9-3-102.闇と実験
(聖魔法に属する光魔法は結構効果あったよな。よし、もっかい行くか。)
龍人は夢幻の周りに魔法陣を展開し、聖魔法に属する光を召喚。光は夢幻を包みこんだ。
「シッ!」
鋭い息を吐きながら夢幻を振る。その軌道に合わせて光の刃が飛翔し、蝙蝠の群れの一部に激突した。すると突然、蝙蝠の動きが慌ただしくなる。
(なんかしてくるか?)
龍人は警戒し、魔法壁と防御壁をいつでも展開出来るように準備をするが…。
(…?何もしてこない?)
「ガルルル…!」
先程よりも近くで聞こえる唸り声。ハッとして前を見ると、ライオンがすぐ近くまで迫っていた。
(しまった!蝙蝠に気を取られすぎた…!)
龍人は辛うじてライオンの牙を避けて距離を取る。
魔法を使ってこないのが普通であるのに、今まで魔法を使う動物ばかり現れていた為に、それ自体に気味悪さを感じてしまう。嫌な予感がした龍人が、もう少し蝙蝠の数を減らしておこうと夢幻を構え直した時だった。視界が突然揺らぎ片膝をついてしまう。
(なんだ?平衡感覚が…。)
平衡感覚の狂いに加え、強烈な頭痛が襲ってくる。
「グルルルル」
揺れる視界に口から炎を溢れさすライオンが見えた。
(まずい…!)
動こうとするが、依然揺れる視界に思うように体が動かない。
ライオンが口を開き、荒れ狂う炎が龍人に向けて放たれた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
遼はドアの向こうに広がる白い世界に足を止めていた。
「なんですかこれ。幾ら何でも白過ぎません?」
「俺に言うなって。ほら行くぞ?」
ラルフは特に迷うことなく白い通路を歩いて行くと、1つのドアを開けた。
「確かこの部屋があの場所に繋がってたはずなんだよ。」
部屋の隅に置かれたデスクの中をゴソゴソと漁るラルフ。
カチッ
デスクの奥からスイッチが押された様な音がする。
「よしっビンゴ。」
すると、デスクの隣の壁が横にスライドを始め、その場所に現れたのは白いドアだった。
「おぉ。」
遼は壁が動くというギミックに感嘆の声をもらす。
「じゃ、入るぞ?」
ラルフはさっさとドアを開けて中に入ってしまう。
(…ラルフの様子、やっぱりなんか変だなぁ。)
違和感を覚えつつも、遼はラルフの後に続いてドアをくぐったのだった。




