3-1-1.恋
属性診断で多目的室を出たバルクはいつもの元気さを纏わず、むしろ内気な少年の様な動きをしながら歩いている。どんな感じかと言うと、過剰に周りを気にして歩いていた。
教師校舎の4階をひと通り歩くと、3階に降りる。また3階をひと通り歩くと、2階に降りる。その動きだけ見れば徘徊する不審者である。そして、1階に降りたバルクは保健室の前で立ち止まった。
その様子を離れた角から見ているのは、もちろんバルクを尾行していた龍人と遼である。2人は楽しそうにひそひそ話をしながらバルクを観察する。
バルクは保健室の看板を見つめ、ため息を吐く。という行動を何度か繰り返した後、震える手でドアをノックした。
中から返事があり、その声を聞いたバルクは一瞬硬直する。だが、すぐに意を決した表情をし、保健室へと入って行った。
「おい、入ったぞ。」
「うん。行こう!」
龍人と遼は保健室の前まで忍び寄り、中の話し声を聞こうと耳を澄ませた。しかし、中からは何も聞こえず、静寂が支配しているのみだった。
2人は顔を見合わせ、怪訝な顔をする。予想とは違った展開になってしまっているのかと危惧した時、中から元気な声がした。
「お願いします!」
声の後、ドアに近づいてくる足音。龍人と遼は慌ててドアから離れ、物陰に身を潜める。
保健室から出て来たバルクは慌てた様子で保健室から走り去った。
「これ、何かあったよな。」
「うん。間違いなく。」
龍人と遼はニヤリと笑うと保健室のドアをノックして、中に入って行った、
それから30分程して、2人は保健室から出て来る。そして、次の日の予定を確認し、それぞれの自宅へと帰宅をしたのだった。




