2-7-34.授業 属性診断
昼食を学食で調達した龍人が屋上に到着すると、火乃花がフェンスにもたれ掛かって遠くを眺めていた。少し悲しげな表情をしているようにも見える。
声を掛けて良いものか迷っていると、火乃花の方が龍人に気付いて、小さく手を振りながら近寄って来た。悲しげな雰囲気は既に消えており、いつも通りの火乃花である。
「他のみんなはまだ到着してないのかしら?」
「みたいだね。バルクは購買に向かったから、ちょっと遅れるかもね。」
「あの激戦区に飛び込むなんて、ホント元気よね。私にはちょっと無理だわ。」
街立魔法学院の購買は、途轍もない混雑をする事で有名だ。混雑の理由は値段にある。お昼の時間しか開かない購買は、学院の外で買う半額の値段で、商品を手に入れる事が出来る。故に、運動系の部活に所属している学生らが激戦を繰り広げるという訳だ。
龍人と火乃花が他の人を待って他愛のない話をしていると、バルクが屋上に到着した。右手の袋には大量の戦利品が詰め込まれている。そして、左手には何故か遼が引きずられていた。
「あらま。まさか遼も購買にいったのか?」
「バルクが行くって言うし、前から興味あったから行ってみたんだけど、もういいや。」
遼はそのまま地面に寝転がったまま起き上がらない。バルクは呆れた様に首を振る。
「あれ位でくたばってたら、運動部ではやってけないぞ!」
「いや、運動部じゃないしー。ってか、もー無理。休憩するね。」
相当揉みくちゃにされたのだろう。制服も髪型もよれて元気が無い。遼が動かないと踏んだ龍人と火乃花は、遼の近くに座り昼ごはんを食べ始めた。バルクは遼を引き摺る手を離した瞬間には、戦利品のパンを既に食べ始めていた。
龍人は肉まんを頬張りながら、火乃花に問う。
「そんでさ、火乃花の属性ってなんなの?」
「やっぱ聞くのね。あんま言いたくなかったんだけどなぁ。いつかはバレるし、しょうがないっか。」
火乃花は空を見上げ、少しすると3人の方へと顔を向けた。その眼差しからは、何かの決意が感じられた。
「私の属性は、極属性【焔】と属性【幻】よ。」