表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
561/994

10-4-9.禁じられた区域



かなり強い揺れであったのにもかかわらず、管理塔展望台に立っている4人は誰も体勢を崩すことはなかった。それぞれ魔法で身体能力の強化を施してバランス感覚を上昇させたのだ。ほぼ無意識で使う辺りは流石と言えよう。


ラーバルは戦闘による魔法の光が見えていた方向を確認する。


「戦闘地点が大分中心に近づいているな。ラルフ、万が一の危険性もある。2人を南区まで転移させてもらってもいいかな?」


「はいよ。で、ラスターはどうすんだ?もう昔ほど戦えないんじゃないか?歳だし。」


心配するラルフの様子に、ラスターは金縁眼鏡の位置を人差し指で直しながら微笑む。


「ラルフ。俺を誰だと思っている。ラスター=ブラウニーだぞ?外見は初老のおじさんかも知れないが、まだまだ戦えるさ。君にもまだ負けないね。」


「…相変わらずだな。まーそれなら心配ないか。よし、龍人、遼。帰るぞ。」


龍人は戦闘の光が更に近づいて来た事を確認する。もし、魔獣がこの管理塔に攻撃を仕掛けて来たら…と考えると、この状況で帰る事に対して素直に頷く事が出来ない。


「どんどん近づいてきてるけど、大丈夫なのか?」


「あぁ、ラスターがいるから大丈夫だ。このおっさんは俺よりも全然強いからな。じじい手前だから心配したけど、あんだけ自信があれば問題ないだろ。それに、お前達2人が残っても足手まといになるだけだ。」


足手まといとキッパリ言われてしまうと反論する事が出来ない。龍人は不満そうな顔をするが、ラルフが自分より強いと明言したのでラスターの実力を疑う余地もなく、それ以上食い下がる事はしなかぅた。

遼に関しては元々魔獣と戦うとかそんな事は考えてなかったらしく、会話に参加せずに戦闘の光を観察している。


ドォォン!


衝撃に再び管理塔が揺れる。


音も揺れも大きくなっている。ラスターは眉間に皺をよせて鋭い目付きで戦闘区域を確認した。


「うん。そろそろ行った方がいいな。ギルドの調査不足でランクが合わない魔法使いが派遣されたかも知れないな。全く世話が掛かる。」


ラスターの纏う雰囲気が一瞬にして変わる。穏やかな、それでいて洒落っ気のある雰囲気から、全てを突き刺す槍のようなそれに。

ラルフはラスターのスイッチが切り替わった事を察知すると、邪魔をすべきでないと判断してすぐに行動に移す。


「はいっ!行くぞー。」


ラルフはポンッと龍人と遼に触れると転移魔法を発動した。2人が反応する間も無く転移が始まる。転移の光の隙間からチラッと見えたのは、巨大な光が天から地へ降り注ぐ瞬間だった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「うしっ。色々と巻き込んじまって悪かったな。取り敢えず、今日見聞きした事は他言無用で頼むぞ。勿論ルーチェにも話しちゃダメだ。思念体だとか禁区とか魔獣とかの話題は、一般的には公開されてない話だからな。下手にその話が広がっちまうと、余計な混乱を招きかねない。」


いいか。と、ラルフに念を押されて龍人と遼は素直に頷く。

そもそも望んで禁区に行ったわけでもないし、図書館に行ったのも思念体についての情報を聞いたのも全てラスターによる采配なわけで。そこで知った情報を他人にベラベラ話す程馬鹿ではなかった。


「じゃあ、ちゃちゃっと帰れよー。」


ラルフは人差し指と中指を揃えて額からピッと伸ばす。イケメンとかダンディーなおじ様がするとカッコイイ挨拶。残念ながらラルフはどちらにも当てはまらないのでカッコ良くはないが、何故か様になっていたのも嘘ではない。


ラルフが転移で消えた後に龍人と遼は家に向けて歩き始めた。

時刻は夜の23時。ラルフが転移で連れてきた場所は街魔通りからすぐの裏路地だったので、2人はまず街魔通りまで出た。夜中だからかほとんど人は歩いていない。


「龍人は今回教えてもらった事についてはどう思う?」


遼の何気ない質問。


「んー、正直知らなかった事ばっかりで、まだ消化し切れてない感じなんだよなぁ。思念体について色々と聞かされたけどさ、結局1番重要な所…例えば何を目的に人の前に出て来るのかとかはサッパリじゃん?正直それらを知ったからどうするってのは無いかなぁ。」


「やっぱりそうだよね。何も知らない事にして、今まで通りに学院生活を送るのがベターだよね。」


「うん。俺もそう思う。」


「じゃ、そしよっか。」


「おうよ。」


その後は無言で歩き続ける2人。かなり濃厚な1日を過ごしたので、それぞれ思うことがあるのだろう。


「じゃ、俺はこっちだから。」


「うん。また明日ね。」


互いに手を上げて挨拶をすると2人は其々の家に向けて別々の道を歩き出したのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ