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Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
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11-1-4.プレ対抗試合



控室に居る参加者達は浮かび上がった対戦表を見てざわめきを洩らす。


「おいこれはどういうことだ?」

「なんであいつらが出てんだよ。」

「トーナメントじゃなくて良かったな。」

「対戦相手のチームが可哀想じゃないか?」


龍人は周りのざわめきを聞きながら対戦表を見ているが、特にこれといって変な点は見当たらない。恐らく対戦表に載っているどこかのチームを見てざわめいているはずなのだが…どのチームも変な名前が付いていて見分けがつかないのだ。


(すっげー嫌な予感しかしないな。)


ざわめきが落ち着いて来たところで係員が拡声魔法を使って説明を始めた。


「はい。それでは詳しく説明していきますよー。皆さんもご存知の通り今回もプレ対抗試合は各チーム共に1回のみのチーム戦となります。どうせ本戦では沢山のチーム戦が行われるので、プレ対抗試合では試合数を少なめにする為に1試合限定とさせて頂いてます。えーと、試合のルールですが殺人やそれに類する行為は禁止となっていますので、程々にお願いしますね。で、試合は12:00から開始です。前の前の試合が始まったらこの参加者控室に来て下さいね。それまでは何をしていても大丈夫です。また、最後の試合後は全員にリング上に集まってもらいますので、必ずリング付近に居る様にして下さいねー。はい!では…今が10:30なので、1時間半後には最初の試合が始まります。各自準備を開始して下さい。」


それにしても…と、龍人は小さな疑問を抱く。1番最後に全員がリング上に集まる理由が明示されなかったのだ。トーナメント方式で無い以上、優勝チームの表彰式というのもあり得ない。1番良い戦いをしたチームや個人のMVP発表はあるかも知れないが、それでも1回の試合だけで判断出来るとも思えないのだ。


(…なーんかあるなこれは。)


魔法街をあげてのイベントなので危険な事は無いはずだが(多分)、ムキムキの男が言った「喧嘩祭り」の言葉も気になる。そして、その「喧嘩」の雰囲気が全く感じられ無いのも奇妙であった。

周りに居る人は魔法学院の生徒が数チームに、後は良識がありそうな大人達だ。果たして本当にこのメンバーが喧嘩をする事態に発展をするのかが謎である。


もう一つ謎があると言えば、先程も触れた変なチーム名の数々だ。


「お姫様愚連隊」

「4色のヒーロー」

「妖怪物の怪」


等々…とう考えても小さな子供が集まって名乗りそうなチーム名しか無いのだ。


(とにかく…普通の試合にならなそうってトコだけ覚悟しとくか。)


龍人が横を見るとタムが眉間に皺を寄せて対戦表を見ていた。


「どうしたんだ?何か気になる事でもあんのか?」


「そうっすね。魔法学院から出たチーム以外のチーム名を見ると、仮装大会にしか見えないっす。俺達…なんも仮装の準備してないっすよ?」


なんともズレた心配に龍人は一気に脱力してしまう。そもそも、プレ対抗試合が仮装大会だったとして、それを自分達に学院が伝えない意味がわからない。となると、名前がそんな感じなだけで、仮想大会な訳が無いのだ。


「タム、変な心配はしないで観客席に行こうぜ。俺達の順番は見た通りだしよ。」


龍人の指し示した先の対戦表…その1番したの欄に龍人達のチーム名が表示されている。そのチーム名は「街立学生A」だ。タム曰く、受付の時に学院名を伝えたら強制的にその名前で登録されたらしい。

因みに、遼、バルク、ルーチェ、クラウンのチーム名は「街立学生B」だ。なんとも捻りの無いネーミングセンス。


一先ず、対戦がまだまだ先な龍人達はゾロゾロと観客席へ移動したのだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


12:00になり最初の試合が始まる。


リング上に上がった面子を見た龍人は額に手を当てていた。頭が痛いとはこの事…第1試合の対戦チームは「ドラキュラんズ」と「ワンニャン王国」。そして、リング上に立って居るのは4人のドラキュラ(仮装)と犬(被り物×2)と猫(被り物×2)だったのだ。


つまり、仮装大会だった。


「いやいやいや、マジで意味が分かんないんだけど。」


龍人が本気で嫌そうな声を出す横でタムが楽しそうな声を出す。


「え?これ面白いじゃないっすか。ドラキュラの仮装はまぁいいにしても、犬と猫は頭に被り物してるだけっすよ?何考えてるのか意味不明で見てて面白いっす。」


タムの言うことも最もである。頭は動物の被り物、体は人間の動物人間。派手なメイクに黒いマントを羽織るドラキュラ。まるでコメディー番組の収録を見ている様だった。


試合が開催される。


ドラキュラと動物人間は激しく魔法を使って戦い始めた。見た目はお馬鹿だが…試合内容は中々にハイレベルな戦いを繰り広げている。しかし…。


「なぁルーチェ。」


「はい、龍人くんどうしましたの?」


「社会人って大体が魔法学院卒業者だよな。にしては…そこまでレベルが高くない気がすんだけど。」


そう、ハイレベルではあるのだが、想像していたよりもレベルが低いのだ。


「あら?龍人くん…もしかして入学書類読んでいませんわね?」


「え?そんな読む様な書類あったっけ?」


入学手続きの書類にあれこれ書いた記憶はあるが、そんな書類があったかは全く覚えていない。

目線を遼に向けてみるが「今更?」と言いたげな目を向けられていた。


「え…もしかして知らないの俺だけ?」


周りにいる全員が頭を縦に振る。あのクラウン迄もが喚かずに頷くのみに徹している所を見ると、常識過ぎて突っ込む気にもなれないのだろう。ルーチェがピンと人差し指を立てる。


「簡単に説明しますわよ。街立魔法学院は4年制ですわ。ただ、上の学年に上がるには一定以上の実力が必要なのです。その実力に関しては毎年2月に昇学試験があるのですわ。この試験で一定以上の実力が認められなければ上の学年には上がれませんの。そして、その制度だからこそ上の学年に上がるのを諦めて、卒業して社会に出る人も沢山いるのですわ。」


「なるほど。つまり社会人イコール強いって訳じゃ無いんだな。」


「そうなのですわ。寧ろ、強くて実力のある人は魔法学院に在籍しながら活躍しているのが一般的なのです。」


「ふーん。そすっとさ、2年生って全員が1年生上位クラスより強いのか?」


「それは違うのです。各学年の上位クラスは最低でも1つ上の学年中位クラス程度の実力があるはずですの。ただ、実力の定義が広範囲に及びますので戦闘における能力で全てが決まるわけでは無いことも覚えておく必要がありますの。」


「…なるほど。」


龍人は頭の中でルーチェの言葉の意味を吟味する。



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