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Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
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11-2-8.筋肉襲来



龍人とマーガレットによる猛攻が始まった。龍人は夢幻の周りに魔法陣の並列展開をして状況に合わせた分解構築、そして魔法陣の再展開を繰り返す事で絶え間ないムキムキ男達の攻撃を躱し、1人ずつ撃破していく。

マーガレットも両刃剣を操りムキムキ男達を確実に倒していた。時々閃光の様なものが剣の周りに閃きムキムキ男を吹っ飛ばしている。光魔法…のようにも見えるが、直撃時に起きる爆発がどうも違うようにも見える。その魔法の正体は分からないが、この切迫した状況では頼もしい事に変わりはない。


「…危ね!」


余所見をしていた龍人のコメカミに向かってフックが炸裂しかける。慌てて防御壁を拳と顔の間に張って防ぎ、風を纏った夢幻を振るう。剣の軌道に合わせて風の塊が発生し、ムキムキ男は体勢を崩して倒れこんだ。


(よし!)


龍人は夢幻の周りに展開していた魔法陣をそのまま移動させ並列から直列に切り替えた。発動するのは雷。直列励起する事で普段の数倍の威力に跳ね上がる計算だ。


ピシャァン!


ムキムキ男は体を痺れさせ、倒れながらブレスレットによって転送された。

連続した魔法の行使によって体に虚脱感が襲ってくる。魔力が枯渇しているのだ。


(そろそろ魔力がキツイな…。)


…一瞬の油断。そこを狙った別のムキムキ男が龍人の脇腹を狙って後ろから回し蹴りを叩き込んでいた。気付いた時には既に遅く、龍人の体はくの字に折れ曲がって吹っ飛んでいた。


「がは…!」


地面を擦りながらゴロゴロ転がった龍人に向けて追撃の蹴りが既に放たれている。流石は肉体を鍛え抜き、その肉体を更に強化する事だけを突き詰めたムキムキ男。1発に込められた威力が段違いである。

回避はほぼ不可能。何とか避けようとして手足に力を込めるが、回し蹴りによって空気を肺から絞り出された為に僅かな力を込めるのが限界だった。強靭な筋肉に覆われた脚が横たわった龍人の横腹に再び突き刺さる。


「……!!」


声にならない叫び声を挙げて龍人は宙を舞う。あまりにも重い攻撃に意識は半ば飛びそうだった。宙に投げ出された体に力は入らず、手足は慣性の力に従うようにブラブラとしている。地面に叩きつけられた龍人の口の端から血が伝う。折れた肋骨が恐らく肺に突き刺さっているのだろう。

半分ほど薄れかけた視界に再び映るムキムキ男。その顔は勝利を確信した獰猛な笑みが浮かんでいた。男の拳が振り下ろされる。抵抗は不可能。もはや男の拳が突き刺さるのを待つ以外の選択肢は無かった。


ガンッ!


龍人の鼓膜を振動させたのは自身の内部から響く衝撃の音では無く、すぐ近くで男の拳と何かが激突する音だった。

軋む体に力を入れて横を見ると、龍人の体と男の拳の間に物理壁…いや、5画形を組み合わせた結界、つまり物理障壁が展開されていた。


「ちっ!まだこんな力が残ってんのかよ!」


ムキムキ男は舌打ちをすると体をクルッと回転させながら右脚に魔力を溜める。そして、爪先に高密度の熱を発生させて下段蹴りを物理障壁に向けて繰り出した。


ヒュン


ヒュンヒュン


その時だった。空気を切り裂く鋭い音が聞こえたと思うと、ムキムキ男はその飛来物に手足を貫かれて倒れてしまう。


「ぐあぁぁ…!な、なんだ?」


ほぼ行動不能となったムキムキ男のコメカミにガチャッと銃が突き付けられる。


「チェックメイトだよ。」


「てめぇ…!」


銃の持ち主、遼はにっこり笑うと銃口をムキムキ男の胴体に向けて、散弾を放った。


「ぐっ…………!」


ムキムキ男は何かを言おうとしていたが、その声が届く前に転送されてしまう。

遼は指で右手に持った愛銃のルシファーをクルクル回し、左手のリヴァイアサンを腰に差すと龍人に向けて手を伸ばした。


「大丈夫?」


「ああ…。」


全身のあちこちがギシギシ音を立て、折れた肋骨が胸の辺りに激痛を走らせている。龍人は遼の左手を取ると痛みに耐えながらも何とか立ち上がる。

レイン像の方を確認するが、まだまだ乱戦は続いており決着は付きそうにもない。


「遼…いつの間に物理障壁を使えるようになったんだ?すげぇじゃん。」


遼は目をパチクリすると、曖昧な笑顔を浮かべた。


「はは。アレね…俺じゃ無いんだ。レイン像のトコにいるレイラだよ。私が攻撃を防ぐから遼君助けてあげてっ!って言われて来たんだよね。」


「へ?じゃあ、レイラはあの距離から物理障壁を展開したのか?」


龍人は遼から知らされた事実に驚きを隠す事が出来ない。魔法壁や物理壁等の結界系魔法は距離が遠くなればなる程展開時の強度を高いままで保つのが難しくなる。それを前提とした上で、レイラはかなり距離が空いている龍人の所に物理障壁を展開したのだ。


「レイラってさ、星のイヤリング付けてから相当強くなってない?」


龍人は恐れ入りましたとばかりに思わず片脚に体重を掛け、腕を組む。


「本当だよね。レイラが後衛でサポートしてくれると本当に心強いよ。」


遼もうんうんとのんきに頷いていた。しかし、忘れてはいけない。今が乱闘騒ぎの真っ最中である事を。

レイン像の近くで大きな爆発が発生する。


「おいおい、今の爆発大丈夫か?ちっとでけぇな。」


龍人は心配そうにレイン像を見るが…今だにピンピン立っていた。腰に差したリヴァイアサンを抜き取った遼は、心配を全くしていない顔で龍人の疑問に答える。


「基本大丈夫だと思うよ?レイン像に向けての攻撃はレイラがほぼ防いでるから。」


「あんだけの攻撃を防ぎ続けてたら普通魔力切れおこさないか?…そーすっと、レイラってどんだけ魔力持ってるんだろうな。」


「確かにそうだね…。レイラが敵じゃなくて良かったね。」


「ホントだわ。おし、じゃあ俺らもひと暴れしますか。」


「あれ?さっきやられたダメージは大丈夫なの?」


「ん?あぁ、それならもう回復魔法で殆ど治ってるよ。まだちっと痛いけどな。」


「まじ…?さり気なく魔法使うの相変わらず上手いね。」


「もっと褒めていいぞ?」


「何言ってるの。」


龍人と遼はクスリと笑い、それぞれの武器を構えた。遼は後衛として攻撃をしていたので、ダメージは殆ど受けていないが…龍人は魔力がほぼ枯渇、そして動けるようにはなっているが体力は半分以下といったコンディションだ。ここで勝負を決めなければ、龍人は観客席へ転送されてしまうだろう。

ムキムキ男達の残りは約50。

対する参加者は20ちょい。その中で魔法学院に所属する学生は全員残っている。


シャイン魔法学院の

マーガレット=レルハ

マリア=ヘルベルト

ミータ=ムール

アクリス=テンフィムス


ダーク魔法学院の

浅野文隆

森博樹

デイジー=フィリップス

クロウリー=ラムフィズ


街立魔法学院の

高嶺龍人

藤崎遼

ルーチェ=ブラウニー

レイラ=クリストファー

バルク=フィレイア

クラウン=ボム

タム=スロットル

サーシャ=メルファ


魔法街の将来を担うであろう若者達が襲い来るムキムキ男達に立ち向かう!



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