項垂れるのはタムだ。


「まぁ…あんたに関しては本当に不運よね。あんなにうるさくて空気が読めないのと同じチームだったら絶対に優勝は無いわよ。」


「うぅ…それを言われると尚更辛いっす。折角頑張って上位クラスに上がったのに、一緒に上がったクラウンと同じチームとか悲し過ぎるっす。」


心無しかタムのツンツン頭もいつもより元気が無いようだ。


「うっおーいっタム!俺様は龍人を倒す男だぞ!?その俺様と同じチームなんだから喜ぶべきだろうが!」


「無理っす。だって俺の方が強いし。」


「ぬぁあにおぅ!?タム…決闘だ!表に出ろ!」


自然と出てしまったタムの本音に噛み付いたクラウンが席を立ちあがる。


ゴンッ!


「うぼっ!?」


ほぼ同時に鈍い音がクラウンの頭付近から響き、立ち上がったクラウンは勢い良く頭をテーブルに打ちつけた。


「クラウンくんいい加減にうるさいのですわ。周りの皆さんの迷惑になっている事を自覚して欲しいのですわ。」


クラウンの上には光の板が出現していた。これが立ち上がろうとしたクラウンの頭を強打したのだ。


「おのれぇ…。俺様の周りは敵だらけか!?」


「クラウン君…静かにして…欲しいの。」


ゾワリとサーシャの周りから闇が広がり始める。それは段々と面積を広げ、触手のようにウネウネとクラウンに向かって伸び始めていた。元々うるさいのが嫌いなサーシャは我慢の限界に達していた。常に纏っている暗い雰囲気がいつもより暗さを増している。このままではサーシャの攻撃によってクラウンがボロボロにやられる事は間違いないだろう。


…補足するが、クラウンの実力はそこまで低くは無い。中位クラスから上位クラスに上がったのを考えれば当然と言える。だが、その力の使い方が感情任せ過ぎなのが問題なのだ。状況分析をしっかりと行い、頭脳プレイをする相手にクラウンが勝てることはほぼ無いと言っても過言では無いかもしれない。


クラウンがサーシャの放つ闇に絡め取られ始めても助ける人は愚か、気にかける人もほとんどいないのは普段の行いによるものだろう。


「それはそれで、そろそろどうやって戦うかミーティングしない?」


火乃花が龍人の方を向いて提案をした。


因みに、今回のチーム発表は以下の通りだ。


高嶺龍人

藤崎遼

霧崎火乃花

レイラ=クリストファー


ルーチェ=ブラウニー

サーシャ=メルファ

スイ=ヒョウ

バルク=フィレイア


タム=スロットル

クラウン=ボム

その他2名


こうして見るとタムがいかに可哀想かというのが良く分かる。


龍人は火乃花の提案に頷くと立ち上がった。


「じゃ、先に午後の授業をするグラウンドに行こうぜ。そこなら魔法も気兼ねなく使えるし。」


「そうね。行きましょ。」


「おっけー。」


「分かったー。」


火乃花、遼、レイラが龍人に続いて立ち上がり移動を開始した。



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