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Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
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11-1-17.プレ対抗試合



龍人達が参加者控室に到着すると、丁度28試合目の決着が付いた所だった。会場への入口から程よい歓声が聞こえてくる。おそらく程々のレベルの試合だったのだろう。それだけ観客達は試合内容に対して素直な反応を示していた。その歓声を聞きながら、4人掛けのテーブルに座った龍人達は作戦会議を行っていた。


「ってかさ、俺達の対戦相手ってあいつらだよな?」


龍人がひそひそ声でレイラに話しかける。


「うん。なんか面白い格好してるよね。あの女の人なんか体のラインが出すぎてる気がするな。私だったら恥ずかしくて着れないよ。」


龍人とレイラの視線の先では全身赤タイツの4人組がストレッチを行っていた。タイツなので、レイラの言う通り体のラインが丸わかりである。女性が着るとなると、ほぼ羞恥プレイと変わらないレベルであった。そのほぼ羞恥プレイの格好をしている女性が4人の中に1人だけ混じっているのだ。恥ずかしがる様子は微塵も感じさせず…むしろ見せ付けるように背中を反らせて胸を強調したり、180度近い開脚をしたり。


龍人はふとレイラが全身タイツを着ていたら…と、想像してしまう。


(…なんか似合わない気がすんな。あ、背がちっちゃいからか。)


対戦相手の女は高身長に中々のプロポーション…モデル体型だ。一方、隣にいるレイラはモデル体型には程遠い。まず、背が小さいのが致命的だ。だが魅力的な部分ももちろん多い。長い茶髪を頭の後ろで一本に結わえた姿、そして笑顔。これらの要素を考えると人気のアイドルになれそうな気はするが、全身タイツが似合うかといえば答えは否。


「龍人君ちょっと見過ぎじゃない?」


そう言われてレイラを見ると、何故かムッとしたような顔をしている。


(おっと。これ拗ねられるか?)


「あ、なんかあの女…体の動かし方が他の3人と違くないか?」


「それ…俺も思ったっす。上手く言えないんすけど、何かのプロッぽい気がするんすよね。」


なんとか誤魔化そうと言ってみたのだが、ここでタムが話に乗ってきてくれたお陰でなんとか誤解は避けられそうだと安堵する龍人。色んな意味で誤解ではない可能性には目を瞑ろう。

そして、意外な事にサーシャも赤タイツ女の話題に加わってきた。


「…分かるわ。あの人、何かの格闘技をしそうな気がする。さっきから足音が全然しないし。」


かなり的確な指摘である。

龍人はもう1度赤タイツ女を見るが…女は龍人達4人に見られているのにも関わらず気にした様子が全くない。ストレッチが終わったのか、壁に寄りかかって腕を組んでいる。その腕で胸が強調されて…。


(いやいや。自重しろ俺!)


龍人が心の中でそんなセルフツッコミをしていると、タムが作戦の続きを話し出した。


「あの女は気になるっすけど、まずは作戦っす。さっきも伝えた通り、今までは色々こうしようって作戦を立てていたんすけど、それを守ろうとして動きが鈍っていた可能性があるっす。なので、今回はノープランで行くっす。」


「…それ、大丈夫か?」


まさかのノープランに龍人は不安を覚える。しかし、そう思うのも無理はない。確かに今まで負け続きなのだから。


「あのね…。」


ここでサーシャがボソッと話し出し、全員の視線が集中する。


「チーム戦って…如何に連携をするか…じゃ無いと思う。」


「サーシャさん、でもチーム戦なんだから協力しないと相手チームが上手い連携をしてきたら負けちゃうよ?」


レイラが最もな事を言うが、サーシャは首を横に振る。


「違う…。1人で何とかなるなら1人でするの。連携…に囚われて不必要な人数が動くのが…駄目なんだよ。連携して攻撃してきたら…それに対処するのは同じ人数じゃ駄目…なの。」


そこまで言うとサーシャは俯いて黙ってしまう。


(どーゆー事だ?イマイチ理解しきれないな…。何と無くは分かるんだけど…。)


考え込む龍人の隣でタムが色々とサーシャに聞いているが、「どうせ私の言うことなんて…大したこと無いから。」という具合でサーシャはなにも話そうとしない。

試合会場で一際大きな歓声が上がる。


(そろそろ試合が終わんのかな?このままの微妙にまとまらない状態で試合に出るのは良く無いよな。)


「とりあえずさ、サーシャが言ってるのは連携を意識しすぎるなって事だと思うんだ。結果的にはタムの言った作戦無しと殆ど変わりは無いだろ。」


サーシャがコクリと頷く。


「んじゃ、そーゆー事で気合い入れていこう!」


タムは龍人が試合前に盛り上げようとしているのを感じ取ったらしく、テンション上げ目で乗っかってくる。


「そうっすね!全力で行くっすよ!ね、レイラさん!サーシャさん!」


「もちろんだよ!私、頑張るからね!」


「私も…頑張るわ。ふふ…どうせ私が頑張った所でたかが知れてるのかもだけと…一応頑張るわね。」


前向きなのに後向きな発言をしながらサーシャは「ふふふふふ」と薄暗い笑みを浮かべる。


「サーシャさん、そんな事無いよ?私、サーシャさんの魔法凄いと思うな。」


レイラが必死にフォローを入れるが…。


「ふふ…。そんなお世辞いいの。私の魔法が私の心を写してるのは分かってるんだから…。」


サーシャはマイナス発言を重ねるのみ。レイラが「むー」と唸るが、このマイナス思考をプラスに持っていくのは龍人とタムの話術では無理なのは明白だ。


「はい!お待たせしました。それでは第30試合…最終試合のみなさんはリング上に上がって下さい。」


係員のアナウンスが入る。

大した作戦会議が出来たわけでは無いが、龍人は気合満々で立ち上がった。


「うしっ!やってやる。」


タム、レイラ、サーシャも続いて立ち上がり、龍人達はリング上に移動していく。


リング上では既に赤タイツの4人が仁王立ちで待ち構えていた。その光景が途轍もなく異様である事は間違いが無いのだが、ほぼ仮装大会と化しているプレ対抗試合に於いてはそこまで異様では無いの。…環境とは恐ろしいものである。


「さぁさぁさぁ!皆さんお待たせしました!これよりプレ対試合の最終試合を行います!街立学生Aチーム。赤タイツ愚連隊。この2チームの激闘をご覧あれ!それでは…試合開始!」


係員の合図と共に2チームは動き出した。



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