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Colony  作者: Scherz
第四章 其々の道
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10-2-10.日常と現実



シェフズの(余計な)謀らいによって突然実現したプチデート。龍人とレイラは近くの喫茶店でサンドイッチを頬張っていた。


「でさ、レイラがあのサタナスって奴にやられたのは魔力を取られただけだったのか?」


「うん。その取られた魔力がどうなったかは私も分からないんだ。…あ、でも大量の魔力がなんとかって言ってたかも。」


「大量の魔力ねぇ。その魔力を使って何を企んでるのか気になるよなぁ。魔法協会の地下に居た…えっと、ロジェスだっけ?あの体の変わり方も異常だったし。」


「あの人…可哀想だよね。レイラさんとか火乃花さんはサタナスって人が何かをしたらしいって言ってたけど…。」


「それもかなり気になるんだよな。人を魔獣みたいに変えるなんて事が出来るのが信じらんないよ。ただ、めっちゃ強かったけどね。」


レイラはロジェスと龍人、ルフトの死闘を思い出す。


「怖かったな。でも、龍人君カッコ良かったよ。」


龍人はピタリと動きを止める。


「お、おう。ありがと。それにしてもさ、ルフトも強いよな。俺があの靄みたいなのを使っても、多分ルフトの方が強いもん。」


レイラのセリフに照れた龍人は話題を変えようとする。


「ルフト君は4年生だもんね。…前から聞いてみたかったんだけど、あの黒い靄って何なのかな?私…心配だよ。」


黒い靄。龍人にも分かっていることは少ない。自身の中で聞こえた声が関連していることは間違いがないのだが…。


「それがさ、よく分かんないんだよね。あの靄は出そうと思っても出ないんだよ。自然と出てきたっていうかさ。」


「そうなんだ…。なんかもっと心配になっちゃうな。あの靄が出た状態で戦った後の龍人君ボロボロになっちゃうんだもん。」


「あれはねぇ。魔力とかが強くなりすぎちゃって体がついて行かない感じなんだよねぇ。」


「そうなんだ…ねぇ龍人君、あの黒い靄なんだけど使わない事って出来ないかな?このままだと龍人君が倒れちゃいそうで…。」


「んー…。」


龍人は考える。黒い靄の力を使った時に起きる症状が幾つか。まず、意識が時々飛びそうになる事…半覚醒の様な状態がずっと続くのだ。魔法を使った時後の体への反動が異常に大きい事…長時間の戦闘はほぼ不可能と考えられる。そして、自身の内側から聞こえた声の忠告が頭を過る。


《力に呑まれるな。》


この言葉が意味するのは…力を使う事で体が壊れてしまう事か。それとも力に依存する事か。

その両方という可能性もあり得る。


(どっちにしろ、あの力に頼って戦ってるようじゃ駄目だよな。レイラを悲しませるのはヤダし…。)


レイラは縋るような目で龍人を見つめて返事を待っている。龍人はその目を真っ直ぐに見ると小さく、だがしっかりと頷いた。


「分かった。あの靄は使わないよ。たしかにあんなのに頼ってたらいつか自分が壊れちまうもんな。」


龍人の言葉を聞いてレイラはほっとした表情を浮かべた。そして、ニッコリ笑う。


「ありがとう。でも、あれだよ?本当に必要な時に使わないで、死んじゃうとかはやだからね?」


「分かってるって。そこんとこの匙加減は任せて。」


死んじゃうという表現は大袈裟過ぎる気もするが…。しかし、魔法協会地下での出来事を考えたらそういう発想に至るのは仕方が無いと言える。


(なんたってあそこで起きたのは完全に非日常だったもんな。)


その事件の中で1番辛い思いをしたであろうレイラは、その事について弱音を吐いたりはしていない。1度捕まったのであれば、もう1度捕まる可能性が無いとは言い切れないのだ。それなのに彼女の口から出てきたのは龍人を心配する言葉だった。

だからこそ、龍人はレイラの言葉に込められた真剣な思いを感じ取っていた。

だからこそ、龍人はレイラとの約束を守ろうと固く心に誓ったのだった。


2人は少しの間見つめ合う。恋人同士が見つめ合っている雰囲気が2人の間に流れ…そして…


告白。手を繋ぐ。


こんな流れになっても良かったのかも知れない。しかし、レイラは話題を変えることを選んだ。彼女の中で何か葛藤はあったのだろうか。無かったのか。それとも…。


「あ、龍人君に聞きたいことがあるんだけど、まだ時間大丈夫?」


「ん?もちろん!今日は1日中暇だか ら全然大丈夫だよ。」


「あのね、ギルド試験でどんな事をしたのかちょっとでもいいから聞けないかなって思って…駄目?」


申し訳なさそうに顔を下に向けながら龍人を見るので上目遣いになっており、それが龍人のハートを射抜く。まさしく悩殺?ポーズ。

レイラの質問に全力で答えたいのだが…龍人は困った表情を浮かべる。


「それがさ、俺と遼の時はラルフが推薦してくれたから試験は受けてないんだよね。だから試験の内容とかは全然分かんないんだよ。」


「あ、そうなんだ。…そっかぁ。…うん。やっばりズルして受かってもダメだよね。私、自分の実力だけで受かってみせるね!」


控えめなガッツポーズをすると?レイラはサンドイッチを口に放り込んだ(放り込んだと言っても、あくまでもレイラにとっての放り込みだ)。

龍人はそんなレイラを見ながら少し不安な気持ちを覚えていた。


(レイラって控え目だけど時々負けず嫌いっぽい事言うよなー。それが原因で何かに巻き込まれなきゃいいんだけど…まぁ、今深く考えてもしょうがないか。)


2人だけの時間はまだまだ続く。その時間を邪魔するものは現れず、2人は確実に互いの距離を縮めていた。



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