9-3-104.闇と実験
ラルフが壁に手を当てると壁のある空間が歪曲破裂し、壁自体も木っ端微塵に吹き飛んだ。
「うわっ!」
その衝撃で目を瞑る遼。するとラルフが小さく叫んだ。
「マジか!ちっ…!」
目を開けると目の前にラルフの姿は無く、ライオンが吐き出す炎を龍人の前に立って受け止めていた。
(これやばいじゃん!俺は…ライオンと…蝙蝠もいる。どっちを攻撃しよう。)
遼は双銃(レンタル品)をあたふたと構える。
(…練習でやったアレをするしかないか!)
遼は右手の銃を蝙蝠に、左手の銃をライオンに向ける。遼はキタルにひたすら練習させられた弾丸の形状変化を思い出す。
(右の銃に込めるのが拡散弾で、左手は貫通弾と。…よし、ミスるなよ自分!)
双銃が光り、散弾に変化する弾と貫通弾をそれぞれ連射する。
連射する弾丸の中には形状変化を失敗した物も含まれているが、遼の攻撃は蝙蝠とライオンの動きに変化を与えた。蝙蝠は遼の攻撃を避けるように部屋の隅に飛んでいき、貫通弾が脇腹に突き刺さったライオンは炎を吐き出すのを止めて吠える。
(あ…?頭痛が治まったぞ…。)
龍人を苦しめていた頭痛と平衡感覚の乱れが急に消える。まだ余韻が残っているが、動けなくなる程ではない。
「おい、大丈夫か?」
ラルフが龍人に手を差し伸べてくる。そうしながらも、前方に魔法障壁を展開している所は流石は教師と言うべきか。
「サンキュー。」
龍人はラルフの手をガシッと掴むと、立ち上がった。
「で、どうなってんだよこの状況。」
ラルフがいつになく真剣な目で龍人に問いかける。
「それが、俺にも良く分かんないんだよな。倒しても倒しても壁がスライドした穴から魔獣が出てくるんだよ。」
「…なるほど。って事は、誰かがこの部屋を監視しながら魔獣を投入してやがるな。そいつをどうにかしないとだな。…いや、部屋の壁をぶっ壊して一気に進むか。」
「それしたら周りに待機してる魔獣が一気に雪崩れ込んで来る可能性もあるんじゃないか?」
「ん?そんなの俺がぶっ倒してやるって。」
「だけどさ…。」
強気なラルフと慎重な龍人があーだこーだ言い合っていると、遼がアワアワと走り寄ってくる。
「ちょっと2人とも!早く動こうよ!」
「お、遼。さっきはありがとな。でもよ、ここをぶっ壊したら結構危険じゃない?」
「いや、そもそもこの上にある魔法協会南区支部が絡んでる可能性もあんだから、一気にぶち壊して魔法協会の建物も崩壊させちまいてーんだが。」
「ラルフ…流石にそれは物騒過ぎるだろ。……ってかココって魔法協会の下なのか?え?じゃあここは南区?」
いる場所が中央区だと思っていた龍人は、驚きを隠すことができない。
「え?龍人…ここが何処だと思ってたの?」
「実はさ…」
龍人は遼とラルフに現在に至る迄の出来事を伝えていく。




