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Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
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11-2-3.筋肉襲来



マーガレットに見つめられている事に全く気付く事無くヘヴィー像の近くに到着した龍人は、夢幻の側面に並列展開した魔法陣を連結させて発動する。炎が噴き上がり夢幻を包み込むのと同時に、龍人は上段からの斬り下ろしを繰り出した。剣先から炎が伸びる事で大剣と同じ大きさになった夢幻の斬撃がヘヴィー像を狙う者達を強襲する。

その場に居たムキムキ男達は龍人の斬撃を確認するとすぐにその場から飛び退いた。だが…1人だけ動かない者がいた。


ガキィン


夢幻が弾かれる音が響く。


「…マジ?」


龍人は弾かれた衝撃をそのまま利用して、距離を開けながら着地する。夢幻をいとも簡単に弾いた男は悠然とした態度で立っていた。

炎の大剣を形成する際、単純に炎を大剣の形にしただけでは無く、炎自体を刃として固定化して対象を切り裂けるようにしていたのだが、龍人の目の前に立つ男はそれを素手で弾いたのだ。


「お前…強いな。」


龍人が1度の攻防で得た感想をそのまま伝えると、その男はニヤリと笑って人差し指でチョイチョイとかかって来るように挑発する。

完全に相手を格下として見ているかの様な態度に龍人はカチンとしてしまう。


「ははーん。後悔すんなよ?」


龍人は自身の周りに魔法陣を10個展開し、その内1つを発動した。風が龍人の全身を包み込んで全ての行動速度を上昇させる。

更に2つの魔法陣が発動し風の刃と炎の刃が周りに出現した。これで3つの魔法陣を使ったから残りは7つ…とはならない。発動したそばから別の魔法陣が展開し、常に10個の魔法陣が周りに展開されている状態が保たれている。

挑発をしたムキムキ男は龍人が複数の魔法陣を同時に操る姿を見ても余裕の笑みを崩さない。自信の表れか単なる虚勢か。


(一気に片を付ける!)


龍人は地面を強く蹴り一気にムキムキ男に向けて駆け出した。風刃と炎刃を不規則に放つが、ムキムキ男は動じることなく冷静に弾いていく。


(炎刃と風刃を弾くってどうなってんだ?拳に反射障壁でも貼り付けてんのか?…だけど反射障壁は属性を指定する必要があんだよな。それを考えたら炎と風の反射障壁を咄嗟に発動したのか?そんな魔法を使った様子は見えなかったんだけどなぁ。)


頭の片隅にこんな疑問を浮かべながら、龍人は斜め上への斬り上げを放った。ムキムキ男は左に体をグルンと回転させて斬撃を大きく迂回する様にして避ける。龍人は斬撃を避けられる事自体は想定済みで、斬撃とともに衝撃波を発生させていた。しかし、ムキムキ男も龍人が斬撃と共に何かしらの魔法を放って来る事は想定済みだったらしく、その証拠として大きく迂回する様にして回避を行っていたのだ。

結果、衝撃波が当たると思っていた龍人に隙が生じてしまう。そして、回避に成功したムキムキ男からは既に裏拳が放たれている。


「くっ…!」


龍人は10の魔法陣を全て分解して魔法壁を連続構築し、防御壁を次々に発動して行く。ギリギリの所で防御壁が4つ展開され、ムキムキ男の裏拳を受け止めた。だが、防御壁は次々と破壊され最後の1枚が辛うじて裏拳を抑え込んだ。


(やっぱり相当な攻撃力だわな…!)


ムキムキ男がニヤリと笑う。


「俺の勝ちだな坊主?」


「なんでだよ…?」


ムキムキ男は裏拳を防御壁にグイッと押し付けたまま言う。


「坊主の魔法陣はもう使い切ってんだろ?だとしたら、後はこの防御壁を砕けばチェックメイトだ。バラバラになる魔法陣を見た時は驚いたが、所詮はこんなもんか。へっ。ざまぁねえな!」


龍人は一瞬だけ惚けた表情をした後に悔しそうな表情を浮かべる。


「ちっ。バレてんのか!」


「当たり前よ!俺は各像を倒すために振り分けられた集団のヘッドだぞ?それ位の分析は出来るぜ。……ふんっ!」


ムキムキ男の気合いの声と共に防御壁が砕け散る。ムキムキ男は裏拳を放った右手に掛かる遠心力を利用して、左足を前にした構えを取り鋭い突きを龍人の胸に向けて放つ。勝利を確信した笑みと共に。

しかし、絶体絶命の筈の龍人も笑みを浮かべていた。ムキムキ男は疑問に思うが、ここで攻撃を止めるという選択肢は無い。むしろ、更に気合いを入れて拳を突き出すのみだ。

拳が龍人に届く寸前、拳と龍人の間に魔法陣が1つ展開し発動。圧縮された風圧弾が拳に向かうが、拳の動きを一瞬だけ遅らせる程度の効果しか発揮しない。だが、これこそが龍人の狙いだった。龍人はその一瞬に身を屈め、背中に隠していた10の魔法陣がムキムキ男の視界に飛び込んでくる。魔法陣は縦一直線に並んでいた…直列魔法陣だ。


パリ!


電気が弾ける音が響く。

10の魔法陣が同時に発動。ムキムキ男から1番遠い魔法陣から電気が放出され、直列した魔法陣を通り抜けてムキムキ男に向けて突き進んだ。魔法陣1つを通り抜ける度に電気の質量が上がり、威力が増して行く。1本の巨大な槍の様になった電気は、そのままムキムキ男を貫いた。


「がぁああぁあ…!」


プスん


所々焼け焦げたムキムキ男は拳を突き出したまま倒れこんだ。


「うしっ!俺の勝ちだな。」


龍人がガッツポーズを取る後ろでバキィ!ガラガラガラという効果音が響き渡る。


「え?もしかして…。」


恐る恐る振り返ると、ヘヴィー像がバラバラに砕けていた。



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