9-3-101.闇と実験
光刃の奔流が獣の群れへと突き進む。単なる光ではない。浄化の力を源とした光の刃だ。
それは狼と熊、その他の獣を飲み込んで壁に激突した。衝撃でドアに張られていた防壁にヒビが入る。
「はぁっ、はぁっ…。」
洗い息を吐きながら龍人は前方の状況に目を凝らす。今の所、動物が動く気配はない。
(まずいな。魔力を使い過ぎた。聖属性に属する光魔法はやっぱキツいな。)
龍人が使った属性【聖】の魔法は、各属性の中でも希少性の高い部類に属するものだ。そういった魔法を使うのは、想像に難くないとは思うが魔力の消費が激しいのだ。龍人は転移魔法、風魔法の多重展開、そして聖魔法と強力な魔法を一気に使い過ぎていた。
(つっ…!頭が痛いな。魔力を一気に使った反動か?)
消耗はしたが、魔獣の群れは全滅する事が出来た。後は扉の防壁を破って先に進むだけである。これだけの魔獣を投入してきた事を鑑みるに、この先には何かしらの重要な物がある可能性が高い。
(あと…もうひと踏ん張りだ!)
しかし、龍人の小さな希望は打ち消されてしまう。
ウィィィン
またしても壁がスライドして穴を開く。そして獣の低い唸り声が奥から近づいてくる。
「今度は…ライオンかよ!」
思わず叫んでしまったその先には…ライオンが1頭。そして天井が開き、そこから数十羽の蝙蝠が舞い降りてきた。
魔力の底が薄っすらと見えてきた龍人は、嫌な汗を流しながら新たに現れた動物に対峙する。
今までの様にゆっくり戦うのではなく、一気に倒し、新たな魔獣が投入される前にドアの防壁を破り、この実験室を抜け出す。
これが龍人の取り得る最良の選択だった。成し遂げるために必要な魔力、体力、気力。それらが揃っているかと言えば、そうではない。
(ホントにマズイな…。あの女と戦った時の力は、使い方がサッパリ分かんないし。…今は後のことを考えないで倒すことに全力を注ぐしかないっかな。)
「うしっ!」
龍人は気合を入れると夢幻を体の正面に構えた。




