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Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
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11-1-15.プレ対抗試合



タムは口をとんがらせて考え込む。周りの歓声が止み始めるまでじっくりと考えた後、タムは口を開いた。


「そうっすねぇ。正直な所、見た感じでの個人の力量にはそこまで差が有るとは感じなかったっす。属性【爆】を使ってた人は近接攻撃しかしてなくて、他にも防御結界を使ってた人はそれを攻撃にも転じて使ってたんすよ。残りの2人は多分属性【音】を使うのが1人。…もう1人のリーダーっぽい女の人は正直底が見えなかったっす。正直、かなり偏ったメンバーで構成されてるチームっすね。でですね、そんな相手に対してこっちにはオールラウンダーの龍人さん、防御回復のレイラさん、範囲攻撃が出来るサーシャさん、そんでもって俺なんですよ。もし負けるとしたらチームワークの差だと思うっす。シャインのチームはほぼ阿吽の呼吸な感じで動いてたっす。さすがにあのレベルは高いっすね。」


タムの考察を聞いた龍人は頷きながら渋い顔をした。


「やっぱそうだよなぁ。あの連携は正直恐ろしかったわ。全ての攻撃のタイミングが絶妙だったもんな。」


「そうっすね。あんなチームが他学院とは言え、同学年に居るのはいい刺激っす。」


龍人とタムはリングから降りるシャイン学生Aの4人の後ろ姿を見ながら密かに闘志を燃やしていた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


シャイン学生Aの面々は堂々とした雰囲気を醸し出しながら参加者控室へ戻る。

控え室に入るとアクリスは怯えた表情を、ミータは拗ねた表情を、マリアはつまらなそうな表情を浮かべる。そして…マーガレットは怒りの表情を浮かべていた。


「ちょっとあんた達、全然作戦通りじゃ無かったのですわよ?ミータの音魔法で私の指示を相手チームに聞こえない様にしていなければ、確実に負けていたのですわ!真面目にやる気ありますの?」


「私は作戦通りにしたわよ?」


そう言ったマリアに一瞥もくれずにマーガレットはミータとアクリスを睨みつける。


「分かっていますわ。マリアは私の期待以上にやってくれましたわ。私が言ってるのは…黙っているあなた達2人のことなんですわよ?」


マーガレットの怒りの矛先が彼女自身の言葉で明確になった事で、ミータとアクリスがビクッと体を震わせる。


「や…でも俺は音魔法で指示出しのサポートしたし…。」


「…ミータ。貴方は本気でそれを言っているのですか?私言いましたわよね?試合が始まったらすぐに音の衝撃波を当てて動きを止めなさいって。」


「う、そ、それはアレだよ。アクリスがいきなり突撃するから、巻き込んじゃうと思って…。」


ここで自分の名前を出されたアクリスが慌てる。


「ちょっと待ってよ…!それだと俺が悪いみたいじゃない?」


マーガレットの首かギギギギギとアクリスの方を向いた。


「アクリス?あなた…覚えていますの?私が試合開始前に言った事を。」


「え?いや…えっと…。」


アクリスはここで漸く気づく。自分が何か作戦を狂わす重大な事をしでかしてしまっていたらしい事を。


「あらあら。覚えていないのですわね。それでは教えて差し上げますわ。ミータの音の衝撃波が放たれたのを確認したら、その衝撃波に追従する様に走る。そして追撃を叩き込むように言ったのですわ。で、あなたがした事、覚えてますの?」


「え…。えっと、そのまま…1人で突撃しました…。」


「ですわよね?私が折角一生懸命考えた作戦を試合開始と同時に叩き潰してくれましたのよ?アクリス、なんであんな事したのですか?」


アクリスは汗が止まらなくなる。勿論暑いからでは無い。アクリス的に言うと「命の危機」が差し迫っていた。


「ご、ごめんなさい。衝撃波を追従するようにじゃなくて、衝撃波が追従する様にだと思っちゃって…。」


必死の弁解。いつもならここでマーガレットがブチ切れる所だ。横で見ているミータは覚悟を決め、マリアは「またこのパターン」とため息をつく。…が、今回に限ってはいつも通りでは無かった。マーガレットは腰に手を当て溜息を付く。


「はぁ…。本当にアクリスは駄目ですわね。もういいですの。行きますわよ。」


そう言うとマーガレットは参加者控室から出るために用意された転移魔法陣に向けて歩き出した。


「ど、どうしたんだろ。マーガレット…。」


怒られる筈だったアクリスは回避出来た事に安堵しつつも、いつもと違うマーガレットを心配していた。


「ん~怒ってる時間が勿体無いんじゃない?」


マリアはどうでもいいと言わんばかりに鼻を鳴らすとマーガレットを追って歩き出した。


「まぁ、あれだよあれ。怒られなくて良かったじゃん。」


ミータはそう言ってアクリスの背中をポンポンと叩くと歩き出した。


マリア、ミータ、アクリスが係員の所に遅れて到着すると、マーガレットが説明を受けている所だった。


「…という事ですので、転移先の保証はしかねます。ただ、高度位の指定は大丈夫ですが。どうしますか?」


マーガレットはマリア達を見ると係員から聞いた内容を説明する。以下要約。


選手の出待ちで控室入口が混雑することを防ぐ為に転移魔法陣での転移。転移先に関しては試合会場周辺にランダム。唯一指定出来るのが高度のみ。転移先が壁の中…だと死んでしまうので、周辺の建物よりも高い高度での転移を基本的に行っている。


高い高度で転移されても問題がない為、係員に任せて転移してもらう事にした。


余談ではあるが、この参加者控室にあるのは「転移」魔法陣。それに対し東西南北の区から中央区へ移動する際に使うのは「転送」魔法陣だ。転移魔法陣は転移元にしか魔法陣がなく、転送魔法陣は転送開始地点の転送先に魔法陣があるのが違いだ。転移魔法陣はインスタントに設置することが出来るが、転移先にややブレがあるのが特徴。転送魔法陣は2箇所に設置しないと魔法陣として機能しないが、転送先にブレが全くないのが特徴だ。


さて、その転移魔法陣に乗り転移の光に包まれ始めた所でマーガレットはとある人物を思い出していた。その人物こそ、アクリスに対して怒るのを止めた理由だ。


(確か…高嶺龍人でしたかしら?彼の実力を確認しなければなのですわ。)



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