3-1-3.恋
南区を東西に分けるように中心を通る街魔通りにある人気ショップ、『魔法の台所』でバルクはリリスを待っていた。
いつも通りの服装で来たので、変に思われないか不安でしょうがないが、人生初のデートに対する意気込みはかなりのものだ。到着してから今までの間に何度リリスとの甘い時間を妄想したことか。
バルクは手を握ったり開いたり、腕を組んだり、ズボンに手を入れたりと落ち着きが無かった。多分に緊張しているからだろう。
そんなバルクを観察する2人の男がいた。…龍人と遼である。2人は、バルクが保健室を出た後に、ここでのリリスと待ち合わせるという情報を手に入れたのだ。
因みに、龍人と遼の野次馬根性もかなりのもので、バルクが来る30分前には待ち伏せをしていた2人である。
「あいつさ、緊張しすぎじゃね?」
「そりゃあ、初デートだからね。緊張するのは普通じゃないかな。」
2人はバルクが見える位置のベンチに座ってアイスを食べていた。龍人はコーンに垂れたアイスを舐めると、軽く溜息を吐く。
「それにしても、リリス先生遅いよな。先生が来ないとつまんないな。」
龍人の不満気な言葉に苦笑いをしながら遼はバルクを見る。
「まぁね。そもそも、この尾行自体が褒められたもんじゃないけど。それにしても、生徒とのデートにリリス先生って来るのかな?」
「んー確かに。手紙の内容が内容だからなぁ。なんせ、時間と場所しか書いてない手紙だし。」
「まぁ、バルクって恋愛苦手そうだからね。悩んだ結果だと思うよ。あ、来たかも!」
遼の指し示す方を見ると、青いワンピースを着たリリスが魔法の台所に向かって歩いていた。リリスはにこやかに手を振りながら、バルクへと近づいていく。




