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Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
554/994

10-4-1.禁じられた区域



夜の魔法協会に到着した龍人と遼は、昼とは違って薄暗い程度の電気しか点いていない建物内を進んでギルドの受付を目指す。多くの人々が訪れる昼間に比べ、夜に空いている窓口はギルドの受付のみなので静まり返っている。時々別の通路を歩く人の足音が聞こえる程度である。


(お化けでも出そうな雰囲気だね。)


遼は周りを見ながらそんな事を考えていた。いつもは賑わっている所が静かだと余計に気味悪く感じてしまうものである。


受付に到着すると、龍人が受付で今回の依頼について報告を始めた。


「はぁ?なんでそうなるんだよ。」


(うわ。絶対面倒くさい事になってるよコレ。)


案の定。振り向いた龍人は面倒臭そうな顔をしていた。


「どっかの誰かさんが俺達に会うためにこれからここに来るんだって。んで、それを待てだってよ。」


「え?なんで俺達に会いに来る人がいるんだろ?」


「さっきあったことを伝えたら、少し待ってろって言って裏に行って、帰ってきたら待てとか言い出したんだよね。理由は教えてくれなかったわ。」


「そっか。…待つの?」


「んー、受付の人が少し焦った感じで裏から戻って来たんだよね。もしかしたらどっかのお偉いさんかもしんないだよ。そーするとさ、待ってなかったからってのを理由にしてギルドから除名とかなりそうじゃん?そうなったら悔しいから待ってるのがベターかなって思うんだけど…どうよ」


「…そんなことあるかな?」


「そればっかりは分からん!とにかく俺は早く帰りたい。」


「はっはっはっ。正直だな。だが、少しだけ私に付き合って貰えるかな?」


いきなり後ろからかけられた声に龍人はビクッと反応して振り向く。そこにはオールバックに固められた金髪と、鼻に掛けられた小さい丸メガネが何故かミスマッチな男が立っていた。


男は楽しそうに笑うと受付の男に向けて手を挙げた。


「いやぁ引き止めててくれて助かったよ。ありがとうな。」


「い、いえっ!とんでもないです!」


いつもは無表情で淡々と話す受付の男が声を掛けられた事に慌てて立ち上がる。その反応からするに、男が只者ではなさそうな感じはビンビン伝わってくる。

男は龍人と遼に顔を向けると優しく微笑んだ。


「立ち話もなんだな。協会の個室にでも行こう。いいかな?」


強制的な話し方では無いのだが、何と無く断り辛い雰囲気に龍人達は無言で頷く。


「よし、わざわざ待ってて貰ったからな。歩かせるのは悪いからこれを使って一気に行くか。」


男はクリスタルを取り出すと、転移魔法陣を発動させた。光に包まれて3人の姿が消えて行く。


その様子を見届けた受付の男はドシっと椅子に座ると深く溜息をついた。


「まさかあの方が来るとは…。」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「俺の名前はラスター=ブラウニーだ。行政区税務庁の長官をさせてもらっている。」


転移した部屋で豪華なソファーに龍人と遼を座らせた男はそう名乗った。


「税務庁長官ですか?そんな人が何で俺達に会いに来たんですか?」


想像以上のお偉いさんに遼の腰が思わず浮き上がる。


「はっはっはっ。そんなに驚く事も無いだろう。私だって一介の人間だ。ただ偶然に今の役職に就いてるにすぎないさ。」


「いやいや。普通の人がなれる役職じゃないですもん。庁の長官は選ばれた凄い人しかなれないって聞いたことありますし…。」


「大袈裟だねぇ。私は自分自身の事をそんなに偉いと思った事はないんだがな。それに、そんなに畏まられては話し辛いな。そうだな…それでは私の事はラスターと呼んでくれ。只の初老のおじさんと思ってくれて構わないよ。」


自身の役職をひけらかさない態度に遼があたふたしていると、沈黙を保っていた龍人が口を開いた。


「じゃ、お言葉に甘えて。ラスターってルーチェの父ちゃんか?」


「へっ?」


遼が裏返った声を出して硬直する。いきなりのタメ語&ルーチェの父親発言に頭の中はてんてこ舞いだ。

ラスターは手を口の辺りに持っていくと肩を震わせ始めた。


「ふっふっふっふっ。いやぁ面白いな君は!龍人君だったかな?その物怖じしない態度と頭の回転速度は一級品だな!よし、では私も仕事としてではなく1人の男として君達と話させてもらうよ。」


両肘をソファーの背もたれに乗っけてリラックスした体勢を取るとラスターは話を再開する。


「いかにも、俺はルーチェの父親だよ。」


一人称が「私」から「俺」へと変化する。これが仕事ではなく1人の男として話すという事なのだろう。


「やっぱりな。ブラウニーってのと、髪の色が同じだからそうだと思ったんだよ。」


「良くそれだけの情報でルーチェのお父さんって思えるね。」


「ん?それだけじゃないぞ?雰囲気似てるじゃん。」


遼は改めてラスターを見てみた。ラスターは口元に笑みを湛えながら2人のやり取りを楽しそうに眺めている。


「いや、全然分かんない。」


「そうかなぁ?めっちゃ似てるじゃん。」


「君達はいいコンビだな。2人共違った着眼点を持っているから、チームで動いたら中々に良い働きをしそうだ。」


ラスターは龍人と遼を褒めると、膝の上に腕を乗せ身を乗り出すような体勢を取った。


「さてと、そろそろ本題に入るか。面倒だとは思うんだが、今回の依頼で起きたことを細かく教えて貰ってもいいかな?」


「分かった。じゃ、遼から説明するから。足りないところは俺が補足するんで。」


「ちょっ!何でいきなり放り投げてくるんだしっ。」


「そっか、じゃあ遼君頼んだよ。」


まさかのラスターの悪ノリに遼は抵抗するのを諦める。


「じゃあ…話しますね。」




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