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Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
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11-1-14.プレ対抗試合



「貴様ら…俺様の事を馬鹿に…」


「ってかさ、あんた…そんだけ騒いでて恥ずかしく無いの?」


ピシィ!…と音を立ててその場が凍りついた。その張本人である火乃花はクラウンを見ると顎をクイッと動かす。周りの空気が凍りついた事など微塵も気にしていない様子だ。


「さっさと座りなさいよ。」


クラウンはプルプルと全身を震わせるが…


「む…う。」


と、小さく声を漏らして火乃花に顎で指し示された場所に座ったのだった。自分が悪い意味で目立っていた事を自覚していたのか、はたまた火乃花が怖くて大人しく座ったのか…。もしかしたら、そのどちらもという事もあるかも知れない。とにかく、クラウンが座ったのを合図に全員がいそいそと座り始めた。

まだなんとも言えない気まずい雰囲気が流れていたが、ここで全員の注意を引くアナウンスが試合会場に響き渡った。


「さーて皆さん!次の試合はシャイン学生Aとトランプ部隊の試合です!」


リングににマーガレット=レルハ

、マリア=ヘルベルト、ミータ=ムール、アクリス=テンフィムスが姿を現す。

続いて現れた対戦チームのトランプ部隊は、それぞれトランプの着ぐるみを着た4人組だ。勿論ハート、クローバー、スベード、ダイヤのマークが其々の着ぐるみに描かれている。

観客の誰しもが思う。「動きにくく無いのか?」…と。


2つのチームはリングに上がるとすぐに集まって何やら話し始めていた。作戦会議でも行なっているのだろう。

1分後…。再びアナウンスが響き渡る。


「さーて!そろそろ作戦会議も終わりにしてもらいますよ!?ではでは両チームスタンバイして下さいねー!」


2つのチームが対峙し…。


「試合………………開始!」


無駄に長い溜めの後に告げられた開始の合図と共に、両チームが動き出した。


そこで行われた戦闘は…圧巻だった。恐らくこれまで行われたプレ対抗試合の中で1番レベルが高かったと言えるだろう。


マーガレットの素早い指示に合わせてアクリスが敵に向かって猛ダッシュをする。トランプ達が迎え撃つ態勢を取った所で、アクリスは地面に向かって拳を振り下ろした。地面に拳が触れるのと同時に属性【爆】が発動し粉塵が宙に舞い、視界を遮る。続いてマーガレットが大量の風刃をトランプ達の正面に向けて放つ。ミータはマーガレットが放った風刃が出す風切り音がトランプ達の後方から聞こえる様に操作。これによってトランプ達は風刃が後方から来ると勘違いし、対処が遅れてしまう。

防御をするか、回避をするか…トランプ達は回避を選択。その場から飛び退き風刃を避けようとするが、動いた瞬間になにかに弾かれる様にして元の位置に戻されてしまった。彼らの回避行動を阻害したのはマリアの属性魔法【鉄壁】だ。戸惑うトランプ達に襲い掛かる風刃。

見事なコンビネーションで攻撃を叩き込んだマーガレット達だが、それで満足する事も無く…すぐに次の行動に移っていた。


まず、マリアがトランプ達を囲む様にして展開していた物理壁の内幅を狭めていき4人のトランプ達は押し付けられる様にして動けなくなってしまう。細長い塔のような形になった防御壁の上に姿を現したのがミータだ。防御壁の上部分だけが空いており、そこからミータは中に閉じ込められているトランプ達に向けて手をかざした。


ミータの口が高速で動く。…呪文魔法だ。通常、魔具を使っての魔法は魔具を媒体として自身の魔力で魔法を発動する。対する呪文魔法は紡ぐ呪文の言葉自体を媒体とし、自身の魔力に加え外部の力…例えば呪文内で呼び掛ける精霊の魔力…の力添えを受けることが出来る。魔具魔法に比べると発動速度は劣るが、魔力消費に対する魔法密度が高いのが特徴だ。


さて、その呪文魔法によって生み出された強力な破壊の音波がトランプ達を苦しめる。身動きも取れずにダメージを負ったトランプ達を解放する様に物理壁がいきなり消失。そこに向かって放たれるアクリスの回し蹴り。勿論只の回し蹴りでなんかではない。属性【爆】が脚の周りに付与されており、触れたトランプ達は強力な爆発と共に吹き飛ばされた。


まだまだ終わらない。


吹き飛ばされたトランプ達に寄り添う様に物理壁が現れ、緩やかなカーブを描きながら4人を1つの場所に集約させる。その場所とは…マリアだ。

マリアは両手に遮断壁【物理】を展開し、物理壁によって滑る様に近づいて来るトランプを次々に殴り飛ばした。


トランプ達は吹き飛び、リングの壁に激突し、地面に倒れ…起き上がる事は無かった。


相手に何もさせずの完全無欠勝利。

怒涛のコンビネーションに呆気に取られていた観客達は、トランプが倒れてからたっぷり10秒程度は沈黙を保つ。


「え…えっと、シャイン学生Aの勝利です!」


係員によるアナウンスをきっかけに観客からも歓声が飛び始め、次第にそれは大きくなっていった。


リング上でどうだと言わんばかりに胸を張るマーガレット。自信がある事を伺わせる笑みを浮かべるマリア。何故かポカンとするアクリス。異様に滑らかに手首から先を動かして決めポーズを取るミータ。

それぞれの反応を示す4人を褒め称える拍手が送られた。


そんな中、控え目な拍手をしていた龍人は隣に座っているタムに話し掛ける。


「タム…今の相手に俺達勝てると思うか?」


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