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Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
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11-2-4.筋肉襲来



ヘヴィー像は悲しい事に原型が分からなくなるレベルで破壊されていた。


(確か魔聖の像が破壊されると何かのデバフ効果が発動すんだよな?)


ヘヴィー像の壊れ方には特に何らかの感想を抱くことは無く、龍人の胸中には嫌な予感が渦巻いていた。そして、その予感通りブゥンという音と共に上空に魔法陣が1つ広がった。魔法陣は試合会場を覆う大きさにまで拡大すると光り輝き、同時に試合会場で乱闘を広げる全員に通常の倍の重力が襲いかかった。


「ぐ…まじか。こりゃぁキツいな…。」


龍人は周りを見回す。…そして、自分が想像していた以上の事態が進行している事に気づいた。試合参加者側のメンバーは漏れ無く重力倍加の影響を受けて苦しそうな顔を浮かべている。それに対して筋肉ムキムキのメンバーはほぼ全員が何の苦もない顔で動き回っていた。


(こりゃぁやべぇかも。ムキムキ野郎達は事前に重力倍加の対策をしてきてそうだな…。ってなると、残りの3つの像を壊した時に発動するデバフ効果についても把握している可能性があるかもか。この重力倍加はあの魔法陣の下に存在する空間を対象として発動してる…って事は、自分自身に対して重力倍加に対向する魔法を掛けるのが一般的な対抗策だよな。もしくは、地面に重力半減の魔法陣を発動させて重力の相殺を起こすって方法もあるか…。だけど、地面に展開した魔法陣って効果打ち消しを受けやすいんだよな。そのデメリットを消す何かしらの方法を見つけないと。)


思考を高速で回転させる龍人の側面に向けて回し蹴りが放たれる。ギリギリで気づいた龍人は脚の下を潜るようにして回避し、頭上を通り過ぎる足に掠る程度に右手で触れた。


「ちっ!若造が!」


今日何人目かもう分からないムキムキ男は舌打ちをすると体を回転させつつ後方回し蹴り気味の足刀蹴りを放つ…と思ったのだが、バランスを崩して転倒してしまう。


「ぐぁ…。てめぇ、何をしやがった!?」


「ん?あんたの足に重力倍加の魔法陣を貼り付けただけだよ?ざっと4倍だな。この区域にかかってる2倍のデバフと掛けあわせてざっと8倍の重力倍加だ。流石にこれなら動けないだろ。」


「くそっ!調子に乗りやがって…!俺はこの程度じゃ負けないぞ!ぐおぉぉぉおおおお!」


ビキビキビキと嫌な音を立てながらムキムキ男は立ち上がろうとする。


(なんだこいつ…?)


それを見た龍人の背中に冷たいものが走る。普通であれば戦意を失うレベルなのだが、ムキムキ男は自身の足が壊れそうになりながらも立ち上がろうとしたのだ。

慌てて龍人は雷撃を連発する。


「ぐあ!ぐあぁぁ!ぶっはぁ!」


謎の断末魔を上げながらムキムキ男は煙を上げて地面に横たわった。

相手の戦力を1人削った事になるが、龍人は釈然としない気持ちで横たわるムキムキ男を見ていた。


(こりゃぁこの試合会場に殴りこみを掛けてきた事自体に何かの意味があんな。多分観客とかは知ってんだろ。後は学生以外の参加者達も知ってそうだな。ムキムキ男達が攻めてきた時に冷静じゃなかったのは俺たち魔法学院の学生位だったし。となると…だ、まずは状況把握からいきたいもんだけど…無理かねぇ?)


龍人はまたまた襲い掛かってきた別のムキムキ男を風を付与した夢幻で吹き飛ばすと、情報通のルーチェを探す。


(ん~……いた!)


ルーチェはバーフェンス像の近くで戦っていた。光魔法がドガンドガンと炸裂し、周りのムキムキ男を薙ぎ倒す。だが、その攻撃を喰らっても僅かに体勢を崩すのみで決して後退しない4人のムキムキ男がジワリジワリとその距離を詰めていた。


(よし、さっきの方法で一気に倒すか。)


龍人は男達の隙間を縫うようにしてルーチェに近寄る4人のムキムキ男の背中に重力倍加の魔法陣を貼り付けて行く。全員に魔法陣を貼り付けたところで魔法陣を同時に発動。更に男達の頭上に5つの魔法陣を直列配置、雷撃を放った。突然の重力倍加に対処しきれずに動けなくなった所への雷撃を避ける術もなく、ムキムキ男たちは脳天から足先まで綺麗に雷撃に貫かれ、煙を上げながら倒れていく。


「あら、龍人くんですの。助かったですわ。ありがとうですの。」


「おう。ルーチェさ、このムキムキ男達がこの試合会場を襲ってきてる理由って知ってるか?」


龍人はルーチェの隣に移動すると周りを警戒しながら問いかける。


「う~ん、それが私も詳しくは分からないのですわ。この試合に関しては何も教えてもらえなかったですの。ですが、ムキムキ男達の執念ぶりを考えると恐らく相当重大な何かがあるのは間違いないと思うのですが…。」


「だよなぁ。この何が何でも倒してやる感は半端ないもんな。」


龍人とルーチェは光魔法を周りに向けて放ちながら周囲の状況を確認していく。


「とりあえずだ、ヘヴィー像が壊れて重力倍加のデバフだ。他の魔聖像が壊されたらそれ相応のデバフが発動するって考えておいたほうがいいよな。」


「ですわね。それは私も考えていましたの。時間はあと約40分ですわ。今の状況を考えますと、時間切れまで耐え切るのはほぼ不可能ですわ。魔聖像が全て壊されるか、ムキムキ男達を全員倒すかの2択になってくると思いますの。」


「あぁ、俺もそれには同感だ。まずは魔聖像を守らなきゃだな。あとは…ムキムキ男達は基本的に魔法で身体能力強化を行っている筈だ。それなら、デバフ効果が発動すればするほど彼奴等の魔力消費量も必然的に上がっていくよな。そう考えれば…相手の魔力切れでって流れも有りそうじゃないか?」


目の前に飛び出てきたムキムキ男に龍人とルーチェの光レーザーが炸裂する。


「龍人君…その可能性は低いのですわ。相手がこのデバフ効果を知っていたとしたら、少なくとも4つの内3つの魔聖像破壊によるデバフ効果でも時間制限一杯まで戦える準備はしている筈ですの。」


「そっか…。そうなると俺達の負担が増えるデバフ効果は出来るだけ発動しない方がいっか。……にしてもさ、なんか攻撃が薄くなってないか?」


「そう言われて見ればそんな気もしますわ…。」


ドォォン


低い地響きと共に、龍人達が居るバーフェンス像とリング上で対角線の位置にあったセラフ像が崩れていく。


「マジか…。」


「これは状況が芳しくないですわね。…恐らくムキムキ男さん達は少しずつ1つの像に対して戦力を移動させていたのですわ。…完全に相手の方が上手ですの。」


残り時間30分。

ここで更に魔法陣が試合会場の側面を取り囲む様に展開されて行く。


(これ、更に嫌な予感がすんだけど…。)


魔法陣が光り輝き第2のデバフ効果が発動した。



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