9-3-86.闇と実験
「なんでまた居なくなっちゃうのよ…!」
食堂内に居た職員は全員仕事場へと戻り、火乃花は広い食堂に1人寂しく取り残されてしまった。
誰かに八つ当たりをしたい気持ちで一杯だが、火乃花の周りには誰もいない。強いて言うなら、食堂のおばちゃん位か。
(もうルーチェを探すの止めようかしら…。)
ルーチェに振り回されている感が否めない火乃花は、1人でラーバルのいる場所を探すことにする。
(最上階の部屋に乗り込むのは危険よね。そうすると、いそうな場所は…。)
火乃花は下の階から手当たり次第に覗いていく。
小1時間程歩き回った後、火乃花は大会議室の前に到着する。ドアの前には4人の警備員が立っていて物々しい雰囲気だ。
(ビンゴかしら?)
火乃花は警備員に近づいていく。
「あの…今こちらの会議室では何をされているんですか?」
「ん?君は誰だ?」
いきなり現れた女に警備員は警戒心を露わにする。
「あ、私は今日1日だけ魔商庁の中を見学させてもらってる火乃花です。よろしくお願いします。」
火乃花は可憐?なお嬢様風にニッコリと笑うとお辞儀をする。食堂でのルーチェを思い出してのとっさの演技だが、これが効果覿面だった。
「む…ん…おぉ!ん。そうか。」
お辞儀をしている間に何故か警備員がどよめいた気もするが…、その真相は火乃花には分からない。しかし、警備員は照れたように咳払いをすると態度を一気に軟化させた。
「ここの大会議室では、今後の魔法街の流通について議論中だ。魔商庁長官であるラーバル=クリプトンさんも出席しているから、我々が厳重に警備にあたっているんだ。」
「あ、そうなんですね。ラーバルさんに1度お会いしてみたかったんですけど…。会議だと難しそうですね。」
火乃花は両手を胸の前で組合わせてあからさまにガッカリしてみせる。




