9-3-112.闇と実験
龍人は光の槍を連続で鉄槍に向けて放つ。光槍と鉄槍の先端が激突。火花を散らしながら互いの身を削り、軌道をズラす。
龍人を掠めるようにして幾つかの鉄槍が飛んで行くが、怯むことなく次の魔法陣を展開していく。その間も鉄槍の攻撃を光槍で防ぎ、龍人が下に発生させたのは強大な熱の塊だ。
(まずはコレで辺りの影を作るものを一気に消す!)
龍人が熱の塊を下に放とうとすると、龍人の横上空に女型の影が浮かび上がった。
「お前…馬鹿か?そんなものを放ったらレイラ=クリストファーも焼け焦げるぞ?」
龍人は影に目線を送ると薄い笑みを浮かべた。
「おうよ。」
そのまま眼下に向けて熱の塊を放ったのだった。熱の塊はそれほど早くない速度で地面へと迫る。熱の範囲内に入った植物は一気に水分を蒸発させ、発火し、燃え尽きていく。そして、地面に激突した熱は地を這って壁へとぶつかり、上に巻き上がるように天井へと進んだ。
部屋を灼熱風が吹き荒れる。当然、レイラの縛られている木も灼熱風に飲み込まれて見えなくなった。
部屋の温度が落ち着くと、部屋の中には幾つかの物だけが残っていた。
まず、龍人。
次に部屋の端に蠢く丸い影。それは次第に薄くなり、中からユウコが姿を現す。
そして最後の1つがレイラが縛られた木だ。
影の中から出てきたユウコは龍人を睨み付ける。
「お前…どうやってレイラ=クリストファーを護った?今のレベルの魔法を防ぐ魔法壁を張る時間は無かったはずだ。」
龍人はレイラの縛られている木の近くに降り立つと、余裕の笑みを見せる。
「そりゃあ秘密だ。敵に教える馬鹿はいないだろ。」
挑発するような台詞にユウコはギリギリと歯を鳴らす。
「さて…と、影が無くなったらこっちが有利だろ。行くぜ?」
レイラの縛られている木が残っているという事は、当然レイラを縛っている影も残っていた。衰弱したレイラは朦朧とした意識の中で龍人の戦う姿を見ていた。
(龍人君…逃げて。あの銀髪の男が来たら…。)
しかし、レイラの願いが届くこともなく再び龍人とユウコは激突を始める。
漆黒化した夢幻と鉄剣がぶつかり、互いの目の前で火花を散らす。




