9-3-115.闇と実験
レイラはセフの小さな動きも見逃さないように注視しながら、耳を傾ける。
「その男…高嶺龍人が出していた黒い靄。それが今苦しんでいる原因だ。こいつには特別な力がある。そして、その力はいずれ我々のものとなる。」
「特別な力って何なの?」
「それは俺にも分からない。…目星は付いているがな。まぁ、まだまだ高嶺龍人には成長してもらわなければならない。それまでは自由にさせてやる。」
「それってどういう…。」
レイラは問いただそうとするが、セフは踵を返すと部屋の外に歩いて行ってしまった。
セフの姿が消えるのと同時にレイラの体を虚脱感が襲う。セフの瞳に対峙した時間は僅かではあったが、それでもかなりの精神力を消費したみたいだ。
倒れていたユウコも気づけば姿を消しており、部屋に残るのはレイラと龍人の2人だけだった。
「ぐっ…。」
依然、龍人は蹲って苦しんでいる。
「龍人君…。」
龍人の症状が黒い靄が原因だとしても、何がどう悪くなっているのかが分からないと適切な治癒魔法を使うことが出来ない。
(鎮痛効果のある魔法と…体調を正常に戻す治癒魔法を使うしかないかな…。)
レイラの両手が光り、龍人に治癒魔法を施し始めた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
白い廊下を歩くセフ。その表情は何を思っているのかを全く感じさせない。その横に影が渦巻くとユウコが姿を現した。
「どうだった?」
「はい。レイラ=クリストファーですが、耳についているイヤリングが魔具かと。残念ながら特異体質かどうかは…。」
「そうか。しかし、あの魔力の保有量は脅威的だ。それに加えて特異体質だったら…あの計画に使えたが。ふん。高嶺龍人とレイラ=クリストファーに関しては暫く保留にしよう。俺達は1度本部に戻るぞ。」
「はっ。」
ユウコは懐からクリスタルを取り出すと発動させる。すると、空中に転移魔法陣が出現する。
セフ=スロイとユウコ=シャッテンはその中に姿を消して行った。




