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Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
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10-3-2.呻き声



「遼…来るぞ。」


「うん。」


2人は武器を構え、暗闇の中から近づいてくる何かを待ち構える。薄く冷たく吹く風が肌を冷やしていく。


「?…?。グルルル。」


再び道に響く声。しかしそれは龍人達の後ろからだった。


(いつの間に!?)


龍人は素早くターンをすると攻撃に備えて魔法壁の展開準備に入った。

暗闇から薄暗闇へ足を踏み入れてきたのは1匹の犬だった。


(犬…?)


サイズは中型犬のそれ。但し、頭が3つ存在していた。


「遼…。普通の動物の姿形をしてないから、これで魔法を使ってきたら魔獣って事だよな?」


「うん。そうだと思うんだけど…魔獣だとしても迫力が無いね。」


「ヴ…グルルル。」


犬…3つ頭の犬は唸りはするが、それ以上近寄ってこようとはしない。

龍人達も警戒して攻撃せず、かと言って逃げ出して後ろから攻撃されるのも怖いので逃げ出せず。こんな具合で両者は互いに牽制する様な形で動くことが出来ずにいた。


膠着状態を破ったのは3つ頭の犬だった。耳がピクっと動くと慌ただしくクルクルと回り始める。


「?ー!」


低く、強く唸ったと思うと龍人たちに向けて火球を放った。


(いきなりかよ!)


龍人が張った魔法壁に火球はぶつかって霧散する。しかし、小さめの火球であるはずなのに威力が普通のそれとは段違いだ。ビリビリと龍人の腕にまで衝撃が響く。


「遼!こいつの使う魔法の威力やべぇ!油断すると一気にやられる!」


「分かった!」


遼は拡散弾を放つ。単発の銃弾が犬に向けて真っ直ぐ直進し、約1m手前の所で散弾へと変化した。


「ギャウン!」


3つ頭の犬は情けない声を上げて拡散弾の直撃を喰らってしまう。

続けざまに龍人が水の針を犬に向けて放つ。炎を使うから水が有効なのでは。という、安直ではあるが様子見で取る手段としては至って妥当な攻撃と言えよう。


「ガルッ!」


犬は態勢を立て直すと炎の渦を体の周囲に纏わり付く様に召喚した。炎の熱量が水針の直進を防ぎ、蒸発させる。


「グルルルルル…。」


「龍人!一気に畳み掛けるね!」


遼は犬に向けて双銃を構え、拡散弾を連射し始めた。キタルからリヴァイアサンとルシファーを返してもらっていない為、無属性の銃弾しか撃てないのが難点ではあるが…それでも相手の逃げ場を奪う位の弾幕を張ることは出来る。


犬は弾幕に顔を向けると体に纏わり付いている炎を散弾として発射した。空中でぶつかり合う無属性と炎の属性の散弾。


パパパパパッ!っと光が連続して明滅する。


犬の隙をみて攻撃をしようと観察していた龍人はここで違和感を覚える。


(なんかこの犬…俺たちの事を攻撃しようとしてない気がすんな。)


こちらからの攻撃魔法に対して的確な魔法を使って防御をしてはいるが、先手を打って魔法を使ったのは最初の火球のみ。そして何よりも気になるのが、こちらの魔法の迎撃手段として属性【炎】を使っているという事。見た目だけで属性【火】と【炎】を判断するのは難しいが、それでも最初の攻撃魔法と防御で使っている魔法の威力は、誰が見ても分かる程の違いがあった。


遼が立ち位置を変えながら犬を追い詰めて行く。拡散弾の中に攻撃力に特化した貫通弾を織り交ぜる事で、攻撃自体に威力のバラつきを加えて防御を難しくさせている。


龍人は魔法壁で遼に攻撃が当たるのを防いで攻撃をするアシストしながら、犬の様子を観察し続ける。


(そもそもだ、最初の攻撃って俺達を狙ったのか?)


龍人は犬が火球を放つ前の行動を思い出す。

耳をピクッと動かし、クルクル回り…そして火球を放ったはずだ。何故耳をピクッと動かしたのか。あの時龍人と遼は何も言葉を発していない。となると、犬が聞いたのは何なのか。そして、クルクルと回った行動の意味は…?龍人の中で疑問が渦巻いていく。


視線の先で遂に遼の魔弾が犬の脚を貫いた。


「ギャウン!」


すると、3つ頭の犬はイキナリ伏せを行った。そこに降り注ぐ遼の放った大量の拡散弾と貫通弾。

そこから龍人が取った行動は、ほぼ条件反射といえるものだった。本能がその行動を選択したと言ってもいい。理由は無い。それが正しいと直感的に判断したのだ。

龍人は犬の周りに最大強化で魔法壁を2重展開し、遼の魔弾を防ぐ。そして、犬と遼の間に割り込むと遼に夢幻の切っ先を向けて叫んだ。


「遼!ちっと待て!この犬の様子、おかしすぎる!」


「龍人…!?何やってんのさ!危ないって!」


遼の言葉通りに突然目の前に移動してきた龍人に向けて犬が牙を剥き、噛み付いた。


「…っつ。」


龍人は避ける事も、反撃する事もしなかった。動かず、左腕に走る痛みに耐える。


「龍人!」


遼が双銃を犬に向けるが、龍人は視線でそれを制する。すると、3つ頭の犬の顎が緩んだ。


「キュウン。」


犬はゆっくりと龍人の左腕から口を離すと、再び伏せの態勢を取ったのだった。


「……?どういうこと?」


「いつつ…。俺にも良く分かんないんだけど、多分この犬は俺達に攻撃されたから反撃してたんだと思う。」


「じゃぁ、最初の火球はなんだったのさ?」


「それが分かれば苦労しないんだけどな。何せ言葉が通じないから何とも言えないんだよなぁ。だけどほら。もう攻撃してこなさそうだし。」


「はぁ…ホント龍人の考えてることは分かんないなぁ。」


遼はため息を付くが、それでも龍人の言葉を信じて双銃をしまった。あくまでも警戒は怠らずに。ではあるが。



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