10-5-2.チーム戦
服も髪もボロボロになったラルフによる午前授業が終わり、龍人達はいつものメンバーで学食にいた。
因みに、いつものメンバーは龍人、遼、火乃花、レイラ、ルーチェ、バルクの6人だ。其々が食べる料理は種類も数もバラバラである。龍人は味噌汁に焼き鮭、遼はスクランブルエッグにソーセージにサラダ、火乃花は鯖の味噌煮に澄まし汁、バルクはハンバーガーにポテトにナゲットにアイスクリームに…。と、各々が食べたいものを食べたいだけ食べている。魔法が主流である魔法学院であるからこそ、バラエティーに富んだメニューを提供出来ているのがこの学食の特徴だ。
「で、龍人君は勝率が上がらない理由少しは分かったの?」
「いんや。さっぱりだね。」
火乃花の問いに龍人は肩を竦めるポーズで答えている。話題は相変わらず龍人がチーム戦で勝てない理由についてだった。余談ではあるが、バルクとレイラの勝率は5割。どちらも龍人を上回っている。
更に余談だが、屋上で火乃花が龍人を問い詰めたのはつい最近の事だが、その翌日からはいつも通りの態度で接してきていた。龍人としても気まずいまま過ごすよりも今の方が気楽でいいのだが、火乃花に何かを疑われているのは明らかだったのは間違いがない。
火乃花が疑っているだろう点は以下の2つだと龍人は認識している。
1つ目。
龍人が世界の構造について何かを知っている。
…これは、龍人自身あんまり良く分かっていないので、特に問題は無い。
2つ目。
龍人が幻創武器について何かを知っている。
…自分のもつ龍劔がそれである事を火乃花には伝えていない。そもそも、知っているのはラルフと遼の2人だけだ。
幻創武器について知っている事がバレたとして何があるのかは分からないが…頭の回る火乃花の事だ、そこから更に何かを嗅ぎつけてしまう可能性は否定出来ない。
(マジで言動に気をつけないと皆を巻き込んじまうな…。)
ボケッとそんな事を考えていた龍人は隣に座るレイラが声を掛けている事に気付くのが遅れてしまう。
「龍人君?」
「ん…?あ、わり!何か言った?」
レイラは不思議そうに龍人の顔を覗き込んでいたが、慌てた様子の龍人を見てクスクス笑いを漏らす。
「ふふふ。龍人君でもボケーっとする時があるんだね。」
「何言ってるのレイラ。龍人君って基本的にいつでもボケッとしてるじゃない。」
龍人の正面に座る火乃花がすかさずツッコミを入れてくる。龍人はもちろん反論する。
「いやいや!それは流石に言い過ぎっしょ。」
「そうかしら?隣に座るレイラが話しかけてるのに、気付けないって時点で怪しいわね。」
「む…。」
痛い台詞に龍人の言葉が詰まる。これで、少しでも火乃花が笑みを浮かべていたら冗談話で終わったのかも知れない。実際は少し見下したような感じで言われ、龍人はイラついてしまう。
「じゃ、そーゆー事でいいや。で、レイラ何言ったんけ?」
火乃花の言葉責めをサラッと流し、レイラに話を振る。この龍人の態度に火乃花がイラっとする悪循環。最近はこんなパターンが増えつつある。周りから見たらいつも通りの会話かもしれないが、当人達にとってはかなり重要な問題になっていた。ほんの小さな変化ではあるが、この状況に気付いている人物が1人居た。…ルーチェだ。
(龍人くんと火乃花さん…最近仲が悪いですわ。何かあったのでしょうか?)
2人の顔や仕草を観察してみるが、イラついた表情が見えたのは一瞬だけで、その後はいつも通りであった。
(友達が喧嘩するのは嫌ですわね…。)
確証がないので声を掛ける事も、間を取り持つ事も出来ない。ルーチェは状況を見守るという選択をするしかなかった。
その後のランチタイム中に、龍人と火乃花の間の雰囲気が悪くなる事はなく、いつも通りの会話が展開される。
(むむーですわ。私の勘違いなのでしょうか?!
ルーチェはしきりに首を傾げるのだった。
場面は午後の授業…チーム戦へ進む。




