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Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
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11-1-5.プレ対抗試合



(戦闘の能力で全てが決まるわけじゃ無いって事は、指揮能力が高い奴、索敵能力が高い奴とかの何かの分野に秀でていれば上の学年に上がれるってことか?…まぁそれにも一定以上の実力は日っすなんだろうけどね。)


龍人はここで1つの可能性に思い当たる。


「って事はだ、もしかして2年生に上がれない奴もいるのか?」


ルーチェはさも当然といった表情で頷く。実力が全てものを言う魔法学院という特質上、それは当たり前のことなのかも知れない。


「まじか。それって友達が一緒に上がれなかったら寂しいよな。」


「それはそう思うのですが、皆さん普通はそういうものって分かった上で入学している筈なのですわ。というよりも、その事実を知らなかったのは龍人君だけなのですわ。」


「う…そうなんだけどさ。」


龍人はルーチェに反論出来なくなる。入学する時に書類を読まなかった龍人が悪いのは自明の理なり。ルーチェの言う通りそれが街立魔法学院に於いてのルールであり、そうであるからには守る必要があり、だからこそルールによって学院生達は守られているのだ。


「あ、ドラキュラが…。」


レイラの声でリングを見ると、ドラキュラに仮装した1人が吹っ飛んでいた。仲間がやられたことでたじろぐドラキュラ3人。そこに襲いかかる半身人間の犬猫。逃げ惑うドラキュラ。

普通の犬猫とドラキュラであれば追いかけるのは逆なはずだが…、そんなおかしな光景が観客に笑いを生み始めた。一応補足しておくが、戦っている本人達は至って真面目だ。


程なくしてドラキュラは犬猫人間に退治され、勝敗が決する。試合終了と同時に客席から歓声が上がった。


「すっげぇな。」


周りの客の盛り上がり様に龍人は驚いて周りを見渡す。何故だろうか…試合を見に来てるだけな筈なのに、お祭りっぽさを感じてしまうのは。


リング上ではガッツポーズをしていた犬猫が退場し、次の仮装チームが上がって来ていた。

それぞれ赤青緑黄のテカテカドレスを着た4人の女性。そして、黒い装束に身を包んだ…忍者っぽい4人。これから出てくる人達が全員こんなのかと思うと、龍人は段々面倒臭くなってくる。


(このまま試合までどっかでグダグダしててーな。チームワークの勉強の為に出来る限り試合を見るって言ってもな…。正直つまんないなぁ。)


控室で行った作戦会議でタムから試合を観戦してチームワークの技術を盗もうと提案があったのだ。だが…。


(正直俺の方が強いんじゃね?って奴の方が多いし。)


龍人がつまらなそうに試合を見ているのに気付いたルーチェが声を掛ける。聞き方はルーチェらしくストレートに。


「龍人くんつまらないですの?」


「ん、そだね。なんかさ、もっと見応えのある試合がいいかも。」


「ん~…一応言いますが、多分龍人くん達はあの人達と戦ってもいい勝負でギリギリ勝つか、負けるかってトコですわよ?」


「え…まじで?」


「はいですの。」


龍人の心をサラッと抉ったルーチェはニコニコと微笑んでいる。そして、龍人としてはかなり聞き捨てならない言葉だった。


「どんな点でギリギリの戦いになるんだ?」


「そうですわね…1+1+1+1は4ですが、4×1は12にも16にも膨れ上がるのですわ。」


「……ん?」


龍人はルーチェの言葉の意味を理解しきれずに首を捻ってしまう。


(1+1+1+1と4×1の違いだよな…。足し算の方は個人が4人って事だよな。じゃあ掛け算は…4人1組のチームが1つって事になるかな。となるとだ…個人として動くか、個人がチームとして動くかチームとして動くかか…!)


龍人の中で思考が纏まった。


「つまりあれか。あいつらは俺達よりもチームワーク力に優れていると。そんで俺達がいくら個の力で相手よりも優れていても、チームとして纏まっていなければ、個の力が低い相手にチーム力の差で負けるって事だよな?」


龍人の考察を聞いてルーチェがポンポンと手を叩く。


「流石龍人くんですの。ご名答ですわ。龍人君は何かを見る時に対象物とその周辺に集中する癖がありますの。対象物の動きを把握しながら全体の動きも把握する必要がありますわ。勿論、相手チームのメンバーかだけで無く、自分のチームメンバーの動きまで把握する必要がありますの。」


「なるほどな。そうすっとだけど、相手の予測行動に対して仲間の予測行動を重ね合わせて、そこの中で自分自身が取りうる可能な行動のパターンを頭の中でシミュレーションして、その上で最善と考えられる行動を実行に移す。尚且つその最中に動き続ける状況を分析した上で行動の修正を行って行く必要があるよな。そうなると疑問が…。」


龍人とルーチェの横で話を聞いていたタムが口を尖らせながらレイラに耳打ちする。


「この2人の会話なんか難しく無いっすか?もっと簡単に考えればいいと思うんすけど…。」


「うん。私もそう思うんだけど…でもね、いざとなった時の2人は本当に頼りになるんだよ。」


「…確かに頼りになりそうっすね。俺の頭じゃ会話に着いてくのがやっとっす。」


タムとレイラがそんな会話をしている後ろで、バルクとクラウンは盛り上がっていた。


「おいバルク!あいつの動きエロいぞ!あのエロスは大人だから出せるんだ!おい!どうだ!?」


「うっせークラウン。俺はエロスとか興味ねーっての。」


「なにおぉぉう!?お前はそれでも男か!男なのか!?俺は男だぞ!?」


「うっせークラウン!試合見んのに集中させろ!」


「なにおぉぉう!バルク!この俺様が話しかけてやってんのにその態度はないだろ!俺様は悲しいぞ!」


以下延々と同じ様なやり取りが続く。



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