9-3-134.闇と実験
地面が激しく揺れる。
転送魔法陣から飛び出てきたルフト一行は慌ててバランスを取る
レイラは龍人、火乃花、バルクを守るように防御壁と魔法壁を張り巡らせ、ルーチェとルフトは周囲の様子を伺う。
揺れは次第に大きくなり地面に生じた亀裂から魔力と思わしき光が溢れ出始めた。
「ルーチェ。君はこの状況をどう思う?」
「私の予想だと魔法協会が吹き飛ぶ気がしますの。ルフトさんはどう思われますか?」
「ははーん。俺もそう思うんだよね。ヤバイな…。」
魔法協会の正門からは異変に気付いた人々が次々と飛び出していた。周囲にいる人も何事かと足を止める。
そこに現れたのはラルフだ。
「よぉ!…ってなんでルフトがいんだよ?それにバルクもいるし、しかも気絶してっし。おいおい、火乃花もか。龍人も満身創痍だなぁ。レイラとルーチェは比較的元気か?いやぁー面白い面子がいるなぁー!」
「ラルフ!この状況どうにかできるの?」
ルフトは焦った様子を出しながら、ラルフの台詞を全て無視して問いかける。
「ちぇっ。シリアスな場面にシリアスな事ばっかじゃつまんねぇだろ?」
何故か全員が無反応に徹する。
「本当に俺って生徒達からバカにされてっよなー。あー哀しいっと。」
ラルフは1人で嘆くと宙に浮かび上がった。補足しておくと、この時も地面の亀裂は広がり隙間から魔力が漏れ出している。
「ラルフ!出来たよ!」
魔法協会の影から遼が飛んでくる。
「よし。じゃあやりますかねー。みんな離れろー!」
ラルフは両手を魔法協会の建物に向ける。魔力がラルフを包み、真っ直ぐに突き進むと宙に浮かぶ魔力球にぶつかる。そこからラルフの放った魔力は幾つにも分かれて伸び、その先にある魔力球へ突き刺さる。その後も同じ現象が連続して起き、巨大な立体魔法陣が出来上がった。
「おし!流石は遼だな。イマイチ魔力球の場所があってなかったけど、大体はあってたぞ。」
「う…。いきなりやれって言った癖にクオリティ求めすぎでしょ!これでも出来るだけ頑張ったんだから!」
ラルフは横目で遼を見るとニヤリと笑う。
「ま、今後の課題だな。」
突然、地面から溢れ出る魔力が一気に濃くなった。
「…来るな。よし!」
ラルフは気合を入れると立体魔法陣を発動した。眩い光が魔法協会を包み、ほぼ同じタイミングで魔力による大爆発が地面を吹き飛ばし、魔法協会があった空間を呑み込んだ。
低い地鳴りのような音が響き渡る。
魔力の光が踊る。
「不謹慎ですが…綺麗なのですわ。」
それは誰しもが思った感想。
魔力の光は巨大な光の演出の様に踊り狂い、人々を魅了した。
それがロジェスの命を換えた魔力である事を知るものは少ない。
暫くして光が収まると、そこには魔法協会が変わらずに佇んでいた。
「いやー、疲れたな。まっ、遼のお陰で使う魔力をだいぶ抑えられたけどな。」
「ちょっと待って。って事は俺の魔力球無くても、魔法協会の次元をズラすの出来たってこと?」
遼が食いつく。
「ん?そりゃあそうだろ。俺を誰だと思ってるんよ?」
「マジ最低…。」
「なーに言ってんだ。あんな実践の機会はあんまないだろ?教師としての責任感だよ。」
「うー言い返せない。」
ラルフの圧勝?
その後、ラルフによって守られた魔法協会南区支部はそのまま健在。地下にあった施設だけは壊れてしまった為に使い物にならなくなった。(ラルフが意図的に次元をズラす対象から外したというのが大方の意見だ。)
火乃花とバルクは大事をとって3日間の入院。龍人は魔力の枯渇に加え、靄の影響で体の至る所がボロボロだったのだが、属性が世間にバレることを防ぐためにラルフの家に監禁された。そこでラルフの嫁であるリリスに介抱をされる事になる。
その事実を知ったバルクが密かに悔しがったのは秘密だ。
事件の後、魔法協会の地下にあった施設については世間で騒がれたが、魔法協会の人間は全員が口を揃えて「知らない」を突き通す。確たる証拠もないまま世間が騒ぐのみ。という構図に落ち着きつつあった。
魔獣事件の犯人についてはロジェス=サクリフと公表された。龍人達は誰も情報を話しておらず、リーク元に関しては不明なままだ。
また、サタナスやセフの存在を知るものは数少なく、それらの情報に関してはヘヴィー=グラム(街立魔法学院校長…いちごパンツのクマ人形)によって口止めされた為に、一般公表される事はなかった。口止めした理由は、「その内分かるのじゃ。」でバッサリ切られてしまう。
こうして、街魔通りを発端とする魔獣事件は終わりの様相を見せる。
街魔通りの復興も順調に進んでいる。
そして、街立魔法学院の夏休みも終わったのだった。
時期は風の中に秋を感じ、夏が名残を残す9月。
街立魔法学院の後期授業が始まる。




