9-3-97.闇と実験
魔法学院南区支部内を奥へと進み、人が更に少ない所まで来るとラルフは足を止める。後ろから着いていた遼は辺りをキョロキョロ見回している。
「魔法協会内にもこんなに人が居ない所があるんですね。」
「まぁ、ここは裏通路みたいな所だからな。普段は結界が張ってあるから近寄ろうとしても近寄れないようになってるんだよ。」
「え…何でそんな事を知ってるんですか。」
「それはだな…まぁ大人になると色々あるって事にしといてくれ。」
ラルフは遼と話しながら壁を見つめてゆっくりと歩く。
「確かここかな?」
ラルフが壁に手を当てると淡い光の魔法を発動させる。すると、ラルフが触れていた部分の壁が人1人分のスペースだけ消え去った。
「今何をしたんですか?空間魔法で壁を移動させたとか?」
ラルフは壁の向こうを覗きながら遼の問いかけに答える。
「いや、今のは治癒魔法だ。壁を模した結界の普通の解除方法から外れた方法として、治癒魔法を鍵として壁が消える仕組みになってるんだ。」
「…なんでそんな事を知ってるんですか?」
普通に生活をしていたら絶対に知り得ない事を知っているラルフ。そして、その情報を隠すことなく話している状況に、遼は警戒感を隠すことが出来ない。
「…詳しくはその内話す。それよりも今は先に進むのが先決だ。…見てみろ。この階段、全然埃が積もってない。って事はだ、頻繁にこの階段を人が通ってるって事になりやがる。」
「って事は…本当にこの地下で動物の実験が行われてるんですか?」
「そればっかりは俺にも分からんな。とにかく、行ってみるか。本当に動物の実験が行われているんなら、すぐにそんなもん止めてやる。…行くぞ遼。」
ラルフは遼に視線をチラリと送る。
実際に魔獣と戦った遼としても、そんな実験が行われているとするならば放っておく事は出来ない。そして、この状況で行かないというのならば…それは南区に訪れるかもしれない魔獣の脅威から目を背けることになる。森林街という生まれ育った星に戻ることが出来ない遼が、第2の故郷となるであろう星の危機となり得る元凶…それを目の前(になるかも知れない状況)にして逃げ出すはずがなかった。
遼はラルフの目をまっすぐ見て力強く頷く。
ラルフがニヤリと笑う。
「イイ目をする様になってきたじゃんか。よし。無理はするなよ?」
ラルフと遼は薄暗い階段を下へと降り始めた。




