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Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
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10-2-17.日常と現実



「幻創武器は空想の産物と言う人も少なくなかった代物よ。今までは伝承で存在が語り継がれていただけだったの。所詮は昔の人が想像で創り上げただけの物…というのが世間一般の認識だったわ。」


ここでキャサリンは人差し指で眼鏡を上げると小さく息を吐いた。


「その一般説が覆されたのが、4年前に起きた魔法街戦争での出来事よ。」


ここでキャサリンは1度黒板に書く手を止める。


「一応確認するけど、この世界の構造についてラルフから説明は聞いてるかしら?」


(世界の構造って…他にも星があるって事か?それとも他の何か…?)


龍人はキャサリンの質問の意図を読み取ることができない。


「そんなのあるわけないでしょ?魔法街戦争以降、その話題に触れるのは禁止になってるじゃない。」


やや尖った口調で答えたのは火乃花だ。


「…やっぱり。あいつ、面倒くさい説明を私に押し付けるためにわざと残してたんじゃないかしら。」


キャサリンは溜息を付くと、眼鏡をクイッと上げて黒板に円を書き始めた。


「ざっくり説明するわよ。初めて聞く人が多いと思うけど、これが現実だから騒がずに聞くこと。いいわね?」


学院生たちは首肯する。


「まず、この世界には数多くの星々が存在するわ。」


一瞬クラスにどよめきが走る。しかし、そうなるのも無理はない。魔法街では世界は魔法街のみという認識が普通なのだから。


「それでね、その星々は圏というグループ毎に纏まっているの。その圏は確認されているだけで5つあるわ。まず、圏の名称はこの通りよ。」


黒板に圏の名称が書かれていく。


都圏

京圏

街圏

藩圏

町圏


「これが私達の世界を構築する圏よ。魔法街は街圏に属するわ。因みに、街圏に属する他の星は機械街、水街、森林街、雲街よ。他の街の詳細は別の機会にね。街圏内で他街との交流は基本的には可能よ。実は皆も良く行く中央区には他の街から来た商人もいるわ。許可があれば他の街に行くことが出来るしね。ただ他の圏との交流が許されているのは、ごく限られた一部の人のみよ。詳しい理由は私にも分からないから質問しても無駄よ?」


手を挙げかけていたバルクは口をとんがらせた。


「まぁこれで世界の構造は何となく分かったわよね?それで本題なんだけど、この全ての世界の中で確認されている幻創武器は1つのみよ。正確に言うと、魔法街が確認してるの。って言う方が正しいかしら。その幻創武器を持っているのが、行政区最高責任者のレイン=ディメンションよ。それまでは只の空想の産物として扱われていた幻創武器を操って、魔法街戦争を終結に導いた英雄ね。」


キャサリンの説明はまだまだ続く。


「そのレイン=ディメンションが持つ幻創武器がトゥーランと呼ばれているわ。これは空間を司る神の名前ね。ここから推測されるのが、幻創武器は神の名を冠する武器であるということね。もちろん、神の名前が付いていても幻創武器ではない武器も存在するのは覚えておいてね。」


(あれ…そうなると俺の龍劔はどうなんだ?普通に神の名前じゃなくて種族の名前だし。ってなると、幻創武器じゃないのか?てか、1つしか確認されてないのにドレッサーは何で俺の龍劔が幻創武器って思ったんだ?)


(俺の武器ってルシファーとレヴィアタンだから…幻創武器の可能性があるって事?でも、そうじゃない武器もあるって言ってたし…。)


龍人と遼はチラリと視線を交わすと首を傾げる。因みに、龍人はドレッサーに鑑定してもらった結果については遼に話している。とは言っても伝えているのは龍劔という名前である事だけだが。つまり、2人が目線を交わしたのは遼の武器について同じ疑問を抱いたからであり、それ以上の何かがあったわけではない。しかし、その2人を見て何かあると勘繰る視線があったのも事実。…火乃花は訝しみながら2人の動きを観察していた。

そんな学生間のやり取りを気にすることなくキャサリンは講義を続けている。


「因みに捕捉しておくけど、魔法街各区のトップに立つ魔聖の中で幻創武器を持つのはレイン=ディメンションだけ。…と言われているわ。」


「はいなのですわ。」


「…また貴女ね。ルーチェ。」


ルーチェはニコニコと立ち上がる。


「根本的な質問で申し訳ないのですが、幻創武器にはどんな力が隠されているのですか?それ相応の力がありそうなのです。」


「あら、まともな質問ね。幻創武器には名を冠する神に由来した力を使う事が出来ると言われているわ。とは言っても、トゥーランの記録しかないから実際の所は分からないんだけどね。」


「なるほどですわ。では何故、幻創武器と言われていのですか?」


「…それに関しては諸説あるんだけど、1番有力なのが幻が作ったとしか思えない武器だから。っていう説ね。現在の技術では到底作ることの出来ない能力を秘めた武器って事よ。ただ、誰かが名付けた訳じゃ無くて、昔からそう伝承されていたから真実は分からないわ。なんて言ったって、その存在が確認されたのがたった4年前だから仕方が無いわね。他に質問はあるかしら?そろそろ切り上げないとお昼の時間が無くなっちゃうんだけど…。」


生徒達からは手が上がらない。それもその筈。彼らにとっては初めての情報が多すぎる授業だったため、咀嚼するのに時間が掛かっているのだ。


「それじゃあ質問もなさそうだし、午前中の授業は終わりにするわね。午後の授業は…3対3のチーム戦ね。じゃあ解散しましょ。遅刻はしないでね~。」


キャサリンはウインクをすると教室から出て行った。生徒達がその色香にやられて悶絶したのは言うまでも無い事実。


(さて、飯でも食って昼寝して午後の授業は頑張るかなっと。)


伸びをして立ちあがった龍人は、近づいて来る人物に気付いた。…火乃花だ。


「龍人君。ちょっと話があるんだけど、少し時間もらえないかしら?」


周りの人に聞こえない声で告げる火乃花に龍人は小さく頷く。

最も、何故自分が火乃花に声を掛けられるのか全く心当たりが無く、頭の中は疑問符で一杯ではあるが。しかし、ここで周りに聞こえるように何故と問うほどナンセンスではない。


「じゃ、着いて来て。」


火乃花は龍人の返事を待たずに身を返すと教室の外に向けて歩き出した。



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