9-3-105.闇と実験
龍人が伝え終えるとラルフが口を開く。
「その女が気になるな。追跡されてるのを気づいてたんだろ?それなのにこんな所まで龍人を誘導するって事は、何かしらの目的があるって事だよな。」
遼も賛同するように首を縦に振る。
「うんうん。でも、ここが魔獣の研究をしていると仮定した場合に、それと龍人の関係性が全然見えないですね。」
「だろ?そんでもっていきなり大量の魔獣で俺を殺そうとしてくるしさ。ほんと意味が分かんないわ。」
ここまでの話、龍人は1つ重要な事をラルフと遼に伝えていない。それは黒い靄の存在だ。それが何なのかよく分かってはいないのだが、出現と同時に龍人の戦闘力が飛躍的に向上したのは事実。自身の持つ真極属性【龍】と何かしらの関連性があるのでは。と、龍人自身も思っている。しかし、彼自身の何かが伝える事を躊躇わせたのだ。
因みに、こんなのんびりと話をしている間にもラルフが周りに張り巡らせた魔法障壁と防御障壁がライオンの攻撃を防御している事は一筆する必要があるだろう。
「…あ!大事な事を言い忘れてたわ。ラルフ、この建物内にレイラが捕まってるっぽいんだ!」
「…は?おいおい、そりゃぁマジか?」
「あぁ。拘束されてた。んで、白衣の男が近づいたら急に苦しみ出したんだよ。早く助けないと…!ただ、モニター越しにしか見てないから場所が分かんないんだ。」
「そうか…レイラが…。………。」
3人の間に沈黙が流れる。もう一度触れておくが、ライオンが全力で攻撃中だ。
ラルフが腕を組んだまま口を開く。
「拘束されてるってのと、白衣の男がいたのを考えると何かしらの実験に関わっている可能性が高いな。んで、この部屋が実験場ってんだろ。そしたら、この近くにレイラの居る部屋がありそうだな…。よし、一気にぶち抜くか?」
ラルフの物騒な言葉に合わせるように部屋の壁が次々とスライドし、モンスターを吐き出し始めた。
ラルフが一言。
「げっ。」




