9-3-91.闇と実験
バァァン!
と、ドアが木っ端微塵に吹き飛んだにしては控えめな、とは言えそれでも大きい音が響く。
「ルーチェ!アホなの!?なに見つかるような事してるのよ!?」
火乃花が怒るのも最もだ。しかし、ルーチェは火乃花を見ると人差し指を唇の前に持ってくる。
「火乃花さん、しーですわよ。音は結界で防いでいるから聞こえてないのですわ。」
「音を防ぐって…それってぞ…」
「あ…ですわ!」
話しながら前方の様子を伺っていたルーチェは声を上げると駆け出した。
「ちょっと…!」
火乃花も慌てて後を追う。
立ち止まったルーチェの横に来ると、火乃花は地面を眺める。
「魔法陣ね…。多分、転移魔法陣だわ。この部屋…他に何も無いって事は、この魔法陣の為だけに作られたのかしら?」
「んー、そう考えるのが普通ですわね。それにしても…セキュリティが甘すぎる気がしますわ。もしかしたら、ラーバルさん以外の職員も普通に使っている魔法陣なのかも知れませんわ。」
「え、そんな事あるかしら?裏口なのに。………あ、でも確かに長官専用の裏口とは誰も行ってなかったわ。」
「となるとですわ、何処に繋がってるのかサッパリ分からないのです。」
魔法陣が何処に繋がってるのか。ここまで来たら、直接確認するしか方法は残っていない。
火乃花とルーチェは顔を見合わせて頷き、同時に魔法陣に飛び乗った。
転移の光が消えると、目の前に広がった景色は建物が乱立してごちゃっとしたものだった。
「あらあらですわ。」
「ほんとね…。まさか魔商庁から中央区に直通の魔法陣があるなんて。」
火乃花は辺りを見渡すがラーバルの姿は当然見つける事が出来ない。
「それにですわ、私たちが来たはずの魔法陣が既にありませんの。」
「えっ?」
確かに足元を見ても魔法陣は既に消えている。
「つまりですわ、中央区の毎日建物の配置が変わるという特性があるから固定ポイントで設定してないのですわね。となると…ラーバルさんがどこに行ったのかはサッパリ分からないのです。」
「呑気に言ってる場合じゃないでしょ。」
火乃花がすかさず突っ込みを入れる。
「大丈夫なのですわ。」
ルーチェは自信満々に言うと歩きだした。




