10-2-11.日常と現実
龍人とレイラは喫茶店を出ると辺りを見回す。
「この後どしよっかね。」
「んーどうしよう。」
レイラの頭が横に傾く。…ここで龍人の心の声を1つ。
(どこまで可愛いんだし。)
もはやメロメロの龍人だったりもする。
「ま、そしたらのんびり街魔通りでも歩こっか。」
「うん!」
レイラは嬉しそうに頷くと、先に歩き出した龍人の隣に小走りで駆け寄った。取り留めのない会話をしながらも、2人で居るという時間を楽みながら街魔通りを散策する。
10分程歩いた頃だろうか。そんな少し甘い小さな幸せの時間は突然終わりを告げる事になる。
龍人は道の先に見知った顔触れの集団を発見した。
「レイラ…あそこに居るのって。」
「ラルフ先生と火乃花さんと…皆いるね。」
龍人と火乃花は思わず顔を見合わせてしまう。それ程までに意外な組み合わせなのだ。…主にラルフと火乃花の組み合わせだが。ラルフの頻繁な火乃花へのセクハラ、そしてそのラルフに火乃花がキレるというのは最近では定番化している。その2人がわざわざ休日に同じ場所にいること自体が信じられなかった。
「取り敢えず、行ってみよっか。」
「うん、そうだね。なんか気になるし…。」
その集団に近づくと、2人に気付いたバルクが大声を出す。
「お!龍人とレイラじゃねぇか!お前らもこっち来いよー!」
2人で居る事に盛大なツッコミが来るかと思ったのだが、どうやらそういう雰囲気では無いらしい。
集団のメンバー達は以下の通り。
ラルフ=ローゼス
霧崎火乃花
バルク=フィレイア
ルーチェ=ブラウニー
スイ=ヒョウ
スイが休日にクラスのメンバーと一緒に居るのもかなり意外と言える。
集団に合流した龍人は、最初から抱いていた疑問を投げかける。
「休みの日にわざわざ集まって何やってんだ?」
「ふっふっふっふ!」
ラルフが怪しい笑い声を上げ始める。
「いやぁお前らイイタイミングでココに来たな!これから俺たちはあの店に入る!」
犯人はお前だばりにラルフが指をビシィッと差したのは、とある看板。そこに書かれた名前を読んで龍人は目を疑う。
「なぁ。あなたと私の萌え心って…皆そんな隠れ趣味があったのか?」
「ちょっ…!変な誤解しないでよね!私はルーチェが面白い物が見れるから遊びに行こうって誘ったから来たのよ。私だってまさかあんな店に入ることになるとは思わなかったもん。」
少しむくれ気味の火乃花。
「あらあら。私はバルクくんに誘われましたのよ。友達皆連れて行こうって言われたので、火乃花さんを誘いましたの。」
ルーチェは相変わらずのほほんとしている。あの店に入るのに抵抗は無さそうだ。
「…我もバルクに誘われた。1度は断ったのだが、余りにもしつこかったから渋々来たまでだ。」
全員の視線がバルクに集中する。
「おいおいちょっと待て!何で俺が責められる感じなんだ?俺はラルフに誘えって言われただけだぞ?」
「ほほーう。俺のせいにするか?そうかそうか。」
ラルフが黒い笑みを浮かべる。そして一瞬硬直するバルク。
「よし、俺が真実を話してやろう。あの店は俺の行きつけの店だ。んでな、この前いつも通りに遊びに行ってたんだよ。そしたら…。」
「ちょっと待てぇ!」
バルクが必死の形相でラルフに掴みかかる。しかし相手はラルフ。デブちんとは思えない体捌きで躱すと、脚を払って宙に浮いたバルクの体を片手で掴みグンッと高速横回転させる。
「ぬわぁぁ!」
高速回転し側面から地面に落ちたバルクは、そのまま少し離れた所まで転がって行った。
ラルフは何事も無かったかの様に話を続ける。
「でな、そこにバルクが来たわけよ。1人でメイド喫茶に来るってのがウケるよなー。ま、その後色々あって今に至る訳だ。」
「いやいや、1番大事な所を端折られたら分かんないじゃん!」
龍人がすかさず突っ込む。
「まぁそれは中に入れば分かる!事の真相を知りたい奴だけ着いてこーい!」
そう言うとラルフはルンルン楽しく歩き出した。体の周りに音符が浮かんでるのでは?という位楽しそうに見える。
「俺は…行く!もっかい見たいからな!」
派手に転がされたバルクはラルフに着いて歩き出した。
「げ、どしよ。」
「私は行きますわよ。なんか楽しそうな予感がしますの。」
悩む龍人に対してルーチェは迷う事無く歩き出した。
「私も行くわよ。これで行かなかったらラルフにバカにされそうだし。」
「私は…皆が行くなら行こうかな。」
火乃花が行くと言った事で、レイラが行くかどうかは龍人の判断に委ねられた事になる。さて、その龍人はどう思っているのかというと…。
(いやー、やっぱ気になる!)
という訳で、全員参加が決定した。




