2-7-41.授業 属性診断
多目的教室に入ると遼がすぐに近寄って来た。何故かニヤニヤしている遼は龍人の腕を掴むと、教室の端まで引っ張って行く。何事かと思うが取り敢えずそのまま引っ張られるままに移動する龍人。
周りにクラスメイトが余りいない所まで移動した遼は小声で話し始めた。
「あのさ、バルクが属性診断から戻って来てから上の空じゃん。心配になってどうしたのか聞いたんだ。」
ここで一旦話を切りバルクを見る2人。バルクは相変わらず体育座りのまま、虚空を見つめている。
「確かにいつもの元気なバルクと比べたら異常なレベルで静かだな。俺たちが戻って来ても話しかけてこないとか、ちょっと考えらんないし。」
「でしょ?よっぽど属性診断でショックな事を言われたのかと思ったんだけど、実はさ…。」
数分後、内緒話を終えた龍人と遼はバルクが見える…いや、バルクを観察出来る位置に座り、属性診断の結果について話していた。
遼が感心したように頷く。
「なるほどねぇ、属性【全】かぁ。って事は、基本的に全ての属性を使えるはずなんだよね。」
「そーみたいだね。属性【全】はずば抜けて強い属性が無いのが短所になるから、力押しは出来ないみたいだよ。頭脳プレーが鍵だってさ。」
これは、隣の教室を出る時にリリスが教えてくれた情報だ。適当に部屋を出て行けと言ったラルフに比べてリリスのなんと優しい事か。
「頭使わないと弱いのはどの属性も同じじゃない?」
「ま、そうだな。結局今まで通りにやるしかないわな。」
そもそも、属性を偽って話している龍人自身、本当の属性と偽の属性のどちらも特徴を把握し切れていないのが現状である。属性の話題は極力避けたいのが本音だ。
だが、属性診断が終わったばかりという状況で、その話題を切るのは変に疑われる可能性がある。龍人は何とか無難な返事をするしかなかった。
そうしてあれこれと話している内に、話題は遼の属性に関するものへ自然と移っていく。